CO2を回収・貯留・利用で削減に大きく期待されるCCUSとは?

自然の中の風力発電

2050年カーボンニュートラルを目指す日本を含む世界にとって、大幅なCO2s削減が期待できるCCUSは今後不可欠な技術となります。いま、世界的にCCUSの技術開発と実用化が迫られています。

世界ではすでに稼働している設備もあり、日本でもさまざまな実証が進んでいます。CO2削減の手段の中でも非常に注目され、期待されているCCUSについて、基礎的な知識を確認しておきましょう。

目次

  1. CCS・CCU・CCUSとは

  2. CCUSのメリット

  3. CCSの取り組み事例

  4. CCUの取り組み事例

  5. CCUSの2030年実用化を目指す動き

  6. まとめ:CCUSの今後の伸びに期待

1. CCS・CCU・CCUSとは

ccusの概念図 イラスト

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み 』p.1(2020年2月)

CCUSとは火力発電所や工場などから排気ガスに含まれるCO2を分離・回収し、資源として作物の生産や化学製品の製造に有効利用したり、地下に貯留する技術です。大気中のCO2を増加させないためには、再エネなどによるCO2削減の努力のほかに、発生したCO2を回収して大気中に放出しない対策も必要です。

環境分野の情報では、CCUSだけでなくCCS・CCUという略語もよく目にしますが、これらは以下の単語の頭文字を組み合わせたものです。

CO2…二酸化炭素(carbon dioxide)

Capture…回収

Utilization…有効利用

Storage…貯留

CCSなら「二酸化炭素の回収と貯留」、CCUなら「二酸化炭素の回収と有効利用」という意味です。

CCUSに必要な技術

CO2回収、貯留設備、利用技術、概念図

出典:資源エネルギー庁『CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(後編)』(2020年12月)

Capture…回収
火力発電所などの排気ガスから高純度で大量のCO2を回収するには、一般的にアミンと呼ばれる化学物質を利用します。排気ガスとアミン溶液を接触させると、アミン溶液がCO2を吸収し、CO2を吸収したアミン溶液を120℃に加熱するとCO2がアミン溶液から分離しCO2を回収できます。

アミンによるCO2分離回収、仕組み、図

Utilization…有効利用(カーボンリサイクル)
回収したCO2はそのままCO2として工業・食品・医療の分野で利用されるほか、燃料やプラスチックなどに変換して資源として利用できます。CO2を直接利用する例では、油田の油層にCO2を圧力をかけて流し込み、原油をより回収しやすくする石油増進回収(Enhanced Oil Recovery)やドライアイスへの利用などがあります。

カーボンリサイクル、変換・利用例

Storage…貯留
CO2を地下800mより深くにある隙間の多い砂岩名地からできている層に貯留します。貯留層はCO2の漏洩を防ぐ泥岩などでできた遮へい層に覆われていることが条件となります。

日本では海域に貯留に適した場所が多く、火力発電所などの大量のCO2が発生する場所も沿岸部に多いので、主に海底下への貯留が適していると考えられます。このため、CO2を輸送する船舶と海底下に貯留する技術が必要となります。

海底下へのCO2貯留イラスト

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み 』p.3(2020年2月)

CCUSへの期待

CCUSはパリ協定の目標を達成するために必要不可欠な技術とされています。国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、CCUSは2070年までの累積CO2削減量の15%を担うとされています。

CCUSはカーボンニュートラル達成時に、年間約69億トンのCO2削減効果が期待されています。さらには過去に排出された大気中のCO2を削減する「ビヨンド・ゼロ」をも可能にする技術として、2050年までに技術の確立を目指しています。

世界のエネルギー起源CO2排出削減グラフ

出典:資源エネルギー庁『CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)』(2020年11月)

CCSの世界での現状

世界ではすでに30か所近くの商用規模のCCS施設が稼働しています。これらの施設は合わせて年間約4,000万トンのCO2を回収しています。

しかしこの量は日本の年間CO2排出量の30分の1程度の量にすぎません。日本政府は世界のCCUS設備の市場規模は2030年には年間6兆円、2050年には年間10兆円の規模になり、その3割を日本企業が獲得すると予測しています。

出典:日経ビジネス『急浮上するCCUS(CO2回収・利用・貯留) 炭素中立「最後のとりで」 環境で稼ぐ日本の武器に』(2021年5月)

2. CCUSのメリット

CO2の大幅削減が可能

CCSの技術は火力発電所のほか、製鉄・セメント生産・ごみ焼却などCO2を大量に発生させるあらゆる分野に導入でき、CO2の大幅削減が可能です。例えば約27万世帯に電力を供給できる出力80万Wの石炭火力発電所に導入すると、年間約340万トンのCO2を大気中に放出される前に回収できます。

火力発電所へのccu導入例

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み 』p.2(2020年2月)

炭素の循環利用

ごみの焼却などとCCUを組み合わせることにより、炭素の循環利用が可能です。例えば再エネ由来の水素とCO2を反応させることで、メタンなどの化学原料を生産できます。

CO2循環利用

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み 』p.2(2020年2月)

再生可能エネルギー普及を加速

太陽光発電や風力発電は出力が変動しやすく、余剰電力を貯蔵し、発電量の少ない場合に備える仕組みが必要です。そのひとつとして水素を製造し貯蔵することが挙げられますが、水素利用のインフラ整備は現在進められているものの、まだ十分ではありません。

そこで、現存の都市ガス用インフラで利用できるメタンを水素とCO2から生成し、水素用のインフラ整備を待たずに再エネからの余剰電力を貯蔵・有効利用することで、再エネの普及にもつながります。

H2とCO2からメタン製造、図

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み 』p.2(2020年2月)

3. CCSの取り組み事例

CCUSの技術の基礎となるCCS(回収・分離・輸送・貯留)の実証事例や現状を見てみましょう。

 

CO2分離・回収技術、概念図

出典:経済産業省『CCUS技術とは』

発電所からCO2を回収

株式会社シグマパワー有明のバイオマス発電所では、発電により排出されるCO2の50%にあたる500トン以上を分離・回収する設備の実証を2020年11月から2021年3月まで行いました。この結果、安全なプラント運転が可能であること、1日600トン以上のCO2が回収可能であることが実証されました。

このCO2回収率の実績は1日645トンで、93.4%でした。また、環境負荷低減対策として排ガスに伴って大気中に放出されるアミンの洗浄等が設置され、この稼働によりアミンの放散量が減少、人間の健康や水生生物への影響は懸念されないことが報告されました。

出典:環境省『環境配慮型CCS実証事業 ー 分離回収技術について ー』p.5,p.11,p.12(2021年8月)

三川発電所、ccu実証事業、設備図解

出典:環境省『環境配慮型CCS実証事業 ー 分離回収技術について ー』p.4(2021年8月)

回収したCO2の輸送・貯留

日本でCCS技術を実施する場合、海底下へのCO2貯留が適していると考えられています。火力発電所や工場などの排出源と貯留する場所との組み合わせの自由度が高く、輸送距離や貯留場所の水深に幅広く対応可能なCO2の海上輸送の技術の確率を目指しています。

CO2運搬船、海底下へのC02圧入、写真

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み 』p.7(2020年2月)

4. CCUの取り組み事例

CCUSの技術のうち、CCUに注目して実証事例を見てみましょう。CCUは回収したCO2をもう一度資源として利用することから、カーボンリサイクルとも呼ばれます。

佐賀市のCCUプロジェクト

佐賀市の二酸化炭素回収機能付き廃棄物発電検討事業では、清掃工場から回収したCO2の資源化による炭素循環モデルの構築実証が行われています。このプロジェクトでは日本で初めてごみ焼却場の廃棄物発電施設にCO2分離・回収設備を設置しました。

回収したCO2は藻類培養業者に売却され、化粧品やサプリメントの製造に利用されています。

アルビータ社藻類培養施設、写真

出典:環境省『二酸化炭素回収機能付き廃棄物発電検討事業 概要資料』p.1(2016年8月)

CO2を利用してエタノールを製造

積水化学工業株式会社の廃棄物処理施設からのCO2を利用した化学製品製造に関する技術開発と実証では、ごみ処理施設から排出されるCO2と再エネ由来の水素からシンガス(syngas)を合成します。このシンガスから微生物触媒を用いてエタノールをせいぞうしています。

シンガスとは一酸化炭素と水素の混合ガスで、化学製品や燃料の原料になります。

H2とC02による合成燃料の循環、図

出典:環境省『環境省CCUS事業の概要』p.8(2019年3月)

5. CCUSの2030年実用化を目指す動き

CCUSの2030年頃の実用化を目指して、以下のような取り組みで普及を促進しています。

  • ワークショップや年次フォーラムを通じた知見の共有

  • 地域特性を考慮したCCUSに関する技術・経済・法制度に関する調査

  • 人材育成・技術の向上

  • JCM(二国間クレジット制度)を活用したCCS実証事業の推進

JCM(二国間クレジット制度)とは、先進国が途上国に技術や資金を提供し、温室効果ガス削減プロジェクトなどを行った際のCO2削減分を、先進国がクレジットとして自国の削減目標達成に計上できる仕組みです。

出典:資源エネルギー庁『「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策』(2018年1月)

CCUSの2030年までのロードマップ

出典:資源エネルギー庁『高いポテンシャルのあるアジア地域のCCUSを推進! 「アジアCCUSネットワーク」発足』(2021年8月)

国際連携の推進

2021年6月、アジア全域の持続的な経済成長とカーボンニュートラルの同時達成を支援する目的で「アジアCCUSネットワーク」が設立されました。アジアCCUSネットワークにはASEAN10カ国、アメリカ、オーストラリア、日本が参加し、すでに100を超える国際機関・企業・金融機関・研究機関などがアジア全域でCCUSの発展に向けて活動しています。

CCUSの2030年までのロードマップ

出典:資源エネルギー庁『高いポテンシャルのあるアジア地域のCCUSを推進! 「アジアCCUSネットワーク」発足』(2021年8月)

企業間取引

経済産業省はCCSの技術で削減したCO2排出量を企業間で売買する国際ルールの策定を目指しています。CCSで削減されたCO2量は、現状では一定の測定基準がなく排出量取引市場で扱われていません。

CCSはCO2の回収・貯留設備が必要で高いコストが必要です。CCSでのCO2排出量から売却益を得られるようにし、コストの高いCCS技術を火力発電所などへの導入を促進します。

出典:日本経済新聞『CO2貯留量を売買、企業間取引のルール策定へ 経産省』(2021年10月)

CCS設備、空からの写真

出典:資源エネルギー庁『CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(後編)』(2020年12月)

6. まとめ:CCUSの今後の伸びに期待

CCUSの技術への投資は2021年に11億ドル(約1,200億円)となる見通しで、前年比の3倍に拡大すると予想されています。世界各国でCO2削減目標の引き上げと規制強化が行われ、CCUSへの投資は増加しています。

出典:日本経済新聞『CO2回収・再利用技術に投資資金 21年は前年比3倍に』(2021年9月)

CO2の回収コストはまだ高いのが現状ですが、2050年までに低減していく見通しです。2050年にはCCUSの世界市場は10〜12兆円となるに通しで、CCUSのための液や膜を製造など関連産業の発展も期待できます。

米、中、日のC02回収コスト目標グラフ

出典:経済産業省『CCUS技術とは』

CCUSは気候変動による影響を回避し、カーボンニュートラル社会への移行を加速するために非常に重要な技術です。今後、CCUSの技術により、避けることができないCO2発生の場面でも、大気中に放出する前に回収・貯留・有効活用が可能になります。

このような背景から、CCUSの技術を導入することにより支援を受けられる可能性や、CO2を原料にした燃料・CCUS関連の建築などの需要増加が見込まれます。今後、伸びることが予想されるCCUS関連の情報には政策・技術などの面で注目して、自社のビジネスの機会を広げましょう。

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