リサイクルの新しい形!再生材とは?

リサイクルというと製品として再生されたものを想像する方も多いと思いますが、原材料として生まれ変わった「再生材」というものがあることをご存じでしょうか。ここでは再生材とはどのようなものか解説していきます。これから環境問題への取り組みから利用が期待される再生材についての使用のメリットや、普及にむけた日本での取り組みについて理解し、今後のビジネスへの活用方法を考えていきましょう。

目次

  1. 廃棄物の再利用!再生材とは?

  2. 再生材として生まれ変わるもの

  3. 再生材活用への取り組み

  4. 【まとめ】再生を考えたものづくりへの転換!再生材利用促進へ

1. 廃棄物の再利用!再生材とは?

再生材とは、使用済みの製品や、製造工程から出る廃棄物を回収し、別の新しい製品の材料や、原料として利用できるように処理した材料です。家電製品や、建築建材などさまざまな分野での利用がすすめられており、環境問題の観点からも今後の普及が見込まれています。

家電メーカーでは、リサイクルプラントで回収された使用済み家電から部品、材料を再生材として利用し、新しい製品の部品、原材料の一部として生まれ変わらせる取り組みをおこなっています。またこのために各製品に「材質や固定ねじの表示」をすすめ利用しやすくしたり、「解体が容易な構造」に設計する等、リサイクルしやすい仕組みに取り組んでいます。

住宅建築でも回収ペットボトルを利用した断熱材や、再生パルプの壁紙、再生木材の利用など、地球環境に配慮された工夫をおこなっている企業もあります。

再生材を用いることによるメリット

  • 廃棄物の減少

再生材の利用のメリットはまず、廃棄物の減少につながるということです。令和元年度での日本のゴミの総排出量は4,274万トンで東京ドーム約115杯分にものぼり、平成22年度以降ほとんど減少していません。うち、直接焼却されたものが3,295万トンとそのほとんどが廃棄物として焼却されています。資源の再利用によりこの廃棄物の減少につながることは地球環境にとって大きなメリットといえるでしょう。

ごみの総処理量の推移

出典:環境省『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和元年度)について』(p3)

  • 低コスト化と安定供給

再生材を利用することは国内での資源確保につながり、原料の輸入による高コスト化への懸念を抑えることができ、国内での安定的な供給につながります。例として原油で見ると99.7%が輸入されていますので、この原油の輸入価格がコストに大きく影響するということです。

国産と輸入原油供給量の推移

出典:経済産業省資源エネルギー庁『一次エネルギーの動向』

2. 再生材として生まれ変わるもの

では、実際にどのようなものが再生材として利用されているのでしょうか。ここからは種類別に再生材を紹介していきます。

プラスチック

再生材のうち、ペットボトルの分別回収などで一番注目されている素材がプラスチックです。プラスチックのリサイクルは大きく分けて3つに分類されています。

  • マテリアルリサイクル

物(マテリアル)から物へリサイクルすることです。廃棄プラスチックを溶かしてペレット化して再度プラスチックの原料として利用します。

  • ケミカルリサイクル

廃棄プラスチックを化学的に処理をおこない、化学原料として利用することです。主な技術としては油に戻す「油化」、ガスにして化学工業原料とする「ガス化」、製鉄所で還元剤とする「高炉原料化」等があります。

  • サーマルリサイクル

サーマルとは「熱」のことで、廃棄プラスチックを焼却処理し、熱エネルギーとして利用するものです。サーマルリサイクルという考えは日本でつくられたもので海外ではリサイクルとは認められていません。主に完全に分別しきれないプラスチックが利用され、温室効果ガスの排出低減・埋め立てごみの減少につながります。

再生材として利用されるのは「マテリアルリサイクル」にあたり、ペットボトルや、食品トレイ、衣料品等に再生されています。

日本では現在、マテリアルリサイクルへの利用割合は少なく、サーマルリサイクルとしての焼却処理が高割合となっています。

我が国における廃プラスチックの処理状況の推移

出典:経済産業省『循環経済ビジョン骨子案データ集』(平成31年3月)(p16)

人工木材

人工木材は、樹脂(プラスチック)と木粉を混ぜ合わせ、押し出し成型したものです。その特徴としては木材のように腐ることがなく、耐久性に優れていることです。ほかにもシロアリによる腐食の心配がなく、色褪せにも強い、劣化によるささくれなどの心配もありません。質感は天然の木材には及びませんが、利用価値のある原材料といえるでしょう。

ガラス

ガラスは一升瓶やビール瓶、牛乳瓶など、回収され再利用されるものもあります。そのほかについて、原料として回収されガラス瓶のカレット(原料)として加工され再生材として再度ガラス瓶の原料として利用されたり、道路舗装材(ビーズ)や、建材として利用されるグラスウールへと再生されます。

再生骨材

再生骨材は、建築物の解体などで発生したコンクリート等の解体材を再加工し、新たなコンクリート骨材として再利用する骨材のことです。機械を使った破砕や、熱による熱解砕により加工され、解体材の状態や加工方法によっては通常の骨材と同様の使用も可能な骨材となります。

3. 再生材活用への取り組み

では、再生材の利用について現在日本ではどのような取り組みがおこなわれているのでしょうか。環境省の取り組みについてご紹介します。

  • 素材別リサイクル戦略マップの策定

日本は環境問題への対応として、天然資源消費の抑制、環境への負荷を低減させる「循環型社会」の形成を目指し、「循環型社会形成推進基本法」や「リサイクル法」などの法整備をすすめています。このような取り組みの中でマテリアルリサイクルの重要性を踏まえ、環境省では、ガラス・プラスチックのマテリアルリサイクルの品質・加工技術向上などの方向性を示した「マテリアルフロー」・「環境負荷分析」・「排出・利用の課題解決の方向性」に関する調査を進めています

出典:環境省『マテリアルリサイクルによる天然資源消費量と環境負荷の削減に向けて』

廃棄プラスチックは年間約1,000万トンの排出があり、焼却処分において約1,800万トンのCO2排出につながっています。また、ガラスの年間排出量は約270万トンで約半数をガラスとしてリサイクルすることによって27万トンのCO2排出削減につながることがわかっています。環境省では一層のマテリアルリサイクルの推進として「手法の多様化」・「需要と供給のマッチングの事業化」等の必要性を示しています。

出典:環境省『素材別リサイクル戦略マップ策定に向けた調査・検討の中間報告について』(平成28年5月24日)

4.【まとめ】再生を考えたものづくりへの転換!再生材利用促進へ

  • 再生材とは、使用済みの製品や、製造工程から出る廃棄物を回収し、別の新しい製品の材料や、原料として利用できるように処理した材料で家電製品を建築資材などさまざまな分野で活用への取り組みがすすめられている。

  • 再生材利用のメリットは廃棄物の減少や、国内資源の活用によるコストと供給の安定化などがあげられる。

  • 日本では環境省主導により、様々な法整備がすすめられ、プラスチック・ガラスの再生材化に力をいれている。

現在は加工処理のコストにより、通常原料より高コストとなっていますが、今後、加工技術の向上などにより、これまで以上に市場に普及されていくことでしょう。また、ESGの観点からも再生材利用への取り組みは企業としてにメリットも大きくなっていくことが予想できます。再生材の今後に注目しておきましょう。

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