環境マネジメントシステムとは?企業が取り組むべき環境対策を解説

環境マネジメントシステムという言葉をご存じでしょうか。「マネジメントシステム」とは、企業や事業者などが経営目標を達成するために、組織を管理する仕組みです。環境マネジメントシステムとは、組織の中で環境保全に対する目標を決め、その達成に向けて環境対策に取り組んでいくことを意味します。

本記事では、環境マネジメントシステムとは具体的にどのようなものなのか、企業として取り組む必要性や、環境マネジメントシステムの種類まで、さまざまな角度から解説します。

目次

  1. 環境マネジメントシステムとは何か

  2. さまざまな環境マネジメントシステム

  3. 企業が環境マネジメントシステムを導入するメリットとデメリット

  4. 環境マネジメントシステムの事例紹介

  5. まとめ:環境マネジメントシステムを導入し環境保全に取り組む企業へ!

1. 環境マネジメントシステムとは何か

そもそもマネジメントシステムとは

「マネジメントシステム」とは、経営目標を達成するための仕組みやルールのことです。企業において、経営方針や目標を具体的にどのように達成するのか。その役割分担や方法、目標が達成できない場合は挽回のための取り組みをどう構築するかを決めることにあります。環境マネジメントシステム(EMS)の意味

環境マネジメントシステムは言葉通り、企業が環境に対して行うマネジメントシステムです。環境マネジメントシステムは、英語で「 Environmental Management System」と呼ばれ、略してEMSとも言われています。企業が自社の経営において、「環境保全に対する方針」を取り入れ、その方針を実行するための取り組みを行うことです。

地球環境問題が世界規模でクローズアップされたことにより、環境マネジメントシステムは、国際標準化機構(ISO)により、国際規格にも制定されています。

なぜ環境マネジメントシステムが必要なのか

人間が経済活動を行う限り、あらゆる面で環境に対して影響を及ぼします。1例を挙げれば、企業の経営や生産活動において、エネルギーを使用することは避けられません。しかし、そのエネルギーが化石燃料だった場合、大量のCO2を排出します。経済活動によるエネルギー起源のCO2排出量は、年々世界的に増加しています。

大量のCO2は、地球温暖化や大気汚染の要因となるため、持続可能な社会を構築するためにも、企業は環境負荷を軽減する義務があります。また、SDGsの普及により、環境問題に関心を持つ消費者も増え、企業が環境に良いクリーンな取り組みをしているかにも敏感です。自社のイメージアップを図るためにも環境マネジメントシステムへの取り組みは必要であり、重要です。

世界エネルギー起源CO2排出量2018年

出典:環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量」(2018)(p.1)

2. さまざまな環境マネジメントシステム

環境マネジメントシステムの規格には、さまざまなものがあります。いくつかご紹介しましょう。

国が推し進める環境マネジメントシステム「エコアクション21」

(1)「エコアクション21」とは

エコアクション21は、日本の環境関連の法令に沿った形で規格がされている環境マネジメントシステムの認証規格です。中小企業などの事業者に対して、積極的に「環境保全に対する取り組み」を行ってもらうために、環境省が策定し、その普及に努めています。

出典:環境省「エコアクション21」

(2)「エコアクション21」のメリット

企業がエコアクションを取り組むことのメリットとして、以下のことが挙げられます。

  • 経営力向上・組織の活性化

エコアクション21では、企業が抱える課題をチャンスとして捉え、経営力向上と組織活性化を達成できる可能性が開けます。自社において、「環境経営目標」を持つことは、経営の見直しにもなり、さらには新たなビジネスへのチャンスをもたらします。

  • 様々な顧客からの要望に応えられる

多くの大手企業が環境問題への取り組みを開始しているため、サプライチェーンの中にある中小企業が、エコアクション21に取り組むことは、大手企業の要望に応えるという点で重要です。今後は、地方自治体や金融機関なども、企業が環境マネジメントシステムに取り組んでいるかどうかを見極めていく流れが広がるでしょう。

  • 取組項目が明確で、効果的・効率的に取組を進められる

エコアクション21は、環境経営に必須の項目に総合的に取り組めるようになっています。CO2排出量や廃棄物排出量などの、必ず取り組むべき環境負荷項目と、それを改善するための取り組みを、企業の実務負担を最小限に抑えながら実行できるように策定されています。

  • 環境経営レポートで自らの取組を発信可能

エコアクション21には、自社の環境対策を環境レポートとして作成し、公表するという取り組みがあります。環境レポートを公表することにより、企業関係者同士の環境保全に対する緊密なコミュニケーションを可能にし、相互理解や信頼を深めることができます。

  • 第三者による認証・登録制度があり、社会的信頼を高めることが可能

エコアクション21の特徴として、第三者による認証・登録制度があります。企業や事業者は、環境省から要件適合確認を受けた、エコアクション21中央事務局の認証や登録を受け、社会的信頼を獲得することができます。

出典:環境省「エコアクション21ガイドライン」(2017.4)

世界や国内のさまざまな環境マネジメントシステム

(1)ISO14001

「ISO」とは、スイスにある「 International Organization for Standardization(国際標準化機構)」のことです。「ISO14001」は、環境マネジメントシステムに対してISOが定めた国際規格です。これを取得した企業や事業者は、環境対策に取り組んでいる企業として国際的に認証を受けたことになります。近年、取引先から取得するよう打診される企業も増えています。

(2)KES・環境マネジメントシステム・スタンダード

「KES」とは、「Kyoto(京都)Environmental Management System(環境マネジメントシステム)Standard(スタンダード)」を略したものです。京都議定書の発祥の地である京都が自ら発信している規格です。中小企業をはじめとしたさまざまな事業を対象にしており、4,000以上の事業者が登録しています。

(3)エコステージ

全国規模の環境マネジメントシステムであるエコステージは、国際規格のISO14001と整合性の高い規格です。中小企業でも導入がしやすいようにと制定された規格なので、費用や工数の負担が軽く、大手企業の取引基準にも推奨されています。

3. 企業が環境マネジメントシステムを導入するメリットとデメリット

(1)メリット

環境に対する負荷を軽減・業務の変革化

企業が環境マネジメントシステムを導入する上でのメリットは、なんといっても環境に対する負荷を軽減できることです。しかも、自社の環境価値を高め、社会的なイメージアップも図れます。具体的な環境負荷軽減として、エネルギー消費の削減やゴミの分別、廃棄物のリサイクルがあります。これらは、自社の生産性を見直すことにつながり、手順の改変や業務の変革化をもたらすでしょう。結果的に自社の利益を、向上させる可能性を高めることになります。

(2)デメリット

導入にかかるコスト問題

環境マネジメントシステムを導入する場合のデメリットとして、導入に掛かるコストの問題があります。どの規格を導入するにせよ、認定取得審査の費用負担や、運用するためのマニュアルの作成の業務負担など、コストがかかります。また、環境マネジメントシステムを導入することが、企業の売上に直結するわけではないため、費用対効果をすぐに見出すことは難しいでしょう。

4. 環境マネジメントシステムの事例紹

企業事例・富士通の取り組み

富士通グループは、ISO14001規格に基づき環境マネジメントシステムを構築しています。富士通や国内グループ47社がISO14001統合認証を取得。エネルギー使用量やCO2排出量の削減、環境リスク対応など、環境対策に対する経営方針を長期的に決定し、実行しています。

出典:富士通株式会社

企業事例・LIONの取り組み

ライオングループは、事業活動や製品が環境に与える影響を把握し、評価して是正をすることで継続的に環境対策に取り組んでいます。グローバルな環境対応を目指し、環境マネジメントシステムへの取り組みをホームページで公表しています。

ISO14001規格を取得し、また「Lion Corporation」は、政府からグリーン経営企業の認証も受けています。

出典:ライオン株式会社(Lion Corporation)

5. まとめ:環境マネジメントシステムを導入し環境保全に取り組む企業へ!

環境マネジメントシステムについて、さまざまな角度から詳しく解説しました。企業が環境問題について取り組むことは、いまや当然の時代となりました。地球環境の未来を考え、持続可能な社会を築くことは急務であり、企業の義務でもあります。

ぜひ、環境マネジメントシステムの導入を検討し、地球や社会の未来のために貢献する企業となることを検討してはいかがでしょうか!

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