自己託送の電力には再エネ賦課金がかからない?わかりやすく解説!

近年、再エネ賦課金の負担が徐々に増し、2017年には電力料金の10~14%を占めるまでになりました。

再エネ賦課金がかからない電力調達方法として自己託送によるオフサイトPPAがあります。今回は再エネ賦課金や自己託送のしくみ、メリット等についてまとめます。

目次

  1. 再エネ賦課金とは何か

  2. 再エネ由来の電力を直接調達する方法

  3. 再エネ賦課金を賦課されない自己託送とは何か

  4. 電力を自己託送するメリット

  5. まとめ:自己託送により再エネの消費拡大が進む可能性がある

1. 再エネ賦課金とは何か

(1)再エネ賦課金の定義

再エネ賦課金の定義

出典:資源エネルギー庁「制度の概要|固定価格買取制度|なっとく!再生可能エネルギー」

再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーで発電した電気を国が買い取る「固定価格買取制度」を維持するために課せられる賦課金のことです。再エネ賦課金は、各家庭が使う電力料金に上乗せし、徴収しています。

集められた賦課金は、「固定価格買取制度」の財源となります。「固定価格買取制度」の対象となるのは、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つです。政府はこれらの買取を通じて再生可能エネルギーの普及率を高めようとしています。

再生可能エネルギーの割合が高まるほど、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料への依存度を減らすことができ、脱炭素社会の実現に近づきます。

(2)再エネ賦課金で増加した国民負担

再エネの普及を目的として創設された再エネ賦課金は、電気利用者にとって大きな負担となっています。

旧一般電気事業者の電気料金平均単価と賦課金の推移

出典:資源エネルギー庁『FIT制度の抜本見直しと 再生可能エネルギー政策の再構築』(P13)(2019/4/22)

2012年には産業用・業務用、家庭用とも賦課金の割合は1%でした。しかし、賦課金の割合は増加を続け、2017年には産業用・業務用で14%、家庭用で10%に達してます。こうなると、企業や家庭にとっても無視できない負担であるといえます。

2. 再エネ由来の電力を直接調達する方法

再生可能エネルギー由来の電力を直接調達するには2つの方法があります。

一つは電力を使用する企業(需要家)が自前で太陽光発電設備などを整え自家用として発電する方法です。もう一つは需要家の屋根や敷地に発電事業者が発電設備を設置し、その電力を需要家が購入するPPAです。

ここでは、PPAについてより詳しく説明します。

ppaについて

出典:資源エネルギー庁「需要家による再エネ活用推進の ための環境整備」(2021/3/22)(p5)

(1)オンサイトPPA

自家発自家消費型のタイプをオンサイトPPAといいます。電力を必要としている需要家が、PPA事業者に太陽光発電を設置する場所を貸し、PPA事業者が発電設備を設置します。

PPA事業者は、太陽光発電施設の設置のほか保守管理を行い、需要家が消費した分の電力料金を請求します。

オンサイトPPAのメリットは3つあります。

1.設備が不要

需要家が自ら太陽光発電設備を設置する必要がないため初期費用を抑えられ、太陽光発電設備を購入することなく脱炭素の仕組みを導入できます。

2.費用の削減

自家消費した再エネ由来の電力には再エネ賦課金が課されないため、コストダウンにつながります。

3.施設の維持管理が不要

需要家に変わり、PPA事業者が設備のメンテナンスをするために、施設の維持をする必要がなく、維持管理の手間がかかりません。

(2)オフサイトPPA

オフサイトPPAとは、再エネ由来の電力を必要とする需要家の敷地から離れた場所にある発電設備から送配電線を使って電力を需要家に送る仕組みのことです。

現在認められているオフサイトPPAは、需要家が保有する施設か、需要家と密接な関係を持つ施設で発電された電力に限られています。

しかし、経済産業省はカーボンニュートラルの達成や増大する再エネ由来の電力への需要を踏まえ、オフサイトPPAを容認する方向で検討しています。

出典:資源エネルギー庁「需要家による再エネ活用推進の ための環境整備」(2021/3/22)(p8)

オフサイトPPAの条件が緩和されるほど、多くの事業者が参入できるようになり、再エネの使用率増加が増加する可能性が高まります。

3. 再エネ賦課金を賦課されない自己託送とは

増加する再エネ賦課金に対処する方法の一つに、自己託送を利用したオフサイトPPAがあります。そもそも、自己託送とはどのような意味のことばでしょうか。

自己託送イメージ図

出典:資源エネルギー庁「省エネ法定期報告における 自己託送の扱いについて」(2020/2/4)(p5)

資源エネルギー庁は自己託送について「自家発自家消費という供給行為を行い易くする制度措置」と定義しています。これは、オフサイトPPAのうち、社内融通にあたります。

加えて、経済産業省は以下の条件を満たした場合、自己託送と認めるとしました。

  • FIT又はFIP制度の適用を受けない電源による電気の取引であること

  • 需要家の要請により、当該需要家の需要に応ずるための専用電源として新設する脱炭素電源による電気の取引であること

  • 組合の定款等により電気料金の決定方法が明らかになっているなど、需要家の利益を阻害するおそれがないことがないと認められる組合型の電気の取引であること

出典:資源エネルギー庁「需要家による再エネ活用推進の ための環境整備」(2021/3/22)(p9)

自社の太陽光発電などで調達した再エネ由来電力やオンサイトPPAやオフサイトPPAで調達した電力は、再エネを利用していると考えられるので、再エネ賦課金は賦課されません。

ただし、自己託送では電力会社など送電線を保有する事業者に「自己託送料金」を支払う必要があります。

4. 電力を自己託送するメリット

自己託送で電力を調達すると再エネ賦課金を賦課されないという大きなメリットがありますが、他にもメリットが。それは、オンサイトPPAが利用できない事業者でもCO2を効果的に削減できることと、将来的なコスト削減に繋がる可能性があることの2点です。

(1)オンサイトPPAが難しい事業者でもCO2排出量を削減できる

世界的なCO2削減の流れを受け、日本もCO2排出量と吸収量を等しくすることで、実質的にCO2排出量をゼロとする「カーボンニュートラル」の取り組みを加速させています。今後、CO2排出量を削減する動きはさらに強まるでしょう。

出典:環境省「カーボンニュートラルとは - 脱炭素ポータル」

CO2削減に効果的な方法の一つは、自社で太陽光発電などを行い再エネ由来の電力を使うことですが、事業所によっては発電設備を設置する場所が少なく、オンサイトPPAが難しいこともあるでしょう。

そういった事業所は、自己託送された電力を使うことで、再エネ比率を上げ、事業所全体のCO2排出量を削減することができます。

(2)将来的なコストダウンに繋がる可能性がある

太陽光発電などで得られた電力を自己託送して使用する場合、再生可能エネルギーを自家発自家消費したとみなされるため、再エネ賦課金が課されません。自己託送料金と再エネ賦課金を比較した時、自己託送料金のほうが下回ればコストダウンできたことになります。

また、何らかの理由で電気料金が高騰した場合、自家発電した電力のほうが易くなる可能性があります。そうなれば、電力費そのものをコストダウンできます。

5. まとめ:自己託送により再エネの消費拡大が進む可能性がある

自己託送は、自社敷地内で太陽光発電設備を設置できない事業所にとって、再エネ使用比率をあげる一つの方法となります。設備を自前で用意することが困難な業者にとって、PPA業者が発電設備を設置し、維持・管理してくれることは大きなメリットとなるでしょう。

さらに、再エネ賦課金の負担増や電力価格の高騰に対する保険としても自己託送によるオフサイトPPAは有効です。こうして、オフサイトPPAを利用できる環境が整えば、自己託送による再エネの消費拡大が進む可能性は大いにあるといえるでしょう。

CO2排出削減の動きは大企業だけではなく、中小企業にも及びます。その時に、CO2排出削減と遠隔地にある自社設備の有効活用を両立できるオフサイトPPAは、中小企業のCO2削減対策として大きな意味を持つのではないでしょうか。

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