ネットゼロ社会の実現に向け企業が今できること

ネットゼロ社会が意味する社会とは?世界各国での脱炭素の取り組みが進む中、ネットゼロという用語を耳にするようになりました。カーボンニュートラルや実質ゼロなど様々な用語が飛び交い、用語の意味が分からないとの声も多くあがっています。

この記事ではネットゼロという用語に関心のある法人の皆さまが知っておくべきネットゼロに関する基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. ネットゼロとは?

  2. 日本や諸外国におけるネットゼロ社会への具体的な政策

  3. ネットゼロ社会を目指し企業にできること

  4. ネットゼロ社会を目指す企業の取り組み事例

  5. まとめ:ネットゼロ社会への理解を深め、脱炭素に向けた取り組みを検討しよう!

1. ネットゼロとは?

ネットゼロという用語は、どのような意味で使用されているのでしょうか。ここではネットゼロの意味と、ネットゼロが注目を集めている背景についてご紹介します。

そもそもネットゼロとは?

ネットゼロは、カーボンニュートラルや実質ゼロと同じ意味で使われています。温室効果ガスの排出量をできるだけ削減し、どうしても削減できない部分は除去または吸収により差し引いてゼロにするというのが基本的な考え方です。

Alt属性(温室効果ガスのネットゼロ排出のイメージ)

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る 10の質問」』

ネットゼロが注目される背景

ネットゼロが注目されている背景にあるのは、世界各地に深刻な影響を与えている気候変動問題です。

  • 暑熱による死亡リスク、熱中症

  • 豪雨の頻発、台風の強大化

  • 北極海の海氷の減少

  • 森林火災

  • ハリケーン など

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書は、人間の影響が温暖化を引き起こしていることは疑う余地がなく、人為的な温暖化を特定のレベルに制限するためには、少なくともCO2正味ゼロ排出を達成する必要があると報告しています。

▷IPCC第6次評価報告書についての記事はこちら

出典:環境省『おしえて!地球温暖化』(2019/3/29)(p.2.3)

出典:経済産業省『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)(p.1.2)』

2. 日本や諸外国におけるネットゼロ社会への具体的な政策

「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という内容のパリ協定が2015年に合意に至ったことをきっかけに、日本を含め世界全体でのネットゼロを目指す取り組みが加速しています。ここではネットゼロ社会を実現させるための日本や諸外国における政策についてご紹介します。

日本の政策

日本は2020年10月に2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しています。ネットゼロを達成するための政策を取りまとめたものが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。グリーン成長戦略において、成長が期待される14の重要分野における目標や企業の前向きな挑戦を後押しするための支援策が示されています。

(成長が期待される重要分野)

  • 洋上風力・太陽光・地熱

  • 水素・燃料アンモニア

  • 次世代熱エネルギー

  • 原子力

  • 自動車・蓄電池

  • 半導体・情報通信

  • 船舶

  • 物流・人流・土木インフラ

  • 食料・農林水産業

  • 航空機

  • カーボンリサイクル・マテリアル

  • 住宅・建築物・次世代電力マネジメント

  • 資源循環関連

  • ライフスタイル関連

出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(2021/5/20)

諸外国における政策

2020年12月時点において、123カ国と1地域が2050年までのカーボンニュートラルに賛同しています。それぞれ目標設定と政策を打ち出し脱炭素へ取り組んでいます。たとえばアメリカでは、バイデン大統領が2035年までの電力脱炭素の達成、2050年より前のネット排出ゼロ、グリーンエネルギーなどのインフラ投資に4年間で2兆ドルの投資を行うことを公約に掲げていました。

出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルを 巡る国内外の動き』(2020年12月)(p.6.10)

3. ネットゼロ社会を目指し企業にできること

ネットゼロ社会を目指す企業ができることとは?ここでは、企業ができる脱炭素の3つの取り組みについてご紹介します。

再生可能エネルギーの活用

再生可能エネルギーで発電した電力を事業活動で使用することは、ネットゼロ社会を目指す取り組みになります。再生可能エネルギーは燃焼時にCO2を排出しないためです。再生可能エネルギーを調達する方法としては、企業の敷地内などに太陽光発電設置を設置する、発電事業者から購入するなどがあります。

Alt属性(各種発電技術のライフサイクルCO2排出量)

出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)

イノベーションの開発

日本はネットゼロを実現するために、アンモニアや水素など次世代エネルギーのイノベーション開発を推進しています。令和2年度第3次補正予算において2兆円を組み、企業のイノベーションを後押ししています。

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(後編)~カーボンフリーのアンモニア火力発電』(2021/1/29)

出典:経済産業省『グリーンイノベーション基金事業の基本方針を策定しました』(2021/3/12)

地球温暖化対策の枠組みへの賛同

地球温暖化対策を推進させるための様々な枠組みがあります。中小企業向けの枠組みに賛同することで、企業のネットゼロに向けた取り組みを加速させることができます。

中小企業向けの枠組みの1つに「再エネ100宣言RE Action」(以下、RE Action)」があります。RE Actionは、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを宣言する枠組みです。RE Actionは中小企業や自治体などを対象としており、賛同した団体には以下のことが求められます。

  • 遅くとも2050年までに使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する目標を設定し、対外的に公表すること。

  • 再生可能エネルギーの普及に関する政策提言などへ賛同すること。

  • 消費電力量と再生可能エネルギー率の進捗を毎年報告すること。

出典: 再エネ100宣言 RE Action『再エネ100宣言 RE Actionとは』

4. ネットゼロ社会を目指す企業の取り組み事例

日本では多くの企業がネットゼロ社会を目指し様々な取り組みを行っています。ここではネットゼロ社会を目指す企業の取り組み事例をご紹介します。

鈴廣かまぼこ株式会社

鈴廣かまぼこ株式会社は、小田原でエネルギーの地産地消による再生可能エネルギーへの取り組みを行っています。

  • 太陽光発電システムの導入

  • 太陽熱給湯システムの導入

  • 地中熱換気システムの導入

  • コージェネレーションシステムの導入

  • ゼロ・エネルギー・ビルの建設

出典:鈴廣かまぼこ『再生可能エネルギーへの取り組み 鈴廣が考えるなつかしい未来づくり』

株式会社 二川工業製作所

二川工業製作所は2013年から太陽光発電事業に参入しています。再エネ100宣言RE Actionに賛同し、太陽光パネルをため池に浮かべる水上太陽光発電事業にも取り組んでいます。

出典:FUTAGAWA『再エネ・環境事業』

総天然素材革工房 革榮

土に還る革製品の企画や製造、販売を行っています。敷地内に太陽光発電設備を設置し、自家消費し、余った分は売電しています。

出典:再エネ100宣言 RE Action『再エネ100へ【事例紹介】』

5. まとめ:ネットゼロ社会への理解を深め、脱炭素に向けた取り組みを検討しよう!

ネットゼロ社会とは温室効果ガスが実質上ゼロの社会、つまりカーボンニュートラルが実現した社会を意味しています。パリ協定が採択されてから世界各国で脱炭素への取り組みが加速しています。日本では国や自治体だけでなく、企業も積極的に脱炭素に向けた取り組みを行っています。ネットゼロ社会への理解を深めることで、脱炭素に向けた取り組みの検討につなげていただければと思います。

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