ファストファッションの環境問題とは?解決策も併せて解説!

環境問題は、ファッション業界においても無関係ではありません。ファストファッションという言葉を聞いたことはありませんか。1990年代後半から台頭したファストファッションは、消費者の間に根付き、衣類の大量生産・大量廃棄が当たり前になりました。しかし、このファストファッションの背景には、CO2の大量排出や海洋汚染など、多くの環境問題が含まれています。

この記事では、ファッション産業が抱えるさまざまな環境問題と、解決に向けた取り組みの現状を、詳しく解説します。

目次

  1. ファストファッションが引き起こす環境汚染

  2. ファッション産業の背景にある多くの環境問題

  3. ファッション産業の環境問題に対しての取り組み

  4. まとめ:身近なファッションの環境問題は世界の環境問題を知ること!

1. ファストファッションが引き起こす環境汚染

ファストファッションとは?

まず、ファストファッションの言葉の持つ意味をご説明しましょう。ファストファッションとは、手軽に安く食べられる「ファストフード」が由来となった造語です。ファッション業界においては、最新トレンドの衣類を安価に大量に生産し、短いサイクルで販売する業態のことを意味します。現在では、ファストファッションを展開するブランドは世界中に存在しています。

過剰に生産され、短期間で大量廃棄される洋服たち

ファスト(迅速)の言葉通り、ファストファッションは、トレンドの回転が非常に早いのが特徴です。流行りの商品の入れ替えを頻繁に行い、安価に販売して顧客の満足度を高めるためには、大量生産によって製作コストを下げる必要があります。その結果、衣類の生産量は倍増し、消費者の購入も増えました。しかし、大量に廃棄する衣類の量も増加したのです。

日本におけるファストファッションの現状

日本の小売り市場で販売されている衣類の約98%は、海外からの輸入品ということをご存じでしょうか。服についているタグを見ると、日本製のものはたいへん少なく、主に中国、インドなどの海外製になっています。人件費の安い国に発注することで、コスト削減に繋げているのがわかります。

日本の衣類に対する供給量は、年々増え続け、その反面衣類一枚の価格はどんどん低価格になり、市場規模は落ちています。大量生産・大量消費のサイクルが当たり前になっているのです。

国内アパレル供給量・市場規模・衣類の購入単価の推移

出典:環境省「サステナブルファッション」

2. ファッション産業の背景にある多くの環境問題

エネルギー消費によるCO2の大量発生

一枚の衣類を製造するには、原材料の調達から衣類の輸送など多くの工程を経る必要があります。その工程の間には、それぞれ環境に対する負荷がかかっています。例えば、工場で衣類を効率よく生産するためには、多くの機械を使用せねばなりません。機械を動かすためには大量のエネルギーを必要とします。使用するエネルギーが化石燃料由来のエネルギーであれば、CO2も排出します。

なかでも、石油由来の合成繊維のナイロンやポリエステルは、製造過程で大量のエネルギーを消費するため、CO2の排出も多大です。私たちが着る服一着でのCO2排出量を換算すると約25.5㎏もあります。

生産時における産業全体の環境負荷

出典:環境省「サステナブルファッション」

合成繊維から発生するマイクロファイバーの海洋汚染

合成繊維から発生するマイクロファイバーによる海洋汚染も、深刻な問題です。ポリエステルやナイロンを原料とするマイクロファイバーは繊維が非常に細いことが特徴。そのため、洗濯するときに何万本もの繊維が抜け落ち、下水で処理しきれず河川に流れ込み、海へと到達します。

マイクロファイバーは、プラスチックのため、当然自然分解はされません。生態系への影響はもちろんのこと、魚がそれを口にして、その魚が食卓に上れば人体にも影響を及ぼす可能性もあります。

農薬や有害物質による人体への影響

合成繊維以外の衣類製造にも、問題がないわけではありません。天然繊維で衣類を製造するには綿が必要です。しかし、オーガニックではない場合は、生産に大量の農薬が使用されている可能性があります。また、安価な衣類の中には、染料や着色料など人体にとって有害な化学物質を多量に使用している場合もあります。先進国ではこれらの使用を禁止していても、途上国では使用されている現状があり、それが低価格で販売されています。

3. ファッション産業の環境問題に対しての取り組み

持続可能なサステナブルファッション(Sustainable Fashion)とは

サステナブルファッションとは、ファッションに対して「持続可能(サステナブル)」な取り組みを行うことです。近年注目されているSDGsの目標12「つくる責任つかう責任」にも大きく関わる内容と言えるでしょう。大量生産・大量消費ではなく、ファッションの製造過程から販売までを、持続可能な社会を築くために見直し、取り組むことが急務なのです。

サステナブルファッションでは、以下のような取り組みが推奨されています。

  • 一枚の服を長く着よう。

  • 環境に配慮された工程や素材で製造されているかを確認しよう。

  • 服はシェアしたりレンタルしたりしよう

  • 古服を資源として活用しよう。

環境負荷低減に取り組む「ファッション協定」

「ファッション協定」とは、フランスのピアリッツで、2019年8月に開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、欧米を中心としたファッション系企業32社の合計150ブランドが署名した協定のことです。以下の3つの柱を掲げ、実践することを決定しました。

  • 気候変動(Climate)

  • 生物多様性(Biodiversity)

  • 海洋保護(Oceans)

この協定には、ナイキやエルメス、グッチなどの大手のブランドメーカーが、多数参加しており、それぞれが取り組みを始めています。

スローファッションに取り組む企業

ファッション産業の環境問題を踏まえ、スローファッションに取り組む企業やメーカーも増えています。スローファッションとは、スローフードと同じように大量生産・消費社会への反省を踏まえ生まれた言葉を、ファッションにも当てはめたものです。

企業は、不要な在庫を持つことなく、必要な分だけ届ける受注生産に切り替える。消費者に商品開発の背景にある物語を知ってもらうことで、商品に愛着を抱き長く使用してもらう。これらの努力を行い、企業と消費者が、ともにスローファッションに取り組むことを推進します。

ハイブランド企業の取り組み

ここではハイブランド企業の具体的な取り組み事例をご紹介します。

  • グッチ

世界を代表するグッチは、カーボンニュートラルに向けて、あらゆるサプライチェーンでの脱炭素に向けた取り組みを開始。また、コレクションにおいては、リサイクル、オーガニックなどの新しい資源を必要としない材料での製造を行い、循環型のファッションを目指しています。

  • ナイキ

ナイキでは、「Move to Zero」という、CO2排出ゼロを目指す取り組みを行い、スポーツの未来を守るという目標を掲げています。また、50%再生素材が使用された「サステナブル素材」商品の販売も行っています。

     出典:ナイキ「サステナビリティ」

  • アシックス

アシックスは、日本で唯一「ファッション協定」に参加している企業です。2050年までには、温室効果ガス排出ゼロを目標にしており、2015年比で、事業所のCO2排出量を38%、サプライチェーンでは、製品あたりのCO2排出量を55%削減を目標にしています

     出典:株式会社アシックス「サステナブリティ」

4. まとめ:身近なファッションの環境問題は世界の環境問題を知ること!

身近なファッションという分野にも、さまざまな環境に対する問題があることに驚かれたのではないでしょうか。ファッションは私達に欠かせないものであるだけに、ひとりひとりの意識が非常に重要です。

企業は、ビジネスの上でファッション業界に携わる可能性が大いにあるでしょう。ファッション産業の環境問題に目を向け、ともに取り組んで行くことは、未来の地球環境に対して貢献する道にも繋がります。ファッションの環境問題にも目を向け、できることから取り組み、ぜひ、企業の環境価値を高めてください。

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