カーボンニュートラルの世界の動向や日本の政策について解説!
- 2022年06月15日
- CO2削減
日本を含む世界で、カーボンニュートラル実現に向けた脱炭素化の取り組みが加速しています。持続可能な企業になるためには脱炭素への取り組みは欠かせません。この記事では、カーボンニュートラル実現に向けた世界や日本の取り組みに関心がある法人の皆さま向けに、カーボンニュートラルの概念や世界や日本の取り組みをご紹介します。
目次
-
カーボンニュートラルとは?世界と日本の達成目標
-
カーボンニュートラル世界と日本の現状
-
世界と日本のカーボンニュートラルの取り組み事例
-
まとめ:カーボンニュートラルへの理解を深め、脱炭素化に取り組もう!
1. カーボンニュートラルとは?世界と日本の達成目標
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる事です。つまり、全く排出しない訳ではなく、モノやエネルギーを作るときに排出する二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量から、植物が行う光合成による二酸化炭素の吸収量を差し引いて、実質的にゼロにすることを意味します。
カーボンニュートラルを達成するには、温室効果ガス排出量の絶対値を下げること、植林等によって二酸化炭素を吸収する量を増加させること、この2点に取り組む必要があります。
世界の達成目標
出典:資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?」(2017/8/17)
カーボンニュートラルを達成するにあたって重要なトピックスがあります。それは2015年に採択されたパリ協定です。パリ協定とは、京都議定書の後継となる温室効果ガス削減に関する世界的な枠組みです。
パリ協定で定められた目標は以下の通り。
-
世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
-
できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとる
パリ協定は世界全体を巻き込んで採択されました。温室効果ガスの削減は公平性と実効性の元に先進国、後進国ともに取り組んでいかなければならないのです。
具体的な目標として、世界の二酸化炭素排出量の1/4を占める中国は2030年までに2005年比でGDPあたりの二酸化炭素排出を60〜65%削減を掲げています。また、排出シェア第2位のアメリカは2025年までに2005年比26〜28%の削減を掲げています。
出典:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」〜何が決まったのか?私たちは何をすべきか?〜』(2017.08.17)
日本の達成目標
出典:資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?」
日本は世界全体の排出の約3%を占めています。少ないと思われる人もいるかもしれません。しかし、一人当たりの排出量は年間で9トン排出しています。世界全体の平均排出量は7.6万トンであるため、平均以上の排出をしていることになります。日本は大きな改善を求められていることがわかるでしょう。
日本は2030年までに2013年比26%の削減を目標としています。これは、世界全体が掲げている目標を日本基準に統一すると、最高水準の目標になります。排出総量は少ないものの、一人当たりの排出量が多いことを自覚し、改善に努めるべく高水準の目標を掲げているのです。
出典:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」〜何が決まったのか?私たちは何をすべきか?〜』(2017.08.17)
2. カーボンニュートラル世界と日本の現状
フランスの現状
フランスは一人当たりの温室効果ガス排出量が4.4トンと日本の半分の排出量で生活しています。様々な要因でこの実績ができていますが、その中の1つとして発電にかかる温室効果ガスの排出が少ないことが挙げられます。
フランスは、発電にかかる温室効果ガスの排出を減らすことで、一人当たりの温室効果ガス排出量を日本の半分の4.4トンに抑えています。またこれまでと違った省エネルギーの施策が求められる同国は、温室効果ガス排出量の少ない、低排出量自動車の税控除や住宅のリノベーションの施策などを打ち出し、さらなる改善に努めています。
出典:資源エネルギー庁『「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み⑥』(2019.06.20)
ドイツの現状
ドイツは一人当たり温室効果ガス排出量が8.9トンと、日本国民に近い水準で排出しています。同国はGHG削減目標として2020年までに1990年比40%を削減、2030年に55%削減を目標に掲げています。GHGとは、Greenhouse Gasの略称で、二酸化炭素やメタンなどの総称です。
再生可能エネルギーの使用比率拡大に伴い、国民負担が増大しているのが問題となっており、改善が求められています。
出典:資源エネルギー庁『「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み⑦』(2019.06.25)
アメリカの現状
様々なエネルギー資源を保有し、高いエネルギー自給率を誇るアメリカですが、エネルギー起源CO2の排出量は世界で最も高い水準になっています。
同国は化石燃料で半分のエネルギーをまかなっており、この現状を改善すべく、非化石電源比率を高める方針を打ち出しています。再生可能エネルギーの比率は2010年から2016年にかけて10~15%に向上させました。また、原子力発電の規模拡大のため、2018年9月に前年比10%増となる13億ドルの予算を承認しました。
出典:資源エネルギー庁『「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み④』(2019.06.15)
日本の現状
日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、温室効果ガス排出ゼロに向けて取り組みを進めています。その中で「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、温室効果ガスの削減と経済成長の両立を目指しています。
グリーン成長戦略は大きく3つ、合計14の実行計画に分かれており、「エネルギー関連産業」「輸送・製造関連産業」「家庭・オフィス関連産業」に分類されます。これらの実行計画を達成するために、政府は予算、税制、金融面などあらゆる政策で挑戦を後押しします。
3.世界と日本のカーボンニュートラルの取り組み事例
日本企業の取り組み
-
大崎クールジェン 石炭火力試験発電所
中国電力とJパワーの共同出資で設立された同社は火力発電によって排出されたCO2を再利用する大崎クールジェンプロジェクトを行なっています。
同プロジェクトでは、発電によって排出されたCO2を液化して化学品や燃料に使用します。この手法を「カーボンリサイクル」と呼び、火力発電が7割を締める日本の課題解決に貢献しています。
世界の企業の取り組み
-
パタゴニア
世界的なECO企業として知られている同社は「カーボンニュートラルだけでは不十分」とし、自社のカーボンニュートラルだけではなく世界的な気候変動問題の解決に尽力しています。
具体的な取り組みとして、2025年までに石油原料のバージン繊維をなくすべく、製品ラインの全てにリサイクル素材やオーガニックコットンの使用拡大を進めています。
-
スターバックス
紙ストローの積極的な導入など、環境問題にいち早く取り組んでいる同社は自社とサプライチェーン(製造に関わる会社)の二酸化炭素排出量を50%削減する目標を立てるなど先進的に取り組んでいます。
具体的には植物由来の食品を取り扱い、より環境に配慮したメニューを作成することや、使い捨てのプラスチックから再利用ができるものに変えるなど、様々な変革を行なっています。
これまで気候変動問題に取り組むことは株主や経営者の視点から見ると利益が上げられなかったり、コストに感じる見方もありました。しかし、気候変動への対策がコストやリスクと考えられていた時代は終わりました。世界的な潮流や日本政府の掲げている目標を考慮すると、気候変動問題を軽視する企業に持続的な成長はないといえるでしょう。
出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策”グリーン成長戦略”とは?』(2021.05.20)
4. まとめ:カーボンニュートラルへの理解を深め、脱炭素化に取り組もう!
今回はカーボンニュートラルの説明と世界動向や日本の現状、各企業の取り組みについて解説していきました。日本の対策が不十分で、大きな変革が求められているということがわかったと思います。
温室効果ガスの主な排出主体は家庭ではなく企業です。この現実を認識し、各企業がカーボンニュートラルに向けて取り組んでいく必要があります。
具体的な取り組みとしては、IR等に温室効果ガス排出量の削減を定量的に名記することや、再生可能エネルギーの導入を進めることなどがあげられます。自社が取り組めている場合は、サプライチェーンの温室効果ガス排出量の改善を後押しすることなど、様々な取り組みがあります。カーボンニュートラル達成に向けて、今できるアクションを積極的に行なっていきましょう!