「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」で求められること
- 2022年06月15日
- SDGs・ESG
「プラスチックに係る瀬減循環の促進等に関する法律」は略して「プラスチック資源循環法」とも呼ばれます。2021年3月に法案が可決され、2022年4月から施行される予定です。
この新たに定められるプラスチックに関しての法律は、どんなものなのでしょうか?この法律によって、何が変わるのか、その対象と内容について、簡単に確認しておきましょう。
目次
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プラスチック資源循環法とは
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特定プラスチック
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プラスチック資源循環法が求める取り組み
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まとめ:中小企業も循環経済への移行に対応を!
1. プラスチック資源循環法とは
プラスチック資源循環法とはプラスチック製品の設計から廃棄物の処理まで、プラスチックに関わるあらゆる場面での資源循環を強化することを目的としています。プラスチック資源の分別・回収・再資源化により、廃棄物の最終処分量を減少させ、プラスチックの循環に伴う新たな産業の成長や地域の活性化も期待されています。
プラスチック資源循環法が施行される背景
出典:環境省『令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 プラスチック資源循環体制の構築に向けて』
近年、地球規模での資源・廃棄物の制約や海洋プラスチックごみの問題への対応が求められています。プラスチック資源循環法は、世界全体のプラスチック資源の循環システムを早期に構築するために、日本の取り組みを明確化するための指針として施行されます。
この法律により、再生不可能な資源への依存度を減らし、循環・再生可能な資源の利用を促進します。また、天然資源の投入量を減らし、それに伴う資金の国外流出を抑制することも目的の1つです。
プラスチック資源循環法の基本方針
プラスチック資源循環法では、プラスチックの資源循環を総合的・合理的・計画的に行うため、次のような基本方針を掲げています。
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プラスチック廃棄物の排出抑制、再資源化に資する環境配慮設計
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※ワンウェイプラスチックの使用の合理化
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プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化
※ワンウェイプラスチック:一度使用されたら、ごみとして廃棄されることが想定されるプラスチック製品
出典:経済産業省『「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定されました』(2021年3月)
2. 特定プラスチック
プラスチック資源循環法では、「特定プラスチック製品」と「特定プラスチック使用製品提供事業者」がそれぞれ指定されています。
出典:資源エネルギー庁『「プラスチックに係る資源循環の促進等に 関する法律」の政省令・告示について』p.16(2021年3月)
特定プラスチック使用製品とは
特定プラスチック使用製品とは、商品の販売などの際に消費者に無償で提供されるプラスチック製品のうち提供量が多く、使用の合理化による、プラスチック使用製品廃棄物の排出抑制や、過剰な使用の削減、代替素材への転換が見込まれるといった観点から、プラスチック資源循環法の中で指定されたプラスチック製品です。主に以下のプラスチック製品が指定されています。
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フォーク・スプーン・ナイフ・マドラー・ストロー
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ヘアブラシ・櫛・剃刀・シャワーキャップ・歯ブラシ
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ハンガー・衣類用のカバー
特定プラスチック使用製品提供事業者の業種
特定プラスチック製品の指定と同時に、特定プラスチック製品の提供量が多く、使用の合理化が特に必要な業種として、以下が指定されています。
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各種商品小売業・各種食料品小売業・その他の飲食料小売業
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無店舗小売業
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宿泊業
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飲食店
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持ち帰り・宅配飲食サービス業
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洗濯業
出典:資源エネルギー庁『「プラスチックに係る資源循環の促進等に 関する法律」の政省令・告示について』p.17(2021年3月)
3. プラスチック資源循環法が求める取り組み
市町村
プラスチック製品の分別・収集・再商品化を促進するために、市町村はプラスチック製品の廃棄物について、分別の基準の策定・適正な分別回収・適正な分別排出を求められています。
また、地方自治体によってはプラスチックの削減にも取り組んでいます。例えば富山県ではレジ袋などのワンウェイプラスチック削減のため、携帯型のマイバックの配布や、コンビニエンスストアと連携してマイバック利用を呼びかける「いつでも、どこでもマイバック運動」が展開されています。
出典:環境省『令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 プラスチック資源循環体制の構築に向けて』
事業者
プラスチック資源循環法では、事業者に主に次の3つを義務付けています。
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事業者が製造・販売・提供するプラスチック製品が使用済みになったものを自主回収・再資源化する計画を作成する。(その計画が認定を受けると、認定事業者は廃棄物処理法の業務許可が不要になる)
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プラスチック使用製品産業廃棄物などを多く排出する事業者は、排出の抑制や再資源化などの取り組むべき判断の基準を策定する。(取り組みが不十分である場合、政府機関からの指導・助言または取り組み勧告・公表・命令を受ける)
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プラスチック使用製品廃棄物の排出事業者などは、再資源化事業計画を作成する。(その計画が認定を受けた場合、認定事業者は廃棄物処理法の業務許可が不要になる)
出典:資源エネルギー庁『「プラスチックに係る資源循環の促進等に 関する法律」の政省令・告示について』p.25~p.30(2021年3月)
出典:環境省『令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 プラスチック資源循環体制の構築に向けて』
プラスチック使用製品を多く提供する事業者では、既にプラスチックに代替して、別の素材の製品を提供したり、プラスチック製梱包材の簡易化など、プラスチック製品の利用削減への取り組みが進んでいます。木製・紙製のストローや、プラスチックの袋に代えて紙製の袋で商品の提供が行われるなど、身の回りでも多くの例を目にするようになりました。
出典:環境省『令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 プラスチック資源循環体制の構築に向けて』
消費者
プラスチック資源循環法では、消費者は主に次のことが求められています。
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プラスチック使用量の極力少ない製品を選択する
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プラスチック製品の過剰な使用を抑制する
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合理的な使用により、プラスチック使用製品の廃棄物を抑制すること
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プラスチック使用製品を廃棄する際は、市町村の定めた基準に従い、適正な分別をする
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使用済みプラスチック製品を排出する際は、事業者の自主回収ルートを活用する
出典:環境省『「プラスチックに係る資源循環の促進等に 関する法律」の政省令・告示について』p.5,p.6,p.7(2021年11月)
日々の生活で私たちは必ず、消費者として商品の選択や使用済みの物の排出、廃棄する場面があります。消費者が自主的にプラスチックの使用量の少ない製品を選択したり、プラスチック使用製品を使わない手段を選択したりすることは非常に重要です。
また、物を大切に長く使うことも廃棄物の排出抑制につながります。廃棄する際も、再資源化を視野に入れ、洗浄・分別・回収に協力しましょう。
4. まとめ:中小企業も循環経済への移行に対応を!
「プラスチックに係る資源循環の促進等に 関する法律」は2022年4月から施行される予定です。プラスチックをはじめとする資源の節約・分別・回収・再資源化への取り組みは、企業にとって義務となります。
中小企業であっても、何らかの工夫によりプラスチックの使用を削減したり、再資源化に寄与する方法を講じなければ、政府の指導・命令を受けることになりかねません。まずは同業他社の取り組みや地方自治体の相談窓口などから情報を集め、自社に合った無理のないことから取り組みを始めましょう。
社会は急速に脱炭素化・循環社会への移行が進んでいます。もはやこれらを考慮し、広い情報収集・長期的な視点での成長戦略・リスク管理・脱炭素への取り組みは経営において必須となりました。
自社の現状とリスクを正確に把握し、適正な経営戦略で持続可能な社会への移行の流れに乗り、企業としての持続可能な成長へとつなげましょう。