中小企業も環境問題に向き合う!エコアクション21とは?

世界各国で環境問題が注目され、日本でも様々な取り組みが行われています。ここでは、環境問題に取り組む企業が参加しているエコアクション21とはどのようなものなのか、また実際にどのような活動を行っているのか、事例も合わせて解説していきます。

これからは環境問題への対応が、企業経営にとっても大きな指針となることは確実視されていますので、エコアクション21についてしっかり理解を深めておきましょう。

目次

  1. エコアクション21とは?

  2. エコアクション21の詳しい内容

  3. エコアクション21のメリットとは?

  4. エコアクション21に参加する企業事例

  5. 【まとめ】エコアクション21は中小企業向けのISO!

1. エコアクション21とは?

まず、エコアクション21がどのような取り組みなのか、その概要についてご紹介します。

エコアクション21とは?

エコアクション21は環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステム(EMS)です。地球環境へのパフォーマンスを継続的に改善する手法である、

  • PLAN(計画)

  • DO(実行)

  • CHECK(検証)

  • ACTION(改善)

という4つの「PDCAサイクル」を基礎として、組織、事業者が環境への取り組みを自主的、効果的、効率的に行うための手法を定めたものです。

エコアクションの概要図

出典:環境省『地球と地域の未来へ今できることエコアクション21のすすめ』(p.3)

中小企業向けのISO

エコアクション21は、中小企業が行う環境問題への対応に対して審査をし、認証を与える国内規格の制度です。国際基準である「ISO14001」※が大企業向けであるのに対して、エコアクション21は中小企業向けの環境経営の基準と言えます。二酸化炭素や産業廃棄物削減の分野で環境に優しい製品やサービスの企画・製造・開発・販売を進める仕組みで、同時に経営の発展を目的としています。

認証・登録事業者数の規模別割合

出典:環境省『地球と地域の未来へ今できることエコアクション21のすすめ』(p.6)

※ISO14001は環境マネジメントシステムに関する国際規格で、社会経済的ニーズとバランスをとりながら、環境保護、変化する環境状態に対応するための組織の枠組を示しています。

エコアクション21の特徴

  • 中小企業向けの環境経営システム

エコアクション21は、中小企業が環境経営を通してこれからの社会に適応した組織へと成長することを支援するための仕組みで、環境問題への取り組みにより効果的、効率的に継続できる規格となり、ISO14001を参考に策定されています。

  • 環境経営への取り組みの明確化

エコアクション21は、環境経営に必要な二酸化炭素排出量、廃棄物排出量、水使用量などの「環境負荷項目」と、二酸化炭素排出量削減、廃棄物削減、節水、省エネ化などの「取り組むべき活動」を定めることで、事業者がどのようなものに取り組むべきかを明確にし、分かりやすくすることで効率的に進められるように策定されています。

  • 環境経営への取り組みの第三者評価

エコアクション21は、環境経営のレポートの作成と公表を要件としており、これを通じて取引先や自治体へPRでき、社会的信頼を高め企業価値の向上につなげることができます。また活動内容についての第三者から評価を受けることにより、より良い活動への改善につながります。

2. エコアクション21の詳しい内容

ここからはエコアクション21についての内容についてご紹介します。実際に環境省より示されているエコアクション21の仕組みとはどのようなものなのか見ていきましょう。

環境省が2017年に策定した「エコアクション21ガイドライン」では、PDCAサイクルに沿った14の要求事項がまとめられています。

計画の策定(Plan)

  • 組織は全組織、全活動を対象として環境経営システムの構築・運用を維持する。

  • 代表者は経営における課題とチャンスを整理し、明確化する。

  • 代表者は環境経営に関する方針を定め、誓約し、全従業員に周知する。

  • 事業活動における環境負荷を把握する。(二酸化炭素排出量・廃棄物排出量・水使用量・化学物質使用量)

  • 事業を行う際の環境関連法規を整備し、取りまとめる。また、常に最新のものを管理する

  • 上の項目を踏まえて具体的な環境経営目標及び環境経営計画を策定する。(二酸化炭素排出量の削減・廃棄物排出量の削減・水使用量の削減・化学物質使用量の削減・環境性能の向上・サービスの改善)

計画の実施(Do)

  • 効果的な実施体制を構築し、全従業員に周知する。また運用・維持するための経営資源を確保する。

  • 全従業員を対象とした教育・訓練を実施する。

  • 組織内での環境コミュニケーションを実施し、外部からの苦情・要望への対処をする。また環境経営レポートを作成し、公表する。

  • 環境経営目標を環境経営計画に基づき実施する。

  • 環境上の緊急事態を想定し、準備・対応策を定め定期的に訓練を実施する。

  • 取り組み内容の実施状況や、結果についての文書類を作成し、適切に管理する。

取り組み状況の確認と評価(Check)

  • 目標・計画の達成状況・関連法規の遵守状況の確認、評価を適切な頻度で実施する。

全体の評価と見直し(Action)

  • 代表者は定期的に取組状況、効果を評価し、総括的に見直しを実施、必要な指示を行う。

エコアクションのフロー

出典:環境省『エコアクション21ガイドライン2017年版』(2017.4)

このように環境経営に対してPDCAサイクルを回し、改善と実行を繰り返すことで好循環をつくり出すことを目的としています。

3. エコアクション21のメリットとは?

では、企業がエコアクション21に取り組むメリットはどのようなものがあるのでしょうか。大きく分けて5つご紹介します。

  • 総合的な環境対応が可能

エコアクション21のガイドラインには「環境経営システム」・「環境への取り組み」・「環境コミュニケーション」の3要素が一つに統合されており、ガイドラインに沿って行うことで環境問題への取り組みを総合的に進めることができます。

  • 経営面での効果

環境経営システムの仕組みづくりと改善を継続的に行うことで環境面の他、経費削減・生産性の向上・目標管理の徹底などの経営面での効果をあげることができます。

  • ビジネスチャンスの拡大

現在、多くの企業が環境問題への取り組みや環境経営システムの構築を取引条件の一つとしており、これに対応することができます。また、自治体からの補助や、入札資格審査での加点が受けられる場合もあります。

  • 金融機関からの関連融資

多くの金融機関がエコアクション21への認証・登録事業者向け低利融資制度を実施しており、これに対応することができます。

  • 社会からの信頼・企業イメージのアップ

第三者機関からの認証を受けることは社会的な信頼の獲得につながり、取引先や、消費者からの信頼性の向上につながります。また、企業の社会的責任(CSR)の一環としての効果もあります。

4. エコアクション21に参加する企業事例

ここからは実際にエコアクション21に参加している企業の取組事例についてご紹介します。

コムパックシステム株式会社

長野県上田市で一般段ボールや輸出用強化段ボールを取り扱う総合包装企業のコムパックシステムでは、2000年頃にクライアント企業から環境に対する問い合わせが増えたことをきっかけにエコアクション21の認証取得に取り組み、CO2排出量の20%削減(2018年度比)、産業廃棄物排出量20%削減(2018年度比)、年次有給休暇の取得率向上を目標としています。

同社が開発した環境貢献商品は日本パッケージングコンテストで2013年から2015年の3年連続、2017年には世界包装機構のワールドスター賞を受賞、2018年には環境コミュニケーション大賞の優良賞にも輝いています。現在もSDGs経営に取り組み、モデル企業として「長野県SDGs推進企業登録制度」に登録しています。

出典:コムパックシステム株式会社

株式会社トリドールホールディングス

全国に「丸亀製麺」を約850店展開するトリドールホールディングスでは、2019年にエコアクション21を導入し、「食品ロス削減」、「リサイクル率向上」、「CO2排出削減」で目標を掲げ環境問題に取り組んでいます。

同社は2013年から「まるごとまるがめ体験教室」という子供向けの食育教育にも取り組んでおり、社会貢献事業にも積極的に取り組んでいましたが、環境や社会問題への取り組みが新しい需要(ファン)をつくると考え、西東京の丸亀製麺10店舗で目標達成の実証実験を行っていて、2022年度で全店舗、2023年度では炭火焼き鳥屋「とりどーる」、とんかつ、かつ丼の「豚屋とん一」など同社ブランド全店での導入を目指しています。

出典:株式会社トリドールホールディングス

野村不動産投資顧問株式会社

野村不動産HDの100%子会社として2003年に発足した同社は、投資家からの環境対応への注目度からESG投資に取り組み、2015年に不動産ポートフォリオにおけるESGへの配慮を評価するベンチマーク「GRESB」、2017年に国際連合が公表したイニシアティブの投資に際して考慮すべきESG課題の6原則「PRI」などサステナビリティを主眼においた国際的なイニシアティブに署名し、2020年にエコアクション21を認証取得しています。

運用する不動産の委託先であるPM会社、BM会社、またテナントを巻き込みボトムアップの形での省エネ・省資源への取り組みが評価され、2020年に21世紀金融行動原則総合部門で環境大臣賞を受賞しています。

出典:野村不動産投資顧問株式会社

大阪信用金庫

大阪信用金庫では、「社会課題が山積するこれからの時代には経済・環境・社会の3側面での発展を支えることが地域金融機関の使命」と考え、まず自分たちがか変わる必要があるとし、2010年にエコアクション21を取得し、電力、水、ガソリンなどの使用量の削減に取り組んでいます。

2012年からは取引先企業に環境活動の訴求を始め、セミナーを開催。参加企業は470社を超えています。2019年までに参加企業のうち36社がエコアクション21の認証を取得し、認証取得企業合計で約68.6トンのCO2排出量の削減を達成しています。2019年にはSDGs宣言を発表し、中小企業の経営課題と地域の環境課題を同時に解決していくことに取り組んでいます。

出典:大阪信用金庫『環境経営レポート2019年度』

出典:環境省『未来につながる~EA21企業のトップに聞く』

5. 【まとめ】エコアクション21は中小企業向けのISO!

世界では国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けた取り組みが求められ、日本でも企業の環境問題への対応はさらに厳しい目が向けられていくことでしょう。新しい時代に選ばれる企業としてエコアクション21について考えてみてはいかがでしょうか。

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