地熱発電とは?普及が進まない日本の現状を打破するためには?

地熱発電とは?脱炭素社会実現に向けて脱炭素への取り組みが加速する中、再生可能エネルギーへの関心が大きな高まりを見せています。資源が豊富で天候に左右されないなど様々なメリットがあるにもかかわらず普及が進んでいないのが地熱発電です。この記事では、地熱発電の基本的な知識や普及を阻むデメリット、現状を打破するための国の取り組みなどについてご紹介します。

目次

  1. 地熱発電とは

  2. エコで注目!地熱発電のメリット

  3. なぜ普及は進まない?地熱発電のデメリット

  4. 今後、地熱開発を進めていくには?

  5. まとめ:地熱発電の動向を理解し、今後の取り組みを検討しよう!

1. 地熱発電とは

再生可能エネルギーの1つである地熱発電とはどのようなエネルギーなのでしょうか。ここでは地熱発電に関する基本的な知識として概念や地熱発電割合、2030年にどの程度の普及が見込まれているかについてご紹介します。

地熱発電とは

地熱発電とは地下にある地熱エネルギーを用いた発電のことです。地熱発電の発電方法にはフラッシュ方式やバイナリー方式などいくつかありますが、新エネルギーに定義されているのは、バイナリー方式による発電のみです。バイナリー方式とは、地熱流体の温度が低い時に、水よりも沸点が低い媒体を加熱させることで蒸気を発生させ、タービンを回して発電させるというものです。

バイナリー方式

出典:資源エネルギー庁『地熱発電』

地熱発電割合

日本の電源構成のうち、地熱発電が占める割合は、2011年度0.2%で2018年度も0.2%でした。再生可能エネルギーの割合は10.4%から16.9%に増加しているため、地熱発電の普及が進んでいないことがうかがえます。

再生可能エネルギーの導入状況

出典:資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020年9月)(p. 6)

地熱発電の目標割合

2020年3月末時点における地熱発電設備のFIT前導入量とFIT導入量の合計量は59.3万kWです。2030年度における導入割合目標として140〜155万kWが見込まれています。

出典:経済産業省『2030年における再生可能エネルギーについて』(2021/7/6)(p.27.28 )

2. エコで注目!地熱発電のメリット

地熱発電の持つメリットから、日本では早い時期から地熱発電が注目されていました。ここでは地熱発電の3つのメリットについてご紹介します。

脱炭素電源で環境に優しい

再生可能エネルギーとして5つの電源が定められています。

  • 太陽光発電

  • 風力発電

  • 水力発電

  • バイオマス発電

  • 地熱発電

再生可能エネルギーが注目されているのは、発電時に温暖化の原因となるCO2

を排出しないからです。設備の建設から廃棄に至るライフサイクル全体における

CO2排出量も化石発電燃料と比較すると大幅に削減できます。

再生可能エネルギーの導入状況

出典:環境省『1. 再生可能エネルギー導入加速化の必要性など』(p.2)

資源が豊富

日本は火山帯に位置しているため、地熱発電に適した立地にあると言えます。地熱発電は、地下に溜まっている地熱エネルギーを燃料として活用するため、石油や石炭などの化石燃料のように資源が枯渇するリスクもありません。

出典:資源エネルギー庁『地熱発電』

天候に左右されない

太陽光発電や風力発電には天候に左右されるデメリットがあります。地熱発電は地熱エネルギーを活用するため、天候に左右されることなく安定した供給を確保できます。

3. なぜ普及は進まない?地熱発電のデメリット

火山帯に位置する日本では、戦後早くから地熱発電が注目されていました。1966年に岩手県八幡平市松川温泉にある地熱を活用した松川地熱発電所が本格的に稼働していますが、現在までに普及は思うように進んでいません。ここでは地熱発電の普及を阻んでいるデメリットについてご紹介します。

発電設備の設置に時間や費用面でコストがかかる

日本で地熱発電の普及が進まないデメリットとして、高い開発コストや10年を超える長期に渡る開発期間があげられます。また、掘ってみないと地熱発電設備を設置できるか分からないリスクから開発への着手を躊躇する事業者もいます。

出典:経済産業省『再生可能エネルギー各電源の導入の動向について』(2015年3月)(p.12)

地域住民からの理解を得られないことがある

温泉枯渇や環境への影響を懸念した住民から反対を受け、地熱発電設備の設置が始められないケースもあります。住民の理解を得るための丁寧な説明が求められます。

出典:経済産業省『再生可能エネルギー各電源の導入の動向について』(2015年3月)(p.10)

地熱資源に恵まれた土地を開発できていない

日本は世界第3位の地熱資源のポテンシャルを有する国であるにもかかわらず、大規模な地熱発電設備を設置するための土地の開発が行われていません。その原因は国立公園や温泉地付近に地熱資源が存在していることにあります。

出典:資源エネルギー庁『【インタビュー】「地熱開発を進めていくためには、地域との共生が何より大切」—小椋 伸幸氏(後編)』(2019/5/9)

4. 今後、地熱開発を進めていくには?

地熱発電は日本に適したエネルギーであるにもかかわらず普及が進んでいない現状を踏まえ、政府は様々な取り組みを実施しています。ここでは国が進める取り組みをご紹介します。

地熱発電が抱える課題を解決するために様々な支援策を実施しています。

補助金制度

初期調査にかかる費用や、長期間にわたる開発をサポートする費用の一部を補助金として交付しています。

時間にかかるコストを削減するための技術開発

開発にかかる期間を短くするために、井戸の掘削に成功する確率を高めたり、掘削速度を速める技術開発に取り組んでいます。通常4年の月日が必要とされる環境アセスメントにかかる期間を短くするための実証事業も実施しています。

出典:資源エネルギー庁『地熱という恵みをエネルギーとして活かしていくために』(2017/11/2)

5. まとめ:地熱発電の動向を理解し、今後の取り組みを検討しよう!

地熱発電とはどのようなエネルギーであるのかなどについてご紹介しました。恵まれた地熱資源に恵まれている日本ですが、記事内でご紹介した様々なデメリットから普及は思うように進んでいないのが現状です。しかしながら2030年度に掲げている目標を達成するために、地熱発電設備が設置しやすい環境が整っていくものと予想されます。地熱発電の動向を理解し、企業でどのような脱炭素に向けた行動をするのか検討につなげていただければと思います。

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