【違いを押さえよう!】オフサイト型PPAと自己託送
- 2023年12月04日
- CO2削減
「オフサイト型PPA」と「自己託送」は、どちらも事業拠点から離れた場所に太陽光発電を設置し、電力会社の送配電線を経由して電気を使用することができるものです。
今回は、似ているが異なるオフサイト型PPAと、自己託送の違いについてご紹介します。
目次
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法改正で混乱?オフサイト型PPA、自己託送とは?
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オフサイト型PPAと自己託送の違いは?
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オフサイト型PPAと自己託送を導入する上でのポイント
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どっちを導入すべき?おすすめ条件
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まとめ:自社に合った方法で導入を検討しよう
1. 法改正で混乱?オフサイト型PPA、自己託送とは?
2021年11月、「電気事業法施行規則」の一部改正により、他社が保有している発電所からの自己託送(第三者所有)が、条件付きで可能になりました。この改正によって、オフサイト型PPAと自己託送の大きな住み分けが払拭されました。しかし、違いは存在します。ここでは、違いがわかりにくいオフサイト型PPA「他社(グループ外)」と自己託送(第三者所有)の特徴についてご紹介します。
(1)オフサイト型PPAとは
オフサイト型PPAの大きな特徴は、「PPA契約」を結ぶことです。PPAとは、Power Purchase Agreement(電力購入契約/電力販売契約)のことで、電力需要家が発電事業者から再生可能エネルギー由来の電力を固定価格で長期にわたり購入する仕組みです。オフサイト型PPAは、小売り電気事業者を介在させる必要があり、「社内」「グループ内」「他社(グループ外)」と3つに区分されます。電力需要家は、発電所から、再エネ発電による電気と環境価値を長期で調達できます。
法改正で、これまで認められていなかったオフサイト型PPAの「他社(グループ外)」が可能になりました。但し、条件は「密接な関係」であることを前提として、
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長期にわたって組合の存続が見込まれること
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組合員名簿等に当該供給者及び当該相手方の氏名又は名称が記載されていること
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電気料金の決定方法、送配電設備の工事費用の負担の方法などが明らかになっていること
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組合が新設した再生可能エネルギー施設を利用することがあります。
これらを満たしたうえで、小売り事業者と組合がPPA契約を結び、小売り事業者に他社の発電所から電力需要拠点へ自己託送の受給管理をしてもらいます。オフサイト型PPA「他社(グループ外)」は、小売り事業者を介在するので、複数施設への送電が可能です。また、低圧発電所の使用も可能です。
出典:資源エネルギー庁『地域分散リソースの導入拡大に向けた 事業環境整備について』(2021/11/18)(p7~8)
出典:資源エネルギー庁『自己託送に係る指針』(2021/11/18)
(2)自己託送とは
自己託送は、2014年から始まった一般送配電事業者向けのサービスで、電力需要家と発電所の保有者が一致していれば、送配電線を介して電気の共有ができるサービスです。
オフサイト型PPAとは違い、小売り電気事業者を介在させる必要はありません。遠隔地にある電力需要家グループ内の企業と「密接な関係性」を有することで、発電所から自己託送(第三者所有)をします。この場合は、需給管理事業者が電力需要企業と契約を結んで需給管理を行います。
自己託送(第三者所有)を導入することで、電力コストを抑えられることが期待されています。例えば、配送電線の使用料にあたる「託送料金」しか発生しません。また、自己託送(第三者所有)をすることで、基本・従量料金と、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の負担がなくなります。
出典:資源エネルギー庁『自己託送に係る指針』(2014/04/01)(p6)
2.オフサイト型PPAと自己託送の違いは?
(1)契約
オフサイト型PPA「他社(グループ外)」と自己託送(第三者所有)の大きな違いは契約にあります。オフサイト型PPA「他社(グループ外)」は、PPA契約をして小売り電気事業者を介するのに対し、自己託送(第三者所有)はPPA契約をしません。また、オフサイト型PPA「他社(グループ外)」は、長期の契約を結ぶことが前提となります。
(2)発電所
オフサイト型PPAは、他社が保有する発電所を小売電気事業者を介して需要拠点に届けるシステムのため、発電所の準備などは必要ありません。また、電気を小売電気事業者に一度売電する形になるので、低圧の発電所でも使用可能です。一方、自己託送(第三者所有)で使用する発電所は、新設の発電所のみが対象となります。また、低圧では遠くまで送電する電圧が無いので、高圧・特別高圧の発電所に限られます。
(3)送電先
オフサイト型PPAは、小売事業者を介するために、複数の事業所に送電をすることができます。一方、自己託送(第三者所有)の送電先は、1箇所のみに限定されます。これは、送電先を複数にしてしまうと、小売り電気事業者と区別できないために制約があります。
(4)再生エネルギー賦課金
自己託送では再エネ賦課金は発生しませんが、オフサイト型PPAでは再エネ賦課金が発生します。特措法では「小売り電気事業者から電気の使用者に対して供給された電気」に対して再エネ賦課金を徴収すると規定されています。
よって、オフサイト型PPA「他社(グループ外)」は再エネ賦課金の負担がありますが、自己託送(第産者所有)は再エネ賦課金の負担がありません。
3. オフサイト型PPAと自己託送を導入する上でのポイント
ここでは、太陽光発電パネルなどの発電施設を「自社敷地外に設置する」という共通点をもったオフサイト型PPA「他社(グループ外)」と自己託送(第三者所有)について、共通したメリットやデメリットをご紹介します。
使用電力が多い場合の削減CO₂
使用電力が多い場合、再生可能エネルギー由来の電力を使用することで、脱炭素への取り組みに繋がります。再生可能エネルギー電気を調達することにより、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す「RE100」の達成にも貢献することができます。
初期費用
オフサイト型PPA「他社(グループ外)」と自己託送(第三者所有)は、電力需給会社とは異なる会社が太陽光パネルを設置するので、初期費用をかけずにすみます。
非常用電源としての利用
遠隔地から送電網を使用して電気を送るので、自然災害などで電力系統が停止してしまうと、電気が使用できなくなります。よって、非常用電源として活用できません。
発電場所とメンテナンス・管理
自社で発電をするわけではないので、広い土地が必要ですが、自社の敷地面積にとらわれずに発電量を確保することができます。また、他社保有の発電施設を使用するために、メンテナンスや管理費用は発生しますが、自社で直接管理しなくてもよくなります。
インバランス料金
電力需要拠点と離れた場所に発電所を置くオフサイト型PPA「他社(グループ外)」、自己託送(第三者所有)は、どちらともインバランス料金が発生します。インバランス料金は、発電計画と発電実績の間に生じる差分にかかる料金のことです。不足した電力量の補填や、余剰分の電力量の買取が発生するため、内容に応じてインバランス料金を清算する必要があります。
出典:電力・ガス取引監視等委員会『2021年度以降のインバランス料金制度 について』(2019/06/26)
送電コスト
送電網を使用して電気を送るため、オフサイト型PPA「他社(グループ外)」、自己託送(第三者所有)は、どちらとも送電コスト(託送料金)がかかります。
4. どっちを導入すべき?おすすめ条件
ここでは、共通点が多いオフサイト型PPA「他社(グループ外)」と自己託送(第三者所有)について、どちらが導入するにあたって自社のもつ条件と合うものなのか、決め手についてご紹介します。
オフサイト型PPAのおすすめ導入条件
オフサイト型PPA「他社(グループ外)」は、以下の条件に近い企業におすすめです。
・再生可能エネルギー由来の電力の使用を検討している
・使用電力が大きい
・太陽光パネル設置などの初期費用をかけたくない
・自社敷地内に、発電所を設置する場所がない
・電気料金削減目的ではない
・非常用電源としての活用は考えていない
・複数の事業所への送電を検討している
・検討している契約先の発電所が低圧の圧電所である
自己託送のおすすめ導入条件
自己託送(第三者所有)は、以下の条件に近い企業におすすめです。
・再生可能エネルギー由来の電力の使用を検討している
・使用電力が大きい
・太陽光パネル設置などの初期費用をかけたくない
・自社敷地内に、発電所を設置する場所がない
・電気料金削減目的ではない
・非常用電源としての活用は考えていない
・使用電力の大きいひとつの施設への送電を検討している
・高圧、特別高圧の新設の発電所導入を検討している
・再エネ賦課金の負担をしたくない
5. まとめ:自社に合った方法で導入を検討しよう
オフサイト型PPA「他社(グループ外)」が可能となったことで、電力需要家となりうる私たちも選択肢が増えました。違いはわかりにくいかもしれませんが、より自社に合ったスタイルでの導入選択ができるようになったとも受け取れます。
脱炭素社会を目指し、再生可能エネルギー由来の電力を使った企業がこれから先増えてきます。違いを理解すると、自社に合ったよりよい選択ができます。オフサイト型PPA「他社(グループ外)」と自己託送(第三者所有)の違いを抑えて、導入を検討しましょう。