不動産業界が取り組むべきSDGsとは?取り組み事例を挙げて解説

SDGsに対する関心が高まる中、不動産業界でもSDGsに参加するべきとの意見が強まりつつあります。不動産業界が取り組めるSDGsの活用にはどのようなものがあるのでしょうか。

今回は、SDGsの概要や認知度、不動産業界が取り組めるSDGsの内容、具体的な取り組み事例などについてまとめます。

目次

  1. SDGsとは?

  2. 不動産業が取り組めるSDGsとは?

  3. 不動産業のSDGs取り組み事例

  4. まとめ:不動産業界にとってSDGsは企業経営に不可欠!

1. SDGsとは?

(1)SDGsの概要

SDGs(Sustainable Development Goals)の略称で、日本語では持続可能な開発目標と訳されます。SDGsは2015年の国連サミットにおいて、全加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下、2030アジェンダ)の中で掲げられた目標です。

出典:外務省「SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform 」

2030アジェンダでは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すため、17のゴールと169のターゲットを設定し、「地球上の誰一人取り残さない」ことを目指すとしました。

出典:外務省「SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform 」

(2)SDGsに関する消費者の認知度の変化

SDGsに関する消費者の認知度の変化

出典:中小企業庁「2021年版「小規模企業白書」 第4節 SDGsへの取組」

中小企業庁が作成した2021年版「小規模企業白書」によると、SDGsについて詳しく知っている人の割合は2018年から2020年までに11.1%増えています。その一方、SDGsを知らないと知らないと答えた人の割合は、24.1%減少しました。

このことから、一般消費者におけるSDGsの認知度は向上していると考えられます。

(3)小規模事業者のSDGsに関する認知度と取り組み

小規模事業者のSDGsに関する認知度と取り組み

出典:中小企業庁「2021年版「小規模企業白書」 第4節 SDGsへの取組」

同じく、中小企業庁が出した「小規模企業白書」によれば、SDGsについて既に取り組んでいる企業は3.7%に過ぎず、取り組みを検討している企業と合わせても11.4%にとどまりました。

それに対し、SDGsの言葉を知っていても内容を知らない事業者とSDGsを全く知らない事業者が半数以上を占めています。

2. 不動産業が取り組めるSDGsとは?

SDGsでは、17の目標と169のターゲットを掲げています。この中で、不動産業界が取り組めるSDGsはあるのでしょうか。

中小の不動産会社で構成される公益社団法人全日本不動産協会は、協会のSDGsの取り組みとして以下の点を挙げています。

  • 地域の安全な不動産取引の推進

  • 空き家問題への取組み

  • 既存住宅の流通活性化

  • 社会貢献への取組み

出典:全日本不動産協会「SDGsの取り組み 」

これをSDGsの17のゴールに照らし合わせると、地域の安全な不動産取引の推進は、「11.住み続けられるまちづくりを」に、空き家問題への取組みは11と「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に、それぞれ該当します。

既存住宅の流通活性化は11と「12.つくる責任、つかう責任」に、社会貢献への取り組みは11,17に加え「1.貧困をなくそう」「3.すべての人に健康と福祉を」「10.ひとや国の不平等をなくそう」に該当するとしています。

これらのことから明らかなように、SDGsは大企業だけの取組みではなく中小企業にとっても早急に取り組むべき課題となっているのです。

3. 不動産業のSDGs取り組み事例

(1)タカオエステート

タカオエステートは1977年に岐阜県岐阜市で創業した不動産会社です。中古戸建、中古マンションの売買やリノベーション、リフォームを行っている会社です。

タカオエステートでは中古物件をリノベーションし、低価格で住宅を購入できるようにしています。さらに、住宅の再利用を促進することで木材使用料や二酸化炭素排出量の削減に努めています。

また、女性の活躍支援やこども食堂への協力、働きがいのある職場環境の整備やコンプライアンス意識の向上などにも力を入れています。

出典:株式会社タカオエステート「SDGs | 株式会社タカオエステート」

(2)加来不動産

加来不動産は福岡県北九州市にある不動産会社です。加来不動産は中古賃貸マンションの運営により、つくったものを長く使う工夫や一人親家庭への家賃支援プランを用意し、貧困をなくすよう努めています。

また、社内で使う紙を減らすためFAXのペーパーレス化やシュレッターの活用によるごみの減量、古紙回収や裏紙の再利用といった活動で資源を節約しています。

加えて、働きがいのある格差のない社会を実現するため、会社の業務の一部(管理物件や駐車場の清掃)を就労継続支援A・B型の事業所に委託するなどし、障がい者雇用の支援を図っています。

出典:加来不動産「私たちの取り組み(SDGs) | 加来不動産株式会社」

(3)東日本都市開発株式会社

東日本都市開発株式会社は、千葉県船橋市にある不動産業者です。この会社は、一般社団法人日本SDGs協会が発行する「SDGs事業認定証」を取得しました。認定された事業は3つです。

まず、1つ目は保育園の建設です。子どもたちの保育・教育の場として優れた建物を建てました。2つ目は太陽光発電設備の建設です。太陽光発電を普及させることで安価で環境負荷の小さい電力供給に寄与します。3つ目はプラスチック製品削減活動への参加です。

出典:東日本都市開発株式会社「「SDGs事業認定」を取得いたしました」

(4)株式会社WAKUWAKU

株式会社WAKUWAKUは、東京都目黒区や横浜市、大阪府吹田市などにオフィスを構える事業者でリノベーションを得意とします。

この会社では、リノベーション事業を促進することで中古住宅の新たな価値の創造や空き家問題の解決を図り、つくったものを使い続ける試みを実践しています。

神奈川県と協同で森林の作り出す「ワクワクの森PROJECT」では、森の一部をネーミングライツ森林としてワクワクの森と命名し、県の事業に協力しています。

出典:PR TIMES「ITとリアルを融合した中古住宅プラットフォーム事業を展開する、不動産テック企業の株式会社WAKUWAKU「SDGs事業認定」を取得」

出典:株式会社WAKUWAKU「-環-|株式会社WAKUWAKU|いままでにないワクワクを!」

(5)ウスイホーム株式会社

ウスイホーム株式会社は、神奈川県にある不動産事業者で、不動産の開発・分譲や賃貸・売買の仲介、建築請負、リフォームなどを手掛けています。

ウスイホームは神奈川県やかながわ信用金庫と連携し「ウスイグループSDGs宣言」を出しました。

その内容は、長期にわたり優良な状態で使用できる「長期優良住宅」や高い省エネ性能を持つ「認定低炭素住宅」の普及、既存住宅のリノベーションや空地・空き家・空きテナントの活用などです。

出典:ウスイホーム「ウスイホーム」

出典:ウスイホーム「神奈川県・かながわ信用金庫と連携し「ウスイグループSDGs宣言」を制定」

4. まとめ:不動産業界にとってSDGsは企業経営に不可欠!

かつて、SDGsは多国籍企業などグローバルな活動をする企業が中心となって取り組むものと考えられていました。しかし、近年は中小企業にとっても無視できないものとなりつつあります。

不動産業界は、土地の売買だけではなく人々の生活に密接にかかわる住宅と結びつきが深い業界です。それだけに、リノベーションによる既存住宅の活用や新規の住宅建築や低炭素住宅の施工・建築などSDGsに取り組みやすい業界です。

今後、中小企業もSDGsに対する具体的な取り組みが求められます。その時に、義務的に取り組むのではなく、公的機関は地元金融機関と連携し、新たなビジネスチャンスとしてSDGsを捉えてはどうでしょうか。

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