再生可能エネルギー普及拡大の鍵を握るVPP/DRとは?
- 2022年06月15日
- 発電・エネルギー
VPP(バーチャルパワープラント)DR(デマンドレスポンス)とは?再生可能エネルギーを上手く活用できるシステムとしてVPPやDRへの注目が集まっています。VPPにはこの他にも大規模発電所の課題をカバーできるとし、日本でも導入が増えることが予想されています。
この記事では法人の皆さまが知っておくべきVPP/DRに関する基本的な知識についてご紹介します。
目次
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再エネ普及拡大で注目!VPP/DRとは?
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大規模発電所が抱える課題とは
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そこから見えるVPP/DRのメリット
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VPP/DRとは?導入事例をご紹介
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まとめ:VPP/DRへの理解を深め、今後の日本の動向を予測しよう。
1. 再エネ普及拡大で注目!VPP/DRとは?
2050年までのカーボンニュートラルの実現を目標に掲げている日本は、再生可能エネルギーを最大限導入する方針を固めています。
再生可能エネルギーを有効活用できることから再生可能エネルギー普及拡大につながるとし、VPPと主な手法であるDRに注目が集まっています。ここでは、VPPやDRとはどのようなシステムなのか基本的な概念をご紹介します。
VPPとは?
VPP(Virtual Power Plant)とは太陽光発電などの再生可能エネルギーや蓄電池、電気自動車、ネガワットなど工場や家庭が有する分散型エネルギーリソースを高度なエネルギーマネジメント技術を用いて遠隔・統合制御することで、電力の需給バランスを調整するものです。小規模の分散型エネルギーリソースをまとめ、1つの発電所のように機能することから仮想発電所と呼ばれています。
具体的な仕組みとしては、リソースアグリゲーターと呼ばれる業者が工場や家庭などから集めた電力を、アグリゲーションコーディネーターが事業者や需要家などにサービスとして売電します。
DRとは?
DR(Demand Response)とはVPPの主要となる手法で、需要家側のエネルギーリソースをコントロールし、需要を増減させることができます。需要を増やすことを上げDR、減らすことを下げDRと呼ばれています。
再生可能エネルギーが過剰に出力されている時は上げDRを発動させ、その時間帯に蓄電池や電気自動車などの充電を促します。下げDRを発動し電力の需要を抑制させている時間帯は、需要家に呼びかけるなどして空調や照明などの負荷設備を調整・停止させたり、生産設備を調整・停止させて使用電力を抑制します。
2. 大規模発電所が抱える課題とは
日本におけるVPPはその性質上小規模の発電所であると言えますが、VPPが注目される背景にあるのが大規模発電所が抱える様々な課題にあります。ここでは、VPPが注目される背景にある大規模発電所が抱える課題についてご紹介します。
災害時に大規模停電など電力トラブルが発生するリスクがある。
日本では再生可能エネルギーが占める割合が2014年度以降毎年1ポイント程度ずつ増加し、2020年度に20%以上に達しています。2050年までのカーボンニュートラルを実現させるために政府は再生可能エネルギー普及を推進していますが、いぜんとして火力発電に依存しています。2020年度の電源構成は以下の通りです。
石炭:26.7%
LNG:35.9%
石油:2.3%
その他火力:10.2%
原子力:3.7%
太陽光:8.9%
水力:7.8%
風力:0.9%
バイオマス:3.4%
地熱:0.3 %
災害が発生した時に大規模の火力発電所では電力の需給バランスを調整するのが難しく、大規模停電が発生するリスクがあります。
再生可能エネルギーを有効活用できていない。
大規模発電所には、工場や家庭などから再生可能エネルギーなどの分散型エネルギーリソースを集める機能が本来備わっていません。そのため再生可能エネルギーを回収できずに活用できていないのが現状です。
出典:isep『【速報】国内の2020年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況』(2021/7/27)
3. そこから見えるVPP/DRのメリット
VPP/DRを活用することで、上記でご紹介した大規模発電所が抱える課題を解決できます。ここでは日本の大規模発電所が抱える課題から見えるVPP/DRのメリットについてご紹介します。
災害時の電力/再生可能エネルギーの有効活用
VPPにおいては、再生可能エネルギーや蓄電池の活用による電力の貯蔵も重要な電力リソースになります。蓄電池を企業や家庭など様々な場所に設置し、アグリゲーター企業が遠隔運用することで再生可能エネルギーを災害時などにも有効に活用することができます。
経済的な電力システムの構築
この他に経済的な電力システムを構築できることもVPP/DRのメリットです。VPPの主要な手法であるDRを活用すると、電力需要をコントロールできます。
DRを発動しピーク時間帯の電力需要を抑制させたり、別の時間帯に移すことで、電力需要の負荷を平準化させることができます。電力需要を均一に近づけることは、発電所の維持費や設備投資を抑えることにつながります。
4. VPP/DRとは?導入事例をご紹介
経済産業省が主体となりVPPの普及を目的とした補助金制度を実施していることも影響し、日本でもVPP事業の取り組みの輪が広がっています。ここではVPPの導入事例をご紹介します。
三菱自動車工業株式会社の電気自動車を活用したVPPの構築事業
三菱自動車工業は、令和2年度の経済産業省の補助金制度を活用し、EV/PHEVをリソースとしたVPPの実証事業を開始しました。再生可能エネルギーの導入と電力系統安定化の両立を目的とし、2021年度以降の事業化を目指しています。
出典:MITSUBISHI MOTORS『電気自動車をバーチャルパワープラントのリソースとして活用するV2Gビジネス実証事業の試験運転開始について』(2020/8/6)
竹中工務店の水素エネルギーを活用したVPPの構築事業
竹中工務店は、I.SEMと名付けた独自のエネルギーマネジメントシステムを用いるVPPを開発し、実証を行っています。これまでの蓄電池や発電機、電気自動車などに水素エネルギーを新たなリソースとして加えています。
出典:TAKENAKA『水素エネルギーを活用する新しいVPP制御システムを開発・実証~エネルギーマネジメントシステム「I.SEM®」で需給調整市場に対応~』(2020/10/28)
横浜市のVPP構築事業
横浜市は2016年から、地域防災拠点に指定されている公共施設に蓄電池を設置しVPP構築事業を開始しています。横浜型VPPとの名称をつけ、平常時はVPPとしてシステムを運用し、災害時などは防災用電力として電力を活用しています。
出典:横浜市『バーチャルパワープラント(VPP:仮想発電所)構築事業』(2021/4/20)
5. まとめ:VPP/DRについての理解を深め、今後の日本の動向を予測しよう。
2050年までのカーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーや水素、蓄電池、電気自動車など様々なリソースの活用が今後さらに進むことが予想されます。小規模の分散型エネルギーリソースをまとめ、電力需要をコントロールできるVPP/DRに注目が集まっています。
VPPはまだ一般的なものではありませんが、今後より身近なものになる可能性があります。VPP/DRについての理解を深め、今後の日本の動向について予測してみるのはいかがでしょうか。