発電量1kWhあたりのCO2排出量|CO2排出削減を進めるには?

この記事では、発電、特にCO2を大量に放出する火力発電の1kWhあたりのCO2排出量に注目して解説します。さらに、どのようにして排出量を削減するか、現在行われているCO2排出削減の具体策、政府のイノベーション支援などについてもまとめます。

目次

  1. 発電量1kwhあたりのCO2排出量

  2. CO2排出量削減が求められる理由とは?

  3. 具体的なCO2削減策を知ろう

  4. CO2排出削減を進めるイノベーションの支援

  5. まとめ:グリーンイノベーション基金を活用し、環境産業に参入しよう

1. 発電量1kwhあたりのCO2排出量

(1)火力発電の1kWhあたりのCO2排出量

日本のCO2排出量の割合

出典:資源エネルギー庁『環境 | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る 10の質問」』

上のグラフを見ると、日本のCO2排出量の85%がエネルギー起源、すなわち、発電の際に発生するCO2が最も多いということがわかります。

一次エネルギー供給と電源構成の内訳

出典:資源エネルギー庁『3E+S | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る 10の質問」』

特に、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料を燃焼させて発電する火力発電において、多くのCO2が排出されます。2018年度の電源構成を見ると、化石燃料由来の発電量の割合は77%にも及びます。

燃料費ごとのCO2排出係数

出典:環境省『電気事業分野における地球温暖化対策の 進捗状況の評価結果につい」』(p37)(2020/7/14)

さて、火力発電に絞って1kW時あたりのCO2排出量を見てみましょう。最も多くのCO2を排出するのが従来型の石炭火力発電で0.867㎏です。それに比べると石油火力発電は0.721㎏で約0.14㎏少なく、さらに従来型のLNG火力発電は、石炭火力発電の半分以下となる0.415㎏です。

これらの結果から、火力発電のCO2の排出削減を進めるには、燃料を石炭から他のものに変えるか、石炭火力発電のCO2排出量を減らす工夫が必要だということになります。

(2)「茅恒等式」からわかるCO2削減のポイント

CO2排出量を削減するためにどうすればよいのかを考えるうえで重要な式があります。

CO2排出量の計算方法

出典:資源エネルギー庁「『CO2排出量』を考える上でおさえておきたい2つの視点」(2019/6/27)

この式は「茅恒等式(かやこうとうしき)」といい、地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長の茅陽一(かや よういち)氏が提唱した式です。CO2を排出する要因を式であらわしたもので、IPCCでも参考にされた世界的にも有名な式です。

「茅恒等式」に基づくと、CO2の総排出量は「①エネルギー消費当たりのCO2排出量」、「②経済活動のエネルギー効率」、「③人口1人当たりの経済水準」、「④人口」のかけ算で表せます。

これに従えば、CO2の排出削減を進めるためには、エネルギーの低炭素化を進めるか、エネルギー効率を進めるのが最も効果的だといえます。

2. CO2排出量削減が求められる理由とは?

CO2排出量削減が求められるようになった背景には、パリ協定の締結の成立と日本政府によるカーボンニュートラル宣言があります。

(1)パリ協定によるCO2排出削減強化

パリ協定とは、2015年にパリで開催されたCOP21で採択された気候変動対策に関する国際協定のことです。1997年に採択された京都議定書が2020年で失効するため、京都議定書の後継協定として採択されました。

パリ協定の内容は以下の通りです。

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする

  • そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

出典:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」 〜何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』(2017/8/17)

パリ協定は京都議定書と異なり、途上国を含むすべての主要排出国を対象とする協定です。これに基づき、各国はCO2排出量の削減目標を定めなければならなくなりました。

(2)日本政府によるカーボンニュートラル宣言

2020年10月、政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成すると宣言しました。カーボンニュートラルとは、CO2の排出量と吸収・除去量を差し引きゼロにすることで、大気中のCO2の量を増やさないことを意味します。2050年までのカーボンニュートラルを表明した国は、アメリカやEU諸国などを中心に124カ国にのぼります。カーボンニュートラルを達成するためには、CO2の排出量削減やCO2の分離除去、カーボンニュートラルによるCO2の資源化などが必要です。

 

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

3. 具体的なCO2削減策を知ろう

(1)化石燃料の効率的な利用

CO2削減策の1つ目は、化石燃料の効率的な利用です。発電電力量に占める割合が7割に達している火力発電のCO2排出量を削減するため、新技術の研究を進めています。

その1つが石炭火力発電の1種であるIGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)です。IGFCは、石炭をガス化し、燃料電池・ガスタービン・蒸気タービンの3つの発電形態を組み合わせて行う発電形式のことです。こうした最新技術を用いて、大気中に放出されるCO2の削減を図ります。

出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書「第1節 高効率石炭・LNG 火力発電の有効利用の促進」』

また、発電量1kWhあたりのCO2排出量が最も多い石炭火力発電から、LNG火力発電に切り替えるのも1つの手です。

発電技術の高効率化、低炭素化の見通し

出典:環境省『電気事業分野における地球温暖化対策の 進捗状況の評価結果について』(p38)(2020/7/14)

LNGはもともと石炭火力発電よりもCO2排出量が少なく、今後もさらなる活躍が期待されています。

開発済みの高温分空気利用ガスタービン(AHAT)や超高温ガスタービン複合発電などの技術をさらに進歩させ、2030年までにガスタービン燃料電池複合発電(GTFC)を開発することでCO2排出量のさらなる削減が見込めます。

(2)再生可能エネルギーの主力電源化

CO2削減策の2つ目は、再生可能エネルギーの主力電源化です。2019年度の再生可能エネルギーの割合は全体の18%で、以前に比べ向上したとはいえ、諸外国と比べるとまだまだ少ないのが現状です。

各国の発電電力量に占める割合

出典:資源エネルギー庁『再エネ | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

再生可能エネルギーの割合をあげることができれば、相対的にCO2を排出する火力発電の割合を下げ、CO2の排出量を削減できます。

再エネ普及のための代表的な施策は、以下のとおりです。

  • FIT制度に代わってFIP制度を導入

  • 電力系統の再編を進め再エネ由来の電力を受け入れる容量をつくる

  • 余った電気を貯める蓄電池の技術開発

  • 洋上風力発電の導入

国は、これらの技術を導入することで、CO2の排出削減を達成し、再生可能エネルギーの主電源化を達成しようと考えています。

出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2021「「第1節 競争力のある再エネ産業への進化」』

(3)燃料アンモニアの導入

燃料アンモニアについて

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先』(2021/1/15)

CO2削減策の3つ目は、燃料アンモニアの導入です。アンモニアは主に肥料の原料として使用されています。アンモニアは燃焼させてもCO2を排出しないカーボンフリーな物質で、火力発電の原料として期待されています。

現在、アンモニアを石炭と一緒に燃焼させるアンモニア混焼の実証実験が進められています。その結果、20%混焼の場合は年間約4,000万トン、50%混焼の場合は約1億トン、燃料アンモニアだけを燃焼させる混焼の場合は約2億トンのCO2の排出削減効果が見込まれています。

4. CO2排出削減を進めるイノベーションの支援

日本政府は、CO2排出削減を含む温暖化対策を進めるため「環境と成長の好循環」を生むグリーンイノベーションの推進を図っています。そして、グリーンイノベーションを支える投資活動「グリーン・ファイナンス」を推進してきました。

イノベーションを促すためには、研究会を進めるための資金を調達する金融面での環境整備(グリーンファイナンス)が重要です。革新的な技術が生まれれば、発電で発生するCO2排出量をさらに削減できるかもしれません。

出典:資源エネルギー庁『CO2排出量削減に必要なのは「イノベーション」と「ファイナンス」』(2020/2/7)

5. まとめ:グリーン・ファイナンスを活用し、環境産業に参入しよう

日本政府はカーボンニュートラルの達成のため、CO2の排出削減を進めてきました。特に、CO2を多く排出する発電部門でのCO2排出削減は最優先課題です。

政府は火力発電の高効率化や再生可能エネルギーのさらなる普及、燃料アンモニアの混焼などでCO2量の削減を図っていますが、まだ不十分だと言えます。そのため政府は、グリーン・ファイナンスで資金面のバックアップを行い、イノベーションを生み出そうとしています。

これは、中小企業にとって大きなビジネスチャンスです。自社の強みやグリーン・ファイナンスでの資金調達により、他者に先駆けたイノベーションを生み出すことで、環境産業に参入し、ビジネスを広げることができるのではないでしょうか。

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