【Scope3のカテゴリ11】内容と算定方法とは?事例も紹介!

サプライチェーン排出量の項目「Scope3のカテゴリ11」とは、企業の事業活動にどのように関わっているのかをご存じでしょうか。サプライチェーン排出量とは、サプライチェーンにおけるCO2排出量のことを指します。サプライチェーン排出量の算定は、Scope1.2.3がありますが、Scope3はさらに15のカテゴリに分類されています。

この記事では、サプライチェーン排出量の「Scope3のカテゴリ11」について、実際の企業事例も紹介しながらわかりやすく解説します。

目次

  1. Scope3とは?

  2. Scope3の「カテゴリ11」について

  3. Scope3の「カテゴリ11」の算定方法

  4. Scope3の「カテゴリ11」の企業事例紹介

  5. まとめ:Scope3カテゴリ11に取り組みサプライチェーン排出量を削減しよう!

1. Scope3とは?

サプライチェーン排出量とは

サプライチェーンとは、事業の分野に関係なく、製品の材料・部品の調達、生産管理、物流、販売・消費までの流れを、一貫したシステムとして捉えた考え方の名称です。サプライチェーン排出量とは、「企業の事業活動におけるすべての温室効果ガス排出量」のことを指し、サプライチェーン全体でのCO2排出量を把握するための指標になります。

サプライチェーン排出量は、Scope1.2.3があり、その合計で算定されます。温室効果ガスの排出量の基本の算定方法は以下になります。

  • 温室効果ガス排出量 = 活動量 × 排出原単位

サプライチェーン排出量とは

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ」

Scope1.2について簡単に解説

Scope1.2について、それぞれを簡単に説明しましょう。

  • Scope1:事業者によるCO2の直接排出量。

スコープ1は、エネルギーの燃焼や工業プロセスにおいて、企業や事業者自体によって直接排出される温室効果ガスのことで「直接排出」と言われています。工業プロセスで発生する温室効果ガスは、鉄やセメント製造において発生するものや、事業活動中に使用したガソリンや軽油、LPガスなどの化石エネルギーの燃焼によるものがほとんどです。

  • Scope2:他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴う間接排出量。

自社が他社から購入している電力が火力エネルギーだった場合、その発電の際に排出される温室効果ガスのことで「間接排出量」とも呼ばれます。つまり、購入している電気や熱が、化石由来のエネルギーだった場合に排出される温室効果ガスが、Scope2に相当します。

Scope3とは

Scope3は、Scope1.2以外のサプライヤーから間接排出されるすべての温室効果ガスのことです。具体例をあげると、自社が他社から購入した製品の製造時における温室効果ガス排出や、自社の製品を消費者が購入し使用したときに排出される温室効果ガスのことになります。

2. Scope3の「カテゴリ11」について

Scope3を構成する15のカテゴリ

Scope3の15のカテゴリ分類は以下になります。カテゴリ1〜8までが上流、9〜15までが下流になります。

 

Scope3カテゴリ

該当する活動(例)

購入した製品・サービス 

原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達

2

資本財

生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)

3

Scope1,2 に含まれない燃料

及びエネルギー関連活動

調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)

調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)

4

輸送、配送(上流) 

調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)

事業活動から出る廃棄物 廃棄物

⾃社拠点から発⽣する廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送(※1)、処理

6

出張 

従業員の出張

7

雇用者の通勤

従業員の通勤

8

リース資産(上流) 

自社が賃借しているリース資産の稼働

(算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半)

9

輸送、配送(下流) 

出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売

10

販売した製品の加工 

事業者による中間製品の加工

11

販売した製品の使用 

使用者による製品の使用

12

販売した製品の廃棄 

使用者による製品の廃棄時の輸送(※2)、処理

13 

リース資産(下流)

自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働

14 

フランチャイズ 

自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動

15

投資 

株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用

 

その他(任意)

従業員や消費者の日常生活

※1 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を任意算定対象としています。 

※2 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を算定対象外としていますが、算定頂いても構いません。

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ」

カテゴリ11とは「販売した製品の使用」に伴う排出量

Scope3のカテゴリ11は、「消費者による製品の使用」、つまり製品が使用されているときに排出される温室効果ガスを指します。例えば、エアコンを販売する企業の場合、実際に販売されたエアコン台数使用時に、どれくらいの温室効果ガスが排出されたのか、ということになります。

カテゴリ11の対象は?

カテゴリ11は、販売した製品の使用に伴う温室効果ガス排出が対象となりますが、中間製品などは区別されるため、自社の製品がカテゴリ11の対象かどうか見極めることが必要になります。

また、販売した製品の将来的な排出量算定の場合は、使用方法等の条件によって排出量が変動するため、製品の設計使用や消費者における製品の使用条件に関して仮定のシナリオを策定することで算定方法を設定します。いずれにせよカテゴリ11は、製造業に深く関係していることは間違いありません。

3. Scope3の「カテゴリ11」の算定方法

カテゴリ11の算定方法は以下になります。

  • 排出量=報告対象年の販売台数×生涯排出量

カテゴリ11では、報告対象年に販売した製品の生涯での稼働での排出で算定します。企業が同じ製品を販売とリースにしていた場合は、算定方法が変わるので注意しましょう。カテゴリ11を含むScope3は、Scope1.2と比較しても非常に分類が難しく、特に下流においては、正確なデータ把握は困難なため、認定機関もその認識のもとで成り立っています。

簡易な算定方法

エネルギー使用製品のケースにおける、カテゴリ11の簡易な算定方法をご紹介します。エネルギー使用製品には、自動車や家電などの製品が含まれ、一般的に以下の式で算定されます。

  • 温室効果ガス排出量 = 活動量 (販売した最終製品の出荷量、1日当たりの平均使用時間、耐用年数、等)× 排出原単位(稼働時に使用するエネルギーの排出原単位)

ただし、算定目的によってはこの算定方法では十分ではありませんので、留意が必要です。

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」(p.15)(p.19)

カテゴリ11の算定対象

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」(p.15)(p.19)

4. Scope3の「カテゴリ11」の企業事例紹介

カテゴリ11に関わる企業事例

  • 富士通株式会社 

富士通グループはScope3のカテゴリ1「購入した製品・サービス」とカテゴリ11「販売した製品の使用」における排出量が約9割を占めているため、このカテゴリに関しての排出削減を掲げ取り組んでいます。2020年には「スコープ3 排出量算定」を含む環境マネジメントで、国際的な「サプライヤー・エンゲージメント評価(SER)」において最高評価「A」を獲得しています。

 出典:富士通「サステナビリティ」

  • 株式会社 大気社

空調設備等の販売を行っている大気社は、カテゴリ11による排出量が92.93%をしめています。設備の運用段階の排出量が最も多いことを踏まえて、省エネ性能の高い設備システムの提供に注力しています。また、サプライヤーと協力して、グリーン調達の推進や産業廃棄物の適正処理、資材などの生産・運搬・廃棄による温室効果ガス排出抑制に取り組んでいます。

 出典:株式会社 大気社「サステナビリティ」

5. まとめ:Scope3カテゴリ11に取り組みサプライチェーン排出量を削減しよう!

Scope3カテゴリ11について、企業事例を含めながら解説を行いました。Scope3カテゴリ11は、製品の販売を行う製造業に関連が深いことが理解できたのではないでしょうか。製品販売は経済を支える要であり、あらゆる企業が関わっているといっても過言ではありません。

それだけに広範囲に当てはまる内容のカテゴリであり、温室効果ガス排出量も多いと言えます。カテゴリ11の「販売した製品の使用」時における温室効果ガス排出は、抑制されなくてはいけません。

自社のサプライチェーンを見直し、温室効果ガス削減に向けてぜひScope3カテゴリ11に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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