ブルーカーボンとは?種類や企業の取り組みも分かりやすく解説

ブルーカーボンとは、地球上で排出された二酸化炭素のうち、海藻や海洋生物によって吸収され、貯められた炭素のことです。この記事では、ブルーカーボンの説明、その種類と仕組み、現状と課題、保全における企業の取り組み事例まで、分かりやすく解説します。

目次

  1. ブルーカーボンとは?仕組みと特徴・グリーンカーボンとの違い

  2. ブルーカーボン生態系の種類

  3. ブルーカーボンの現状と課題

  4. ブルーカーボンにおける企業の取り組み

  5. まとめ:取り組みが加速する!Jブルークレジット普及に期待

ブルーカーボンとは?仕組みと特徴・グリーンカーボンとの違い

ブルーカーボンとは何か知らない方もいるかもしれません。ここでは、ブルーカーボンとは何かと、仕組みと特徴、グリーンカーボンとの違いについて説明します。

ブルーカーボンとは

ブルーカーボンとは、2009年に国連環境計画(UNEP)によって命名された「藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた炭素」のことです。ブルーカーボンを取り組む海洋生態系には海草藻場・海藻藻場・塩性湿地、干潟・マングローブ林があり、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれます。

出典:国土交通省『ブルーカーボンとは』

ブルーカーボンの仕組み

地球上で排出された二酸化炭素は、一部は陸に、一部は海洋に循環します。二酸化炭素は海中で、生態系に光合成され有機炭素(ブルーカーボン)とりて貯められます。

注目すべきなのは、海洋の植物の方が陸の植物より、排出された大気中の二酸化炭素を吸収する割合が高いことです。海洋の生態系の二酸化炭素吸収率は約30%で、陸の生態系の二酸化炭素吸収率は約12%です。

二酸化炭素を吸収し、貯める海洋生物は、全海洋面積のたった0.2%ほどしかない沿岸域に集中して住んでいます。海洋面積は地球上の70.6%を占めますが、それを考慮しても陸上の生物よりも二酸化炭素吸収量は多いことが伺えます。

出典:日本ブルーカーボン事務局『BLUE CARBON』(p3)

出典:日本マリンエンジニアリング学会誌『ブルーカーボン とリソース』(p6)(2017)

ブルーカーボンの特徴

ブルーカーボンは、最終的に海洋の植物であるブルーカーボン生態系に組み込まれて循環します。それまでの流れは、以下のようになります。

(1)大気中の二酸化炭素が海水中の「溶解CO2」「重炭酸イオン」「炭酸イオン」になります。

(2)海中のブルーカーボン生態系が取り込み、光合成をしてブルーカーボンが生成されます。

ブルーカーボンの利用先は、植物自体の活動のために使用されたり、動物の体内に移って糞となって排出されます。いずれにしても、再度二酸化炭素や炭酸イオンとなり循環します。

しかしながら、循環しないブルーカーボンもあります。ブルーカーボンは長きにわたって海底に貯められることも特徴です。

ブルーカーボン生態系の光合成により炭素となったブルーカーボンは、植物の生命活動やバクテリアの分解によって再度二酸化炭素に戻ります。しかし海底ではバクテリアによる分解が抑えられます。そのため、海底のブルーカーボンは何千年という単位の時間で分解されます。

出典:水産研究・教育機構『CO2吸収源対策の新たな選択肢〜ブルーカーボン 〜』(p11)

グリーンカーボンとの違い

グリーンカーボンとの違いは、吸収される場所です。陸上で、森林などに光合成のが目的で吸収される炭素がグリーンカーボン、海洋で、藻場などに光合成が目的で吸収される炭素がブルーカーボンです。

ブルーカーボン生態系の種類

ブルーカーボン生態系の種類は、主に4種類です。代表的な生態系を紹介します。

海草藻場(アマモ場)

日本の波の静かな内海の、平坦な砂泥底に生息しています。海中で花を咲かせ、種子を飛ばして繁殖します。

アマモ場

出典:環境省『アマモ場』

海藻藻場(ガラモ場)

海で生活する藻類で、胞子によって繁殖します。ガラモ場の他に、コンブ場・カジメ場などがあります。

ガラモ場

出典:環境省『ガラモ場』

塩性湿地・干潟

河口において海水の高濃度の塩分の影響を受ける湿地です。湿地や干潟の植物は二酸化炭素を吸収します。

塩性湿地

マングローブ林

熱帯や亜熱帯の河口付近に真水と海水が混ざり合う、汽水域に生息する樹木のことです。

マングローブ林

3. ブルーカーボンの現状と課題

排出した二酸化炭素が吸収され、貯められるとして注目されているブルーカーボンですが、どのような課題があるのでしょうか。詳しく見てみましょう。

ブルーカーボンの現状

前述した通りブルーカーボン生態系は新しい二酸化炭素吸収源として注目されています。二酸化炭素の吸収率が、ブルーカーボン生態系の方がグリーンカーボン生態系より高いからです。その反面、マングローブ林や海藻藻場など、ブルーカーボン生態系の減少が問題となっています。

出典:日本マリンエンジニアリング学会誌『ブルーカーボン とリソース』(p6)(2017)

ブルーカーボンの課題

ブルーカーボン生態系の減少の中でも顕著なものが、マングローブ林の減少です。過去50年で、世界中のマングローブ林の50%が失われました。現在も毎年2%の割合で失われています。原因は森林伐採や沿岸開発です。

森林が破壊されると、それまでその生態系で貯められていた二酸化炭素が排出されます。マングローブが失われることによる排出量は、世界の森林破壊による総排出量の10%になると言われています。

またブルーカーボン生態系が森林伐採で減少した際の二酸化炭素排出量は、年間1億5千万から10億2千万トンの可能性があると言われます。海草・氾濫原(河川の氾濫によって流れてきた泥が堆積されてできたもので、部分的に湿地となる)・マングローブの排出量を合わせた排出量は、英国(二酸化炭素排出量で世界9位)の年間化石燃料の二酸化炭素排出量と同様の排出量をもたらすとも言われています。

海洋環境の保全が目下の課題となるでしょう。

出典:the BLUE CARBON initiative『ABOUT BLUE CARBON』

ブルーカーボンにおける企業の取り組み

それではブルーカーボン生態系の破壊への取り組みは他にどのようなものがあるのでしょうか。詳しく紹介します。

ブルーカーボンに関する国の施策

2020年に制定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」には、ブルーカーボンについて、「カーボンオフセットの検討を行う」という記載があります。

国土交通省が検討会を開催したり、農林水産省がブルーカーボンの創出に向けて力を入れたりと施策はいくつかありますが、中でも注目されていることが「Jブルークレジット」です。「Jブルークレジット」とは、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が発行するクレジットです。

出典;国土交通省港湾局『海の森 ブルーカーボン 』(p6)(2021/3)

クレジットの仕組みは、申請者(ブルーカーボン生態系の養殖現場の関係者)の二酸化炭素吸収量を企業などが買取り、買い取った企業の二酸化炭素排出量と相殺させます。

これにより、ブルーカーボン生態系の養殖が支援を受けることで活性化し、企業側にも社会的責任(CSR)の一環として価値ある取り組みになります。

出典:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット認証・発行について』

企業としてブルーカーボンについて取り組めること

企業としては、主に2つの方法でブルーカーボンの分野で取り組むことができます。まずはブルーカーボン生態系保全活動をすること、そしてもう1つは、Jブルークレジットを購入して自社の二酸化炭素排出の削減に取り組むことです。

出典:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット』

企業と官庁のブルーカーボンについての取り組み事例

実際に企業の取り組み事例を紹介します。

・アップル

米アップルでは2018年、環境保護団体と共同でコロンビアのマングローブ再生プロジェクトを開始しました。プロジェクト期間を通じて100万トン分の二酸化炭素の隔離に取り組んでいます。

出典:Apple『プレスリリース』(2021/4/15)

・セブンイレブン

セブンイレブンは、2011年から東京湾のアマモ場作りに貢献してきた他にも、2021年、横浜港が発行するJブルークレジットを購入し、藻場作りの活性化に取り組んでいます。

出典:株式会社セブンーイレブン・ジャパン『ニュース』(2021/3/18)

・日本製鉄株式会社

日本製鐵株式会社は、鉄鋼スラグ利用の技術を応用させてブルーカーボンの評価の研究をしています。鉄鋼スラグを利用して藻場などを作り、二酸化炭素の固定量を評価する取り組みです。

このように、評価方法の研究も進んでいます。

日本製鉄『革新的技術開発によるCO2削減』

まとめ:取り組みが加速する!Jブルークレジット普及に期待

ブルーカーボンについては、グリーンカーボン生態系よりブルーカーボン生態系の方が二酸化炭素吸収量が高いと注目される一方、マングローブ林や海藻藻場の破壊によりブルーカーボン生態系の減少による、二酸化炭素の排出も懸念されています。生態系を守るための施策として、Jブルークレジットや環境保全活動が挙げられます。ブルーカーボン生態系保全の活動やJブルークレジットでの二酸化炭素削減に取り組むことでCSRの向上も期待できます。まずは、自社に合った取り組みを考えましょう。

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