FIP制度の対象は?FIP制度の概要と仕組みも解説

2022年4月から、FIP制度が始まります。電力を売った価格に対して一定のプレミアム(補助額)を乗せて交付する制度です。現在FIT制度を利用している人や、これから太陽光システムを導入しようとする人も、制度の対象がどのようになるのか気になることでしょう。この記事では、FIP制度の概要と対象、仕組みを解説します。ぜひ今後、電気を売る際の参考にしてください。

目次

  1. FIP制度とは?FIT制度との違い

  2. FIP制度の対象

  3. FIP制度の仕組み

  4. FIP制度で売電するポイント

  5. まとめ:FIP制度を上手に活用しよう!

1. FIP制度とは?FIT制度との違い

FIP制度は今までとどこが違うのでしょうか。ここでは、概要とFIT制度との違いについて説明します。

FIT制度とは

2012年に導入された「固定価格買取制度」のことで、再エネで発電した電気を電気会社が一定価格で買い取る制度です。電力を買い取る電力会社に、電気を利用する人が賦課金を収めることによって成り立ちます。

固定価格買取制度の仕組み

出典:資源エネルギー庁『固定価格買取制度』

電力市場は常に変化していますが、変化を気にすることなく常に定額で電気を売ることができるのが特徴です。例えば、固定買取価格10円/kWhで買い取った場合、その価格で10年もしくは20年取引し続けることが可能です。また、発電の計画と実績の差を気にする必要もありません。これを「インバランス特例」と言います。

FIP制度とは

FIP制度とは、発電事業者が卸売市場などで電気を売った際に、市場価格に一定の補助額をつけて合計金額で買い取る方法です。それにより、再生可能エネルギー導入を促進することが狙いです。電気を売るタイミングを電力市場に応じて選択できるため、投資と同じように高いタイミングで売ることで高い収入が期待できます。

FIT制度とFIP制度の違い

双方の制度の違いは、FIT制度が固定価格なのに対してFIP制度は市場と連動しているため、買取金額が変動するという点です。買取業者の指定はなく、電気を売る業者が自身で買い取ってくれる業者を探す必要があります。

FIT制度とFIP制度のしくみをそれぞれグラフで示しています。

出典:資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』(2021/8/3)

市場連動型のため、事業者は蓄電池などで電力をため、市場価格の高い昼に売買するという方法も可能です。これにより、買取価格も選択できるようになり太陽光発電システムの普及が期待されます。

2. FIP制度の対象

それでは対象はどのようになるのでしょうか。ここでは対象となる電力に関して詳しく説明します。

FIP制度の対象となるもの

・対象:1,000kW以上の太陽光

・方法:入札

1,000kWの出力はメガソーラーに当たります。1,000kWの発電所が発電できる量は年間1,000,000kWh以上と言われています。一世帯における一般的な電気使用量が年間4,322kWh程度のため、231世帯をカバーできることになります。そのため入札となる対象は大規模な発電設備が該当するでしょう。

出典:環境省『2017年度の家庭のエネルギー事情を知る』

FIT制度とFIP制度を選択できるもの

・対象:50kW以上1000kW未満の太陽光

・方法:基準価格1kW時あたり10円

50kWの発電設備に必要な面積は500平方メートル程度です。産業用の太陽光パネルは1枚当たり300Wの出力のため、167枚以上のパネルが必要になります。ある程度まとまったスペースがないと難しいでしょう。また、50kWを超えると高圧隣、発電所(自家用電気工作物)という区分に変わります。変圧器を設置する必要があったり電気主任技術者の届出も必要になり、手間が増えます。事前に確認して準備しておきましょう。

この範囲の電力の場合、FIT制度でも一部は入札の対象となりますが、FIP制度は入札の対象にはなりません。逆に、現在1MW以上のメガソーラーの発電所の場合、2022年4月よりFIT制度から切り替える必要があります。

FIT制度の対象となるもの

・対象:50kW未満の太陽光

住宅用の太陽光システムの平均的な積載量は4kW程度です。そのため、住宅用の設備はFIT制度の対象となるでしょう。事務所なども同等です。4kWでしたら平均的な4人世帯の電力なら十分賄えます。小規模の電気を売買する場合は、固定価格買取制度を活用しましょう。

出典:東大阪市『太陽光発電を導入してエコな暮らしを』(2021年12月9日)

3. FIP制度の仕組み

FIP制度は、市場連動性で「売電した電気の価格」に「プレミアム(補助額)」を上乗せした金額が収入になります。ここでは、その仕組みについて説明します。

基準価格

基準価格とは、FIT制度の「調達価格」(電気の1kWhあたりの単価)にあたるものです。基準価格は、調達価格と同じ水準です。

参照価格

「参照価格」とは、市場価格のことで、市場取引で電気を売る業者が期待できる収入のことです。参照価格は、「非化石価値取引市場の価格」と「卸電力市場の価格」の合計から、「バランシングコスト」を引いた価格です。「非化石化価値取引市場」とは、2018年創設された市場で、非化石電源(再生可能エネルギー)の電気の価値を「非化石化価値」として証書化し、取引できるようにしたものです。非化石証書は電力会社によって取引され、市場のオークションで入札されます。太陽光発電システムで発電された電気は非化石化価値の他に環境価値もあります。また、この制度は需要家の賦課金の低減を考慮しての側面もあり、市場での売上金は国民の賦課金の軽減に使用されています。

出典:資源エネルギー庁『再エネ価値取引市場とは』(p1)(2021年7月)

市場価格などによって参照価格が定められるしくみを図であらわしています。

出典:資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』(2021/8/3)

プレミアム

プレミアムは、「基準価格」と「参照価格」の差です。発電事業者は、収入として、電力を売った価格に補助金を加えた分を受け取ります。補助額は、参照価格によって変動します。日本の場合は、海外のFIP制度を組み合わせた独自の制度であり、市場価格の平均価格を考慮して1ヶ月ごとに更新されます。

基準価格、参照価格とプレミアム単価の関係を図であらわしています。参照価格は1か月ごとに更新されるため、それにともなってプレミアム単価も変動しています。

出典:資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』(2021/8/3)

市場価格が安くなり参考価格が安くなると補助額が多く、市場価格が高くなると補助額は少なくなります。また、プレミアムは市場価格が高騰して参考価格が高くなってもマイナスの金額にはなりません。

さらに出力制御時にプレミアムは支払われませんが、その時間帯に交付予定だったものを他の時間帯に交付することが予定されています。出力制御とは、電力需要に対して発電量が大きくなった際に発電を抑制することで、接続契約を結ぶ際の基本となることです。電力を売るタイミングを選べばより大きな収益が期待できるでしょう。

バランシングコスト

 「計画値」と「実績値」の差額です。FIT制度では「インバランス特例」で免除されていましたが、FIP制度では、事業者が作った「計画」と「実績」に差がある場合、その差を埋めるための費用を払う必要があります。差を一致させることをバランシングといい、プレミアムの一部にその差が当てられます。

2022年はkWhあたり1円と高く設定されており、少しずつ金額を減らしていくことが予定されています。

 

出典:資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』(2021/8/3)

4. FIP制度で売電するポイント

電力を売るポイントは、蓄電池を併用することです。太陽光システム単体では、発電した電力を過剰に貯めることができないため、電力の需要の高い昼などに発電しておいた電気を貯めておいて売ることができません。そのため、蓄電池を併用して蓄電池に電気を蓄えておくことで電力を貯め、需要の高い時間帯に電気を売ることで利益を得ましょう。なお、一般的に需要が高い時間帯は朝、夕方、夜間です。

また、専門のアグリゲーターにアドバイスを受けることも効果的です。政府では今後、IoT機器を用いて供給電力を制御するアグリゲーターの役割を持つ人をおくアグリゲータービジネスを作り出す予定で、すでにアグリゲーターとして機能する太陽光発電業者もあります。発電の予測や電力の調整が難しい場合は、アグリゲーターのような仲介業者を置くことを考えても良いでしょう。

5. まとめ:FIP制度を上手に活用しよう!

FIP制度は、電力を売った金額にプレミアムが合算された収入を得ることができる制度です。蓄電池と合わせることで、需要の高い時間帯に高い金額で電気を売ることができます。出力が50kW以上の太陽光システムの導入を考えている企業の担当者の人は、ぜひFIP制度と蓄電池を活用して太陽光発電に参入しましょう。

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