PPA導入を考える!仕組みと利用できる補助金について
- 2022年06月15日
- CO2削減
環境問題対策として電力の再エネ化を考えている企業も多くなっています。その中で注目を集めているのが「PPAモデル」の導入となります。現在、推進の後押しとして政府も補助金の支給を行っており、今後の普及も見込まれています。ここでは「PPA」とはどのようなものか、また導入に際しての補助金の仕組みについてご紹介します。これからの環境対策のひとつとして参考にして下さい。
目次
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再生可能エネルギー拡大の切り札!PPAとは?
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政府も後押し!PPAで利用できる補助金とは?
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本当にリスクなし?PPAのメリット・デメリットとは
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【まとめ】補助金利用でメリット多数!PPA導入を考えよう!
1. 再生可能エネルギー拡大の切り札!PPAとは?
まず、「PPAモデル」についてどのような仕組みになっているのか解説します。
PPAとは?
PPAは「Power Purchase Agreement(電力販売契約)」の略で、売電事業者と需要者が直接電気の売買契約を結ぶことを言います。これにより、需要者が特定の太陽光発電設備から再生可能エネルギーを指名買いできます。需要者は100%再生可能エネルギーで発電した電力を使用していると称することができるのです。
日本での「PPAモデル」はPPA事業者が中小企業などの電力消費者の敷地内(建物の屋根など)に太陽光発電設備を無償設置し、運用・保守を行うことを言います。太陽光発電設備がPPA事業者という第三者の所有物となるため、「第三者所有型モデル」とも呼ばれています。
PPA事業者は発電した電力の消費量を検針し、需要者は使用した電気料金を支払います。初期費用やメンテナンス等の維持費はPPA事業者が負担するため、費用をかけずに電力コストが削減できるということになります。
自社所有型との違い
PPAモデルの他に、自社で電力設備を所有する「自社所有型」という導入方法もありますが、それぞれにメリットとデメリットがあるため、どちらの発電方法を導入するか検討する場合、現在の電力使用状況を把握しておく必要があります。
自社所有型の特徴としては、
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初期投資が必要
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固定資産税・保険等の資産管理が必要
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保守メンテナンス費用が必要
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自家消費分の電気使用料が無料
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税制優遇が適用される
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5~15年前後で投資回収が可能
となっています。
2. 政府も後押し!PPAで利用できる補助金とは?
PPAは2020年より環境省による補助事業がスタートしており、2021年12月に予算通過した補正予算では「PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」として予算計上されています。また、令和4年度の概算要求額として164.5億円(令和3年度予算50億円)を計上しています。
出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』
これはPPAの活用によって再エネの導入を促進させ、太陽光発電設備、蓄電池の導入・価格の低減・ストレージパリティの達成を目指しています。
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ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
太陽光発電や蓄電池の設置を行う事業者に対して、サービス料金の低減などで需要家に還元する事業者を補助金で支援する施策です。これにより、蓄電池を導入しないより蓄電池を導入した方が経済的メリットのある状態(ストレージパリティ)を目指しています。
出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(p2)
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新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業
駐車場や農地・ため池の利用など、新たな手法での再エネ設備の導入について支援を行い、地域の再エネポテンシャルを有効活用し、価格の低減促進を目指しています。また、得られた実施手法や施工方法をまとめ、横展開を図ることも目標としています。
出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(p3)
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再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業
太陽光や風力の主力電源化には出力変動や、予測誤差に応じて電力需要等を遠隔制御できる体制が必要となります。再エネ設置業者から運転制御可能で、エネルギーマネジメントや省CO2化が図れる設備の整備や、遠隔制御実績を報告できる事業者に向けた支援となります。
出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(p4~5)
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平時の省CO2と災害時避難施設を両立する直流による建物間融通支援事業
電力変換段数が少なく、電力変換時のエネルギーロス低減による省CO2化が可能な直流給電システムの構築への支援となります。直流給電システムを複数の建物間で構築することで、一定エリア内で平時は省CO2化を図りつつ、災害時には地域の避難拠点を形成することもできます。
出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(p6)
3. 本当にリスクなし?PPAのメリット・デメリットとは
PPAモデルの導入によるメリットは多くありますが、注意が必要なデメリットももちろんあります。ここではPPA導入によるメリット・デメリットについて解説します。
PPAのメリット
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初期費用とメンテナンス費用が不要
PPAモデルによる発電設備の設置・管理は基本的にPPA業者が行うことになりますので、初期投資や管理コストがかかりません。つまりリスクゼロで再生可能エネルギーでの発電電力を使用できるのです。管理コストがかからないため、資産計上や、減価償却等の経理上の手間も発生しない点もメリットと言えるでしょう。
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電力会社からの購入電力の削減
自家発電電力を使用することで、電力会社からの購入電力を削減できます。また使用電力の多いピーク時の使用電力を抑えることで最大デマンドを抑制し、電気基本料金の削減につなげることも可能となります。
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再エネ賦課金の削減
太陽光や、風力等の再生可能エネルギーによる発電は、電力会社が買い取っている電力について契約者が分担して費用を支払う「賦課金」という仕組みがあります。これは個人・企業とも電気を使用する全ての消費者が対象となり、電気料金と一緒に請求されています。
再エネ賦課金は使用した電気量に応じた金額となり、企業となると莫大な賦課金を支払うことになります。PPAモデルで発電した電気には賦課金が発生せず、この支払い金額を抑えることで経費の削減が可能となります。
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電気料金の安定化が図れる
再エネ賦課金や、消費税、燃料の高騰等の外的な影響による電気料金の値上げに影響を受けず、安定した価格での電力供給が可能となります。
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企業価値の向上
再生可能エネルギーを使った電力を使用していることは企業価値の向上につながります。現在はSDGsや、ESG投資など企業が環境問題に取り組むことが企業価値の向上とされ、消費者に向けてのアピール効果が大きくなっています。
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BCP対策
BCP対策とは自然災害などで事業継続が困難になった際の対策になります。電力が止まってしまうと事業の継続はほぼ不可能になりますが、自家消費太陽光発電設備と、蓄電池を併用すれば非常用電源として備えることができます。これにより人的被害や、経済的損失を最小限に抑えることができるでしょう。
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設備の譲渡
PPAモデルでは契約期間の満了時に設備を需要者に譲渡する契約が一般的です。ソーラーパネルなどは20年の出力保証になっている場合が多く、メーカー保証のついた設備をそのまま譲渡してもらうことができます。(保証期間などの契約内容については確認が必要です)
以上のようにメリットの多いPPAモデル導入ですがデメリットもありますので注意が必要です。
PPAのデメリット
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長期契約が必要
PPAモデルの契約は設備所有者とPPA事業者による継続購入の長期契約となります。多くは10年契約ほどとなりますので、費用・保証・譲渡条件等の契約内容はしっかりと確認しておく必要があります。
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交換・処分ができない
自社敷地内の設備ですが、所有者はPPA事業者となりますので、交換や処分を自由に行うことはできません。
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譲渡後のメンテナンス費用
契約満了後は利用者に譲渡される契約が一般的となりますが、その後のメンテナンス・管理費用は自社負担となります。契約の際にはメンテナンス内容も確認して、管理費用がどのくらいになるのか把握しておいた方が良いでしょう。
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電気代削減率が低い
自社所有型と比べ、電気代の削減率は低くなります。自社所有型では電気の使用はゼロ円と言えますが、PPAモデルでは使用した分の電気料金を支払う必要があります。PPA事業者によって電気料金は異なりますので契約前に複数社から料金について確認しておくと良いでしょう。
4.【まとめ】補助金利用でメリット多数!PPA導入を考えよう!
PPAの導入促進は政府の方策となっており、補助金支援も多くあります。利用する企業としてはメリットも多くありますので、検討する余地は大いにあると思います。これからも再生可能エネルギーの主力化への取り組みは注目されていくと予測されますので、自社の環境対策として取り入れてみてはいかがでしょうか。