電力の安定供給にむけて!容量市場とは?

夕焼けと送電路

地球温暖化への懸念から、発電事業は再生可能エネルギー発電への転換が求められており、事業への新規参入や制度の改革が行われています。その中で「中長期的な安定供給」を目的とした「容量市場」の導入が進められています。

ここでは「容量市場」とはどういったものか解説していきます。今後の発電市場において注目されると思われる「容量市場」は電力を利用する企業にとっても必要な知識となりますので、しっかり情報をチェックし、理解しておきましょう。

目次

  1. エネルギー市場の活性化へ!容量市場とは?

  2. 容量市場を導入するとどうなる?容量市場導入のメリット

  3. 発電事業者の対応は?容量市場参加の仕組み

  4. 【まとめ】容量市場導入は将来の電力の安定供給のために不可欠!

1. エネルギー市場の活性化へ!容量市場とは?

まず、「容量市場」とはどのようなものなのでしょう。日本では2020年度から導入が始まっており、4年後の2024年分からオークション方式の取引がスタートします。ここでは、容量市場の概要や容量市場導入に至るまでの背景について解説していきます。

容量市場とは?

  • 将来の供給力を取引する市場

容量市場は、発電事業者の投資回収の予見性を高め、再生可能エネルギーの主力電源化を進めるために必要とされる「調整力」、「中長期的な供給力」の確保に対処するための制度となります。また、容量市場では「電力量(kwh)」ではなく、「将来の供給力(kw)」が取引されます。

容量市場の目的

  • 発電所等の供給力を金銭価値化

この仕組みで発電所などの「供給力(kw)」を金銭価値化することで、多様な発電事業者が市場に参加することになり、将来的な供給力を効率的に確保できるとされています。

日本の電力市場で取引される価値

現在日本では電力システム改革において電気の価値を細分化し、それぞれの価値を取引する市場が整備されています。容量市場もそのうちのひとつとなります。

容量市場において取引される電力価値は、「発電することが出来る能力」です。

『電源力の価値』『取引された電気』『取引される市場』

出典:経済産業省資源エネルギー庁『容量市場について(p.2)』(2020.10.16)

容量市場導入の背景

  • 小売自由化・再エネ導入拡大による市場取引の拡大・市場価格の低下

現在、発電事業では小売の全面自由化や再生可能エネルギーの導入拡大により、卸電力市場の取引拡大・市場価格の低下が予測され、電源の投資予見性の低下が懸念されています。

  • 電源の新設・リプレースと既存発電所の閉鎖

電源投資のタイミングが適切に行われないと、電源の新設・リプレースなどが十分に行われない状況で既存発電所が閉鎖されていくことになります。

  • 中長期的な供給力不足

新設・リプレースが不十分のまま既存発電所が閉鎖されることになると、中長期的な供給力不足に陥り、電源開発にリードタイムが発生することによる「需要ひっ迫」・「電気料金の高止まり」につながることが懸念されます。

2.容量市場を導入するとどうなる?容量市場導入のメリット

では、容量市場を実際に導入した際のメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。ここで3つのメリットをご紹介します。

  • 必要な供給量の確保

将来的な供給量を取引することにより、電源投資を適切なタイミングで行うことができ、予め必要な供給力を確実に確保できます。

  • 市場価格の安定化による安定した事業運営

容量市場での取引が行われることにより、卸電力市場での価格の安定化が図られ、電気事業者の安定的な事業運営が可能になります。

  • 価格安定による需要家へのメリット

卸電力市場の価格の安定は利用する需要家にもメリットが生まれます。

3. 発電事業者の対応は?容量市場参加の仕組み

では、実際に日本で行われる容量市場の仕組みはどのようになっているのでしょう。その内容についてみていきましょう。

容量市場参加への考え方

  • すべての電源が参加可能

容量市場は基本的に供給力を提供できる全ての発電事業者が参加できます。

  • 参加は任意

参加は任意で発電事業者が必ず参加しなければいけないわけではありません。参加によるリクワイアメントの契約内容や、想定されるペナルティ額などを踏まえて選択できます。

  • 相対契約を締結している電源も参加可能

発電事業者は相対契約(発電事業者と小売電気事業者間の取引契約)を締結している電源でも参加できます。

日本の容量市場の仕組みは?

広域機関は、容量市場で実需給期間の4年前に全国でオークションを開催して必要な供給力の落札電源と約定価格を決定します。その後実需給期間に小売電気事業者から「容量拠出金」を受け取り、発電事業者に「容量確保契約金」を支払うことになります。

メインオークションのイメージ

出典:経済産業省資源エネルギー庁『容量市場について(p.5)』(2020.10.16)

日本では2020年から新規導入となり、導入当初は費用負担する小売電気事業者の事業環境の激変を緩和するため、2030年度まで支払い減額などの経過措置を設けています。

『経過措置の控除率』と『経過措置対象電源の容量確保契約金額推移』

出典:経済産業省資源エネルギー庁『容量市場について(p.6)』(2020.10.16)

  • 容量市場のリクワイアメント

広域機関は発電事業者とオークションで落札された電源ごとに容量確保契約を締結し、実需給期間での供給力提供の具体的な方法(リクワイアメント)を取り決めることになります。リクワイアメントは需給状況によって、平常時と需給ひっ迫時の要件を設定します。平常時は年間で一定時期や一定時間以上の稼働可能な計画となり、需要ひっ迫時は電気の供給や卸電力市場への応札を要件とします。

  • 容量市場のペナルティ・容量確保契約金額の支払い

広域機関は落札した電源に対して、リクワイアメントの達成状況に応じて容量確保契約金額を支払います。未達成の場合はペナルティとして支払う容量確保契約金額が減額となったり、ペナルティの徴収が行われます。ペナルティの上限は容量確保契約金額の10%で発電事業者への支払いは実需給年度に開始となり、月ごとに行われます。

  • 容量拠出金

小売電気事業者は広域機関が算定した容量拠出金を、相対契約の有無にかかわらず支払うことになります。これは小売電気事業者が供給電力量の確保だけでなく中長期的に供給能力を確保する義務があり、国全体で必要な供給力を市場管理者である広域機関が容量市場を通じ一括確保するので「容量拠出金」として広域機関に支払うことで供給能力確保義務を達成させるという手法によるものとなります。

出典:経済産業省資源エネルギー庁『容量市場における入札ガイドライン』(2020.5.29)

4. 【まとめ】容量市場導入は将来の電力の安定供給のために不可欠!

容量市場とは、電力市場のひとつで、「電力量(kwh)」ではなく、「将来の供給力(kw)」を取引する市場となります。これにより、卸電力市場での価格の安定化が図られ、電気事業者の安定的な事業運営を可能とするものです。

小売の全面自由化や再生可能エネルギーの導入拡大により、卸電力市場の取引拡大・市場価格の低下が予測され、それにより「需要ひっ迫」・「電気料金の高止まり」につながることが懸念されていますが、容量市場の導入により、卸電力市場での価格の安定化が図られ、電気事業者の安定的な事業運営が可能となり、利用する需要家にもメリットが生まれると考えられています。

カーボンニュートラルに向けた再エネ発電の推進には「将来的な電力の安定供給の実現」が不可欠なことが課題となっています。容量市場は今後の発電事業の活性化へつながり、再エネ発電の主力電源化に大きく貢献する制度となるでしょう。

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