日本が持つ海洋エネルギーの可能性の高さ!潮力発電とは

潮力発電とは、海の潮の満ち引きのエネルギーを発電に変えるシステムで再生可能エネルギー(以下再エネ)です。温室効果ガスの排出による地球温暖化を抑制するために、近年、自然エネルギーである再エネがますます注目されるようになりました。しかし一口に再エネといっても、種類は様々です。四方を海に囲まれた日本は、再生海洋エネルギーへの期待が高まっており、潮力発電はそのうちの一つです。

潮力発電の具体的な仕組みはどのようなものなのか、国内での取り組みや海外での現状、これからの課題などを詳しく解説していきます。

目次

  1. 潮の満ち引きで発電?潮力発電とは何か

  2. 潮力発電の持つ可能性と問題とは何か

  3. 海外での潮力発電の状況とは

  4. 潮力発電の日本における実証実験とは

  5. まとめ:潮力発電で日本の海洋エネルギーの可能性を知る

1. 潮の満ち引きで発電?潮力発電とは何か

潮力発電の仕組みを解説

潮力発電とは、別名「潮汐発電」とも呼ばれ、その言葉通り海の潮の満ち引きを利用して発電するシステムです。月の引力により、地球の海面は12~24時間周期で上下運動をしますが、それによって生じる運動エネルギーを電力に変換するのです。潮の満ち引きの差がある防波堤を湾などで仕切って、それぞれの高低差を利用し、流れた海水でタービンを回して発電する方法です。

ダムで行う水力発電と原理は同じといえばわかりやすいかもしれません。

潮流エネルギー変換器とその動作

出典:環境省「IPCC(気候変動に関する政府間パネル) 再生可能エネルギー源と気候変動緩和に関する特別報告書 第6章 海洋エネルギー(p.14)」(2011.5.9)より加工して作成

潮力発電の導入背景とは

潮力発電が注目されるようになった背景には、地球温暖化対策の政策として、ヨーロッパなどで再エネの利用を積極的に推し進めているということがあります。潮力発電を含む海洋エネルギーもその一つで、1966年フランスで初めて導入がされました。現在は米国を筆頭に世界で潮力発電をはじめとした海洋エネルギーの開発が活発化しています

さまざまな海洋エネルギー

海洋エネルギーは、化石燃料に代わり海に蓄えられているさまざまなエネルギーを、環境に負荷をかけずに有効活用できると期待されている再エネです。その発電方法をいくつかご紹介しましょう。

  • 洋上風力発電 

洋上に設置した風車を、風で回転させて発電する方法。風のエネルギーを発電設備で電気エネルギーに変換する。

  • 波力発電 

波の上下運動の力を利用して、空気を圧縮した圧でタービンを回して発電する方法。

  • 海洋温度差発電 

海洋の表層と深層では相当の温度差があるため、その温度差を利用してエネルギーに変換する方法。

各種海洋エネルギー資源の分布

出典:環境省「IPCC第3作業部会再生可能エネルギー源と気候変動緩和に関する特別報告書(SRREN)概要(p.17)」(2011.5.9)

2. 潮力発電の持つ可能性と問題とは何か

潮力発電のメリット

潮力発電は、発電設備のタービンを水深5mに設置して発電するので、再エネの中でも太陽光や風力と比べて天候に左右されません。海洋で発生する自然の力を活用するので運用コストが低く、燃料なども必要としないので、環境に対しても不可が少なく済みます。また潮の満ち引きは定期的に来るため、発電量予測やコントロールがしやすく、電気の安定供給が期待できます

潮力発電のデメリット

しかし、当然ながら海水には塩分が含まれているため、発電に必要なタービンなどをはじめとした機材の早期劣化の問題があり、その設備に対しての対策やメンテナンスにコストが発生します。また、潮力発電が可能な潮力を得られるエリアは限定されているという問題や、あまり規模を大きくすると海洋の生態系に影響が出る可能性もあり、慎重に考えなくてはなりません。

再生可能エネルギーとしての潮力発電の可能性とは?

潮力発電は、なによりも二酸化炭素を発生しないという再エネとしてのメリットが大きく、これは世界の脱炭素の流れをさらに促進させます。また、日本は土地の広さも限定されており、太陽光や風力などの設備設置が難しいという問題がありますが、島国として四方を海に囲まれているという利点があります。

その利点を生かした潮力発電をはじめとした海洋エネルギーは、活用の幅広さと環境に負荷をかけないという点で、再エネとしての注目も高いのです。

3. 海外での潮力発電の状況とは

イギリスの潮力発電状況

欧州では潮力発電の開発を積極的に行っており、特にイギリスの開発にはめざましいものがあります。その理由としては、グレートブリテン島スコットランド北部沿岸の潮力の海洋エネルギーポテンシャルが、非常に強力であるからと言われています。イギリスはもともと北海油田を通して、海洋の資源開発のノウハウが高い国です。

そのため大規模な潮力発電開発が、政府の後押しによって進められています。今後、イギリスにおいては、潮力発電が再エネの中心となる可能性が大きいのです。

韓国の潮力発電状況

韓国では電力事情の悪化を改善するために、2011年度より潮力発電の「始華湖潮汐発電所」が稼働しました。この韓国の潮力発電所は、現在のところ世界で最大規模です。韓国では、この他にも世界最大級となる潮力発電所を複数設置予定で、今後も開発が活発化することが予想されます。

世界の中での日本の潮力発電状況

それでは世界の国々と比較して、日本の潮力発電開発の状況はどうなのでしょうか。日本では1980年代に日本大学のグループによって、世界初の潮力発電を瀬戸内海や来島海峡で成功させたのですが、残念ながら現在、潮力発電が実用化されるまでには至っていません。コスト面での問題や、ビジネスとしては投資しても利益を見込めるかわからない等の理由から、潮力発電開発は世界の中で大きく遅れを取っている状況です。

4. 潮力発電の日本における実証実験とは

日本の潮力発電への取り組み

そのように世界の潮力発電開発から遅れを取っていた日本ですが、近年になって、大規模な潮力発電開発が開始されています。潮流発電と海流発電に関する8つの事業が、海洋エネルギー発電システム実証研究において実施されるなど、さまざまな取り組みが始まっているのです。

日本初の大型潮力発電実証事業

2014年より実施された「潮流発電技術実用化推進事業」は、日本の海域での導入が期待できる商用規模の潮流発電システムの開発及び実証を行うもので、国が海洋再生可能エネルギーの実証区域として選定した長崎県五島市久賀島沖での取り組みです。目的は再エネの導入の拡大と二酸化炭素削減であり、さらに潮力発電の普及と理解拡大を図るものです。

出典:「潮流発電について」

海に囲まれた日本の海洋エネルギーのポテンシャル

海に囲まれた島国の日本では、海峡、瀬戸を中心とした沿岸地に潮力発電の適地が存在しており、海洋再生可能エネルギーの大きなポテンシャルを有しています。再エネの普及促進においても、海洋エネルギーにおける期待は高く、発電ビジネスにおいても今後、間違いなく注目される発電方法であることは間違いありません。

5. まとめ:潮力発電で日本の海洋エネルギーの可能性を知る

海洋再生可能エネルギーの中でも注目されている、潮力発電について様々な角度から解説しました。潮の満ち引きを利用して発電するという方法は、海との接点の多い日本では実に理にかなった効率の良い発電方法と言えるでしょう。コスト面においての課題があるとは言え、開発が進めば日本の再エネにおける大きな力となることは確実です。

このようにクリーンエネルギーとして期待の高い電力導入は、企業の環境価値を大いに高めてくれます。開発が活発化し、ビジネスとしての価値も高まる可能性が高い海洋再生可能エネルギーについて、今後も企業としてしっかりと注目していきましょう!

 

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