オフィスで取り組むSDGsとは?導入企業の事例を紹介!

現在、世界で地球温暖化が問題となっており、企業の環境に対する取り組みが注目されています。その中で2015年9月25日にニューヨークの国連本部で開催された国連サミットで「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が採択されました。

オフィスでできるSDGsはあるのでしょうか。ここではオフィスで取り組めるSDGsについて企業事例を用いて紹介いたします。

ではこのSDGsとは、一体どのような目標を掲げ企業にとっての取り組む意義とはどのようなものなのでしょうか。ここではSDGsについての内容と、実際にSDGsに取り組んでいる企業の事例についてご紹介します。

目次

  1. SDGsとは|日本における取り組み

  2. オフィスで取り組むSDGs取り組むメリットとは

  3. SDGsを取り入れた企業の事例

  4. 【まとめ】できることから始めよう!オフィスでのSDGs

1. SDGsとは

まず、SDGsとはどのような目的のものなのか、またそれに対する日本の取り組み内容についてご紹介します。

SDGsの目的とは

世界中の国々で「気候変動」をはじめとし、「貧困」、「紛争」、「人権問題」など様々な課題が浮き彫りとなってきています。これに対して各国が協力し、すべての問題に対して2030年までの達成目標を立て、解決していこうという取り組みです。

「誰一人取り残さない持続可能な社会の実現」を目指す世界共通の目標となっており、2030年を達成年限として、17項目の目標と169のターゲットから構成されています。

SDGs17の目標

出典:外務省『持続可能な開発目標(SDGs)達成にむけて日本が果たす役割』(2022.2)

日本での取り組み

  • 実施体制の構築

日本政府は2016年5月に全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置し、「SDGs実施指針」を策定しました。その後2019年に改定を行い、さらに具体的な取り組みを加速させるため全省庁による「SDGsアクションプラン」を策定し、国内における実施と国際協力の両面で推進してきています。

また、民間セクター、NGO、NPO、有識者、各種団体などによる「SDGs推進円卓会議」を開催、民間との意見交換も行われています。

SDGs推進本部の体制図と8つの優先課題

出典:外務省『パンフレット:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取り組み』

  • ジャパンSDGsアワード

2017年からSDGs達成に資する優れた取り組みを行っている企業・団体を表彰し、より多くの行動を促進しています。このアワードでは企業だけでなく、NGO、NPO、教育機関、地方自治体などが受賞しており、幅広いアクターの取り組みにつながっています。

  • SDGs未来都市

2018年から、SDGsを原動力とした地方創生を推進するため、優れたSDGsへの取り組みを提案する自治体を「SDGs未来都市」として選定し、特に先導的な取り組みを「自治体SDGsモデル事業」として資金面での支援を行い、モデル事例の形成を行っています。

出典:外務省『パンフレット:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取り組み』

2. オフィスで取り組むSDGs取り組むメリットとは

SDGsが取り組むべき内容であることは理解できると思いますが、実際に企業が取り組んだ時に生まれるメリットもあります。ここでは、企業がSDGsに取り組む経営に関するメリットについてご紹介します。

取り組むメリット

  • 企業価値(ブランド力)の向上

SDGsは世界各国が参加する目標であり、企業がSDGsに取り組むことで企業価値(企業のブランド力)の向上というメリットがあります。これは「株主」・「経営者」・「従業員」・「顧客」・「取引先」などのすべてのステークホルダーに対して社会的貢献性の面で評価されることにつながります。

具体的には「ESG投資」による優位性が挙げられます。これは「環境(Environment)」・「社会(Social)」・「企業統治(Governance)」の要素を考慮した投資のことで、企業の成長性の面で投資家の中ではこの投資法が拡がっています。

そのため、企業がSDGsに取り組むことは資金調達の面でも非常に有利な状況となっているのです。

  • 新たなビジネスチャンス

企業が経営を継続するためには消費者のニーズを掴んでいくことが求められます。しかし、近年は少子高齢化や消費者ニーズの多様化により、ニーズの把握が難しくなっています。

SDGsの考え方の根幹は、「将来世代のニーズを損なわずに、かつ現役世代のニーズを満たすことができる開発」にあり、社会の課題とニーズが詰まっています。SDGsに取り組むことでニーズを理解し、新規ビジネスに結びつけることができます。また、この取り組みが評価されることで他業種からの理解も得られ、ビジネスチャンスにつなげることも可能となります。

  • 採用力の強化(人材の確保)

SDGsは若年層への理解度が高く、就職活動を行う学生も就職先を選ぶうえで「SDGsへの取り組み」を判断基準のひとつとして挙げています。

女性が働くための環境づくりへの取り組みや、環境に配慮した企業経営は今後の成長性のひとつとして認識されており、就職先を選ぶうえで重要な要素となっています。SDGsへの取り組みは学生への企業PRのひとつとなり採用活動へのメリットとなるでしょう。

  • 将来的なビジネスリスクの回避

SDGsへの取り組みは大企業を中心に世界的に拡がっており、サプライチェーンへの取り組みも進めています。SDGsへの取り組みが遅れてしまうと将来的にサプライチェーンから外されたり、株主や地域からの支援を得ることができなくなる可能性も考えられます。

SDGsに取り組むことで将来的なリスクを回避することができるでしょう。

オフィスで取り組む項目は?

では、実際にSDGsに取り組むとはどのような項目があるのでしょうか。オフィスで取り組むためのポイントについて考えていきます。

  • 環境

オフィスで取り組むうえで最も考えやすい項目が、「環境」に対する取り組みです。地球資源の削減や、省エネを考えることは環境への負担軽減につながります。

リサイクル材を利用したオフィス用品の使用や、無駄な電気の使用の軽減、書類等の紙の使用の削減など比較的簡単に実現することができることも多いので、取り組みやすい項目といえるでしょう。

  • 働き方

働き方を見直すことも効果があります。例えば現在「テレワーク」を取り入れている企業も多いと思います。これは会社への出勤による移動が必要ないため、通勤で使用されるエネルギー消費の削減となります。また、オフィスに対する価値観の向上による優秀な人材の確保にもつながるでしょう。

  • ジェンダー平等

SDGsにはジェンダー平等への取り組みも目標として掲げられています。オフィスにおいては、男女を区別することなく、皆が、能力を最大限発揮できる環境整備と平等にチャンスが与えられる経営を考える必要があります。

  • 地域貢献

事業ごみの削減や地域活動への参加など、自治体への意欲的な取り組みは会社の信用につながります。企業のイメージ向上になりますし、社員のやる気、モラルの向上にもつながります。

3. SDGsを取り入れた企業の事例

では、実際にSDGsに取り組んでいる企業はどのような活動を行っているのでしょうか。企業別に具体的な取り組みについてご紹介します。

アートコーポレーション株式会社

  • ごみゼロの引っ越し

アートコーポレーションでは引っ越しに使用する梱包資材の削減に取り組んでいます。段ボールの再利用や、紙資源を使わずに梱包できる「エコ楽ボックス」の開発などごみゼロの引っ越しを目指し、資材の販売会社と協力しています。

  • クリーンディーゼル車導入

二酸化炭素、窒素酸化物、粒子状物質などの排出量を減少させる環境性能に優れたクリーンディーゼル車の導入を進めています。また、デジタル運行記録装置、ドライブレコーダーの活用により、乗務員の安全、環境に配慮したセーフティドライブの推進を進めています。

  • 定休日の導入

引っ越し業界初となる定休日の導入を行い、労働環境の改善に取り組んでいます。経済産業省と日本健康会議が推進する健康経営優良法人制度で2020年、2021年連続で「健康経営優良法人」に選定されています。

  • 子育てサポート認定企業「くるみん」取得

保育事業ではアートチャイルドケア株式会社で子育て支援に積極的に取り組んでいる企業として厚生労働大臣から「くるみん」の認定を受けています。

出典:アート引っ越しセンター『アートグループのSDGs』

会社川崎重工業株式

  • 低炭素社会の実現

脱炭素・低炭素社会の実現に貢献することを目的に、自家発電設備の積極活用、水素や再生可能エネルギーの活用、さらに、自社製品からのCO2排出削減といった活動を進めています。第10次目標として、CO2売上高原単位(CO2排出量を売上高で除した値)を2021年度に2013年度比で20%削減を目指しています。

  • 循環型社会実現

天然資源の消費抑制、廃棄物排出削減への取り組みとして、分別廃棄のさらなる徹底、水使用の用途と量の詳細把握を実施し、直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量を1%以下にする目標を掲げています。

  • 自然共生社会の実現

地球環境に調和した製品とものづくりで環境負荷を下げ、生態系の保全に貢献するため、有害化学物質の適正な管理と代替え検討、向上における樹種の把握と在来種への置き換え、及び全社の森林保全活動の継続をおこなっています。

出典:川崎重工業グループ『川崎重工のサスティナビリティ』

住友化学株式会社

  • 高付加価値製品を通じた新たなソリューションの提供<石油化学>

石油化学部門ではマテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルに関する技術開発を進め、高収率、省エネ、高い運転安定性を実現する「プロピレンオキサイド単産法」、環境負荷低減の実現に寄与する高性能触媒の開発などの社会実装に向けた取り組みを推進しています。

出典:住友化学株式会社『住友化学レポート2021石油化学』

  • 革新的な技術による環境・エネルギー問題の解決<エネルギー・機能材料>

電池部材事業では電池の正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導率を確保しつつ短絡を防ぐ安全部材の「セパレータ」や電池の充放電時にリチウムイオンの放出、受け入れを行う機能部材「正極材」の開発を進め、今後のEVやエコカーの普及による環境・エネルギー問題の解決に貢献することを目指しています。

出典:住友化学株式会社『住友化学レポート2021エネルギー・機能材料』

  • 世界の食料、健康・衛生、環境問題の解決に貢献<健康・農業関連事業>

海外事業製品のひとつである「植物生長調整剤」は果実や野菜の実の付きを良くする、大きくする、品質を良くするなどの効果があり、さらに開花時期や熟期の調整が可能となるため、気候変動による低温化や乾燥化の進んだ地域での栽培に対応し、世界各地での食料増産に貢献しています。食料の生産性を向上させ、食料の安定供給に貢献することを目指しています。

出典:住友化学株式会社『住友化学レポート2021健康・農業関連事業』

出典:住友化学株式会社『住友化学グループのSDGsへの貢献』

日本航空株式会社

日本航空株式会社ではSDGsの17項目についてそれぞれ目標を掲げ取り組んでいます。

  • SDGs目標5<ジェンダー平等を実現しよう>

育児、介護など時間的制約のある社員もフェアに働ける、誰もが活躍できる会社を目指し、「労働時間の適正化」、「テレワークの推進」、「コミュニケーションスペースの設置」、「両立支援制度」などに取り組んでいます。

  • SDGs目標10<人や国の不平等をなくそう>

D&I(ダイバーシティインクルージョン)の推進を進め、「2023年度末までに管理職女性比率20%、2030年度末までに30%を達成」や、グローバル人材育成のため「グローバル推進室」を設置し、人材の採用、育成、登用に取り組んでいます。LGBTQへの理解促進についても法律上の結婚をしている社員に適用する制度を会社の定める同性パートナー登録を行った社員に同様に適用する制度の導入も行っています。

この他17項目すべてについて目標を設定し、SDGsの推進に取り組んでいます。

出典:日本航空株式会社『SDGs達成に向けた取り組み』

4. 【まとめ】できることから始めよう!オフィスでのSDGs

企業としてトップダウンで行われる取り組みから、現場のオフィスで始められることまで、SDGsへの取り組みは様々です。自分が今、環境、人権問題について取り組めることは何か考えてみましょう。

SDGsは難しく考える必要はありません。オフィスでの省エネ・ペーパーレス化や地域の環境活動への参加などできることから始めて、その活動を少しづつ広げていけばいいのです。

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