ガスの脱炭素化の鍵を握る「メタネーション」とは?

ガスの脱炭素化の鍵を握るメタネーションとはどのような技術なのでしょうか。2050年までのカーボンニュートラルを宣言している日本は、ガスにおける脱炭素化も目指しています。メタネーションとは、ガスの脱炭素化の選択肢の中で最も有望視されている技術です。

この記事では、脱炭素への取り組みに関心がある法人の皆さまが知っておくべき、メタネーションに関する基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. メタネーションとは?

  2. メタネーションが注目を集める理由

  3. 企業のメタネーション技術開発

  4. まとめ:メタネーションへの理解を深め、活用に備えよう。

1. メタネーションとは?

ガスの脱炭素化技術の中で最も有望視されているのがメタネーションです。ここでは、メタネーションとはどのような技術なのか、そして国内におけるメタネーションの導入目標についてご紹介します。

メタネーションとは?

メタネーションとは、水素とCO2を反応させることで天然ガスの主な成分であるメタンを合成する技術です。合成メタンは燃焼する時にCO2を排出しますが、大気中にあるCO2を回収して活用することから、相殺してCO2排出量ゼロの脱炭素燃料になると考えられています。

メタネーションによるCO2排出削減効果

出典:資源エネルギー庁『ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術』(2021/11/26)

日本が掲げるメタネーション導入目標

日本は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、メタネーションを次世代熱エネルギー産業に位置づけています。2050年までに都市ガスを合成メタンなどに転換することで、ガスをカーボンニュートラル化するとの目標を掲げており、メタネーションの年間導入量については以下のような目標を設定しています。

  • 2030年に既存インフラに合成メタンを1%注入する。

  • 2050年に既存インフラに合成メタンを90%注入する。

出典:経済産業省『グリーン成長戦略(概要)』(p.8)

2. メタネーションが注目を集める理由

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においてメタネーションは、成長が期待される重要分野に位置づけられています。ここでは、メタネーションが注目を集める背景についてご紹介します。

ガスの脱炭素化

脱炭素化に効果のある取り組みは、再生可能エネルギーやEV車の導入だけではありません。2050年までのカーボンニュートラルを実現させるためには、日本の消費エネルギーの約6割を占めている熱需要の脱炭素化も重要な課題であると考えられています。熱需要は家庭やオフィスなどにおける給湯や暖房、工場における蒸気加熱など幅広く存在しており、ガスが必要とされる熱を作り出しています。ガスの脱炭素化技術にはいくつか選択肢がありますが、その中で最も有望視されているのがメタネーション技術です。

出典:資源エネルギー庁『ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術』(2021/11/26)

経済効率の高さ

現在使用されている都市ガスの原料である天然ガスの主成分はメタンです。このメタンをメタネーションで製造した合成メタンに転換する場合、既存のインフラや設備をそのまま活用できます。そのため、コストを抑えてガスの脱炭素化を推進することができます。新規インフラ投資で全てを改修した場合、2050年において一般家庭で年間約1,4000円の負担増になることが見込まれています。

出典:資源エネルギー庁『ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術』(2021/11/26)

3. 企業のメタネーション技術開発

メタネーションの実用化を目指し、様々な企業がメタネーションの実証実験実施に向け動き出しています。ここでは、企業によるメタネーション技術の実証実験の取り組み事例をご紹介します。

東京ガス

東京ガスは、2022年3月から横浜テクノステーションにおいてメタネーションの実証実験を開始する予定であることを公表しています。東京ガスは横浜市や近隣企業などと連携し、地域におけるカーボンニュートラルの地産地消モデルを目指しています。

出典:TOKYO GAS『横浜市と東京ガスがメタネーションの実証試験に向けた連携協定を締結』(2022/1/18)

INPEX(国際石油開発帝石株式会社)

INPEXと大阪ガスは、INPEX長岡鉱場から回収したCO2を資源として活用し、メタンを合成する実証実験を2024年後半から2025年に実施する計画です。実証実験実施に伴い、合成したメタンを同社の都市ガスパイプラインに注入する計画であることも明かしています。合成メタンの製造能力は約400 Nm3/hが予定されていますが、この製造能力は世界最大級とされています。

出典:株式会社INPEX・大阪ガス『世界最大級のメタネーションによる CO2 排出削減・有効利用実用化技術の実用化へ』(2021/10/15)(p.1)

日立造船株式会社

日立造船株式会社はメタネーション装置の開発に成功し、試験用の小型メタネーション試験装置の販売を行っています。メタネーションの実証プラントを大阪市にある築港工場で公開しており、2025年を目標に設備の企業向けへの出荷の開始を計画しています。

出典:日立造船『メタネーション装置』

株式会社IHI

総合重工業メーカーの株式会社IHIは、アサヒグループ研究開発センター内にメタネーション装置を納入しています。IHIが納入したメタネーション装置は、食品企業では国内初となるメタネーションの実証試験に利用されます。

出典:メタネーション推進官民協議会『メタネーションに関するIHIの取り組み及び社会実装に際する課題認識』(2021/9/15)(p.29)

4. まとめ:メタネーションへの理解を深め、活用に備えよう。

この記事では、脱炭素化実現の鍵を握る技術として次世代熱エネルギー産業に位置づけられている、メタネーションに関して法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介しました。メタネーションとはどのような技術なのか理解を深め、活用に備えましょう。

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