カーボンニュートラル達成の鍵を握る「Scope3」とは
- 2022年06月15日
- CO2削減
カーボンニュートラルとScope3との関係は?Scope3はサプライチェーン全体での脱炭素への取り組みと密接な関係にあります。サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みが加速する今、Scope3に関する知識は中小企業にとっても欠かせないものになっています。
この記事では、Scope3と結びつきが強いサプライチェーン全体での脱炭素への取り組みやScope3に関する基本的な知識についてご紹介します。
目次
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カーボンニュートラル実現に向けた動向:サプライチェーン全体での取り組み
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カーボンニュートラルの取り組みを推奨!Scope3に関する基本的な知識
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SBT認定企業のScope3の目標設定事例
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まとめ:Scope3への理解は企業にとって欠かせない。
1. カーボンニュートラル実現に向けた動向:サプライチェーン全体での取り組み
多くのサプライヤーを抱えている大企業がカーボンニュートラルを達成するためには、サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みが欠かせません。ここではそもそもカーボンニュートラルとはどのような考え方なのか、サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みが推奨される背景をご紹介します。
カーボンニュートラルとは?
気候変動が世界に深刻な影響を与える状況下において、気候変動の主な原因と考えられている温室効果ガス排出量を削減する動きが国内外で加速しています。しかしながら温室効果ガス排出量の削減が難しい分野もあるため、完全に排出量をゼロにするのは難しいです。そこで誕生したのがカーボンニュートラルという考え方です。どうしても排出される温室効果ガスを吸収または除去により差し引き実質ゼロにするというのが基本的な考え方です。
出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)
サプライチェーン全体での取り組みが推奨される背景
大企業を中心に脱炭素経営への取り組みが拡大する中、大企業が取引先である企業(サプライヤー)にも脱炭素に向けたCO2排出量の削減目標設定や再エネ導入などを求める動きが出ています。
(例)日立製作所
日立製作所は2019年度にサプライチェーン全体で、1億1000万トンのCO2を排出しています。カーボンニュートラルを実現させるためには本社だけではなく、サプライチェーン全体での取り組みが欠かせないとし、2021年度からサプライヤーにCO2削減計画の策定を要請しています。
出典:日本経済新聞『日立、供給網全体でCO2排出ゼロ50年度目標』(2021/9/13)
2. カーボンニュートラルの取り組みを推奨!Scope3に関する基本的な知識
サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みが重要視されている今、Scope3に関する基本的な知識は中小企業にとっても欠かせないものとなりました。ここではScope3に関して知っておくべき基本的な知識についてご紹介します。
Scope3とは?Scope1・2・3について
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Scope1
事業者自らによる燃料の燃焼や工業プロセスなどにおける温室効果ガスの直接排出量。
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Scope2
他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量。
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Scope3
事業者の活動に関連するScope1と2以外の温室効果ガスの間接排出量。
上記のScope1と2、3を合計した温室効果ガス排出量がサプライチェーン排出量になります。
出典:環境省『2050年カーボンニュートラルの実現に向けた最近の動向について』(2021/1/26)(p.16)
Scope3の算定方法
大企業の取引先であるサプライヤーが直接関わってくるのがScope3です。算定対象範囲を確認した後、以下の図のようにScope3の活動を15のカテゴリに分類し、15カテゴリごとに基本式を計算します。基本式を合計したものがScope3になります。基本式は活動量に排出原単位を乗じることで求められます。
出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p.5.10)
Scope3を算定するメリット
Scope3を算定することで、企業は様々なメリットを得ることができます。Scope3を算定することでサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量を把握し、優先的に削減すべき対象を特定することができます。Scope3を算定し、その結果をCSR報告書(サステナビリティレポート)や自社のホームページなどで公表することで、環境保全に関心のある企業だということを対外的にアピールすることもできます。
出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p.1)
3. SBT認定企業のScope3の目標設定事例
自社の利益だけでなく環境保全に高い関心のあるSBT認定を受けている大企業がサプライヤーに対し、どのような目標を設定しているのか事例をご紹介します。
SBT認定企業とは?
SBTは、企業が設定する5〜15年先の温室効果ガス排出量の削減目標のことです。世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑えるというパリ協定が定める目標に整合するように、削減目標を立てることが求められます。日本はSBTへの関心が高く、2022年1月25日時点におけるSBT認定企業数は152社で、アメリカ、イギリスに次ぐ世界第3位です。
出典:環境省『SBTに参加している国別企業数』(2022/1/25)(p.41)
SBT認定企業のScope3の目標設定事例
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ナブテスコ株式会社
主要となるサプライヤーの7割にSBT認定を目指す温室効果ガス削減目標の設定を促す。
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大日本印刷株式会社
購入金額の9割に相当するサプライヤーに2025年までにSBT目標の設定を促す。
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第一三共株式会社
主要となるサプライヤーの9割に温室効果ガス削減目標の設定を促す。
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イオン株式会社
購入した製品やサービスから排出される温室効果ガスの8割に相当するサプライヤーにSBT目標の設定を促す。
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住友化学株式会社
生産重量を9割に相当するサプライヤーに温室効果ガス削減目標の設定を促す。
出典:環境省『2050年カーボンニュートラルの実現に向けた最近の動向について』(2021/1/26)(p.17)
4. まとめ:Scope3への理解は企業にとって欠かせない。
この記事では、サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みとScope3に関して法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介しました。サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現が求められる今、Scope3への理解は企業にとって欠かせないものになっています。Scope3への理解を深め、温室効果ガス削減目標の設定を検討しましょう。