CDPによる「サプライヤーエンゲージメント評価」とは?

2021年12月、CDPによる2021年度のサプライヤーエンゲージメント評価が公開されました。今回は、サプライヤーエンゲージメント評価を行う組織「CDP」と、これからの企業活動において重要な課題となる、環境問題に関する評価内容についてご紹介します。

目次

  1. CDPとはどんな組織?

  2. サプライヤーエンゲージメント評価とは

  3. 2021年サプライヤーエンゲージメント評価で最高評価を得た企業

  4. まとめ:まずはひとつの取り組みから

1. CDPとはどんな組織?

イギリスの慈善団体が管理する非政府組織(NGO)である「CDP」は、気候変動に対してグローバル規模の活動をしていることをご存じでしょうか。ここでは、CDPとはどのような組織であり、どのような活動をしているのかをご紹介します。

CDPについて

CDPは、世界主要企業に対して環境活動(温室効果ガス排出量の計測、管理など)の開示を求め、さらに削減を促す活動をしています。そして、集約した企業の気候変動関連情報を評価し、その結果を機関投資家など、市場に開示する活動を行っています。2000年に発足し、2005年より日本でも「一般社団法人  CDP Worldwide-Japan」の名称で活動をしています。発足当初は、企業による二酸化炭素などの排出量を「見える化」する取り組みを意味する「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」の略称でしたが、後に水セキュリティやフォレストなど活動領域が広がったため、現在は「CDP」という名称で活動しています。

CDPのプロジェクトは、現在「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト」「シティ」「サプライチェーン」の5種類があります。

CDPのフォーカス分野

(1)気候変動(Climate Change)

気候変動プログラムは、フォーカス分野のうち最も歴史のあるプログラムで、2002年に開始されました。2021年度の評価では、世界200社のうち56社の日本企業がAリスト入りしており、2年連続CDPのAリスト入り世界最多となっています。

CDP気候変動分野におけるAリスト国・地域別企業数(上位8か国)

出典:CDP『CDP 気候変動 レポート 2021:日本版』(2022/01)(P6)

(2)水セキュリティ(Water Securety)

水セキュリティのプログラムは2009年に開始されました。水にまつわるリスクの情報公開を求める取り組みで、自社の取水量や総排出量、処理方法などを集計・評価して、水セキュリティに関する情報の把握に役立てられています。

出典:CDP『CDP 水セキュリティ レポート 2021:日本版』(2021/01)

(3)フォレスト(Forest)

フォレストは、CDPのプログラム5種類のうち最も新しいプログラムで、2013年から開始されました。各企業が森林関係に与える影響などを調査して、事業が森林に与えるリスクの実態を集計・評価しています。木材、パーム油、畜牛、大豆に関連する事業を行う企業が対象となります。

出典:CDP『CDP フォレスト レポート 2021:日本版  』(2021/01)

https://earthene.com/form/download/general

2. サプライヤーエンゲージメント評価とは

CDPは、年に一度、対象となる企業にアンケートを送付し、各企業からの回答内容をスコアリングして各企業の評価をします。この評価をサプライヤーエンゲージメント評価といいます。

評価で目指すもの

CDPは、サプライヤーエンゲージメント評価を通じて、世界全体が持続可能性に優れた経済実現に目を向けることを目指し、啓発活動を行っています。実現を目指すために、各企業が自身の事業が与える環境へのインパクトを把握するように、投資家や企業、自治体に促しています。

評価基準

CDPによるスコアはA、A-、B、B‐、C、C-、D、D-の8段階に分かれていて、DからAに近づくにつれて、企業が積極的に環境負荷を押さえる事業取り組みを行っていることになります。無回答の場合は、スコアはFと表示されます。CDPは、評価基準で最高評価となるAランクとなった企業をリーダーボードに選出し、「リーダーシップ」レベルと評価します。

レベルを示す4段階のスコアリング

出典:CDP 『CDP 気候変動 レポート 2021:日本版』(2022/01)(P10)

評価結果の活用

CDPは機関投資家の間でも認知度が高く、質問書に回答をして積極的に情報開示をすることで、環境問題に対する取り組みを幅広く示すことができるので、企業に対して大きなメリットとなります。また、「気候変動」や「水セキュリティ」、「フォレスト」の分野で、自社の実態を見える化することになるので、企業の在り方についても検討できます。

3. 2021年サプライヤーエンゲージメント評価で最高評価を得た企業

2021年12月7日、CDPは「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト」の3分野で2021年度にAリスト入りした企業を公表しました。ここでは、最高評価であるAリスト入りした企業の一部をご紹介します。

出典:CDP『企業スコア』

花王株式会社

花王株式会社(以下花王)は、昨年に引き続き「気候変動」、「水セキュリティ」、「フォレスト」の3分野において全ての分野で最高評価であるAリスト企業に選出されました。「気候変動」分野は3回目、「水セキュリティ」分野は5回目、「フォレスト」分野は2回目の選出です。

花王は、経営にESGの視点を導入し、事業拡大と消費者や社会へのよりよい製品・サービスの提供を推進しており、脱炭素の実現に向けてRE100にも加入しています。

出典:花王 『花王、昨年に続き、CDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の分野で最高評価を獲得』(2021/12/08)

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社(以下コニカミノルタ)は、「気候変動」分野にて、Aリスト企業に選出されました。カーボンマイナスの2030年達成を目指して、コストダウンと連動した環境負荷低減のノウハウをサプライヤーに提供していく「グリーンサプライヤー活動」を推進しています。2020年度に開始した「DX-グリーンサプライヤー活動」により、取り組みを加速しました。

コニカミノルタは今後もより多くのサプライヤーと連携して、サプライチェーン全体の二酸化炭素削減とコスト削減を拡大していく予定です。

出典:コニカミノルタ『CDPの「サプライヤーエンゲージメント評価」で最高評価の「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に選定 カーボンマイナスを目指し「グリーンサプライヤー活動」を推進』(2022/2/18)

株式会社ファミリーマート

株式会社ファミリーマート(以下ファミリーマート)は、コンビニエンスストアでは唯一の最高評価であるA評価でした。

ファミリーマートは、「ファミマecoビジョン2050」において、温室効果ガスの削減や食品ロスの削減、プラスチック対策に取り組んでいます。

また、Science Based Targets(SBT)イニシアチブにより認定された温室効果ガス削減目標に基づいて、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減を推進しています。

出典:ファミリーマート「コンビニエンスストアチェーンでは唯一しかも2年連続!!「CDP2021サプライヤー・エンゲージメント評価(SER)で最高評価の「リーダー」獲得のお知らせ」』(2022/02/16)

株式会社ワコールホールディングス

株式会社ワコールホールディングス(以下ワコール)は、「地球を守ることは企業の責務である」との認識で、設計から材料開発、生産・物流・販売までのサプライチェーンにおいて、環境に配慮した事業活動をしています。

2021年10月には、気候変動課題について、2030年に向けて自社排出量ゼロ、製品廃棄ゼロ、環境配慮型素材の使用比率50%を目指すといった独自の環境活動の目標を設定しました。

出典:ワコール 『CDP「サプライヤー・エンゲージメント評価」において最高評価の「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に選定』(2022/02/14)

4. まとめ:まずはひとつの取り組みから

企業の気候変動リスクに関する情報公開プログラムを管理するCDPという組織と、サプライヤーエンゲージメント評価についてご紹介しました。

2015年に採択されたパリ協定で、気候変動に関する世界共通の目標が掲げられました。また、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール13は「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」とされています。

今後、企業にも気候変動をはじめ、環境問題解決に向けた積極的な取り組みがより多く求められるようになってきます。自社が及ぼす環境に対するインパクトを知る手段として、まずは二酸化炭素排出の量や水の処理方法を見える化してみるなど、ひとつのことから取り組んでみませんか。

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