持続可能なエネルギーとは?中小企業の再エネ導入例も紹介
- 2022年06月15日
- 発電・エネルギー
地球温暖化が進む中、化石エネルギーに変わって持続可能なエネルギーが注目されています。国内外の大手企業でも続々と再生可能エネルギーを取り入れる会社が増えてきました。それに伴い、大手企業の取引先である中小企業でも、再生可能エネルギーを導入する会社が増えています。
今回は、持続可能なエネルギーとは何か、再生可能エネルギーと自然エネルギーの違いを解説するとともに、中小企業の再生可能エネルギーの導入事例を紹介します。
目次
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持続可能エネルギーとは何か?
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再生可能エネルギーが重要視される背景
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持続する再生可能エネルギーのメリットとデメリット
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日本の再生可能エネルギーの現状と問題点
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中小企業の再エネ導入計画
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まとめ:中小企業も再生可能エネルギーの導入に突き進もう!
1. 持続可能エネルギーとは何か?
持続可能エネルギーとは、再生可能エネルギーのことを指します。
「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」では、再生可能エネルギーについて次のように定義されています。
「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」
再エネの特徴
再生可能エネルギーの主な特徴は、下記の3つです。
(1)枯渇しない
化石エネルギーと異なり、枯渇する心配がなく、環境が整っていれば永遠にエネルギーを得ることができます。
(2)どこにでも存在する
自然から得られるエネルギーなので、山間部や海上など場所を選ばずに調達できます。エネルギー資源が少ない日本において、エネルギー自給率を高める方法として注目されています。
(3)CO2を排出しない(増加させない)
温暖化の原因となるCO2を排出しない(増加させない)ことは、現代社会において非常に重要なポイントです。
自然エネルギーとの違い
再生可能エネルギーと自然エネルギーの違いは以下の通りです。
・再生可能エネルギー:自然界に常に存在するエネルギーで、枯渇しない。
・自然エネルギー:再生可能エネルギーのうち、自然現象を利用するもの。
例.)太陽光、熱、風力、潮力、地熱
つまり、自然エネルギーは再生可能エネルギーの一種であり、自然現象ではないバイオマスは含まれません。
再エネの種類
再生可能エネルギーは政令において「太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマス」の7つが定められています。また、利用の形態は、電気、熱、燃料製品です。
2. 再生可能エネルギーが重要視される背景
なぜ、再生可能エネルギーが重要視されるようになったのでしょうか。それは、現在世界全体が直面している問題が関係しています。
地球温暖化の進行
CO2を代表とした温室効果ガスは、地球の気温を上昇させ、地球温暖化を招いています。近年、温暖化が原因とされる大雨や洪水、干ばつなどの気候変動が、世界中で次々と報告されるようになりました。CO2の主な発生源は、化石燃料の燃焼であり、産業革命以降CO2の排出量は年々増え続けています。再生可能エネルギーを活用し、温室効果ガスの排出を減らすことは差し迫った問題なのです。
出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)『燃料別に見る世界の二酸化炭素排出量の推移』
パリ協定の発足
地球温暖化は世界共通の問題です。温暖化が原因で起こる気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択されました。パリ協定では、大きく分けて以下の2つの目標が設定されています。
(1)世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
(2)今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること
パリ協定の目標達成のため、再生可能エネルギーの活用が注目を集めています。
2050年カーボンニュートラル宣言
2020年10月菅前内閣総理大臣は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を目指すと宣言しました。それにより国全体でCO2のゼロエミッションに取り組む流れが加速しています。
ゼロエミッションとは、1994年に国連大学が提唱した考え方で、産業プロセスにおける廃棄物を出さない循環型社会のことを言います。既に日本国内でも、2050年までに自社事業から排出されるCO2をゼロにする目標を掲げている企業があります。
3. 持続する再生可能エネルギーのメリットとデメリット
注目されている再生可能エネルギーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。デメリットも併せて紹介します。
メリット(1)地球温暖化対策に貢献
地球温暖化の原因は温室効果ガスと言われており、その中でもCO2は最も排出量が多いガスです。そのため、世界各国でCO2削減が叫ばれており、様々な方法でCO2の排出を減らす取り組みが行われています。
中でも、日本の二酸化炭素の直接排出量のうち、エネルギー転換部門におけるCO2排出量は、全体の約39%を占めています。エネルギー転換部門とは、石炭・石油・天然ガスなどの一次エネルギーを電力やガソリンなどの二次エネルギーに転換する部門であり、この部門でのCO2削減は非常に重要です。
出典:出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)『日本の部門別二酸化炭素排出量』(2019)
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/06/27)
再生可能エネルギーは石油や石炭などの化石エネルギーによる発電とは違い、燃焼を伴わないため、発電時のCO2排出量が無い非常にクリーンなエネルギーです。
つまり、再生可能エネルギーによって発電された電力を使うことで、エネルギー転換部門のCO2排出削減に貢献することにつながります。
メリット(2)エネルギー自給率が上昇
日本は資源が乏しく多くのエネルギーを輸入しており、その割合は約90%にも上ります。多くのエネルギーを輸入に頼るということは、何らかの影響でエネルギーが供給されなくなった場合、国内で深刻なエネルギー不足に陥る危険をはらんでいます。
出典:資源エネルギー庁『グラフで見る世界のエネルギーと「3E+S」安定供給②』(2019/07/11)
再生可能エネルギーは場所を選ばず調達できるため、エネルギー自給率を上げる重要な方法として注目されています。
デメリット(1)シーズンと気候に脆弱
再生可能エネルギーは自然現象を利用して発電しているため、特に太陽光発電ではシーズンや天候によって発電量が変化します。そのため、需要に合わせて発電できないというデメリットがあります。
出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』(2019)
デメリット(2)エネルギー調達コストが高い
再生可能エネルギーは火力発電や原子力発電に比べると、エネルギー調達コストが高く経済性の観点から見るとデメリットがあります。
出典:資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020/9)
しかし、技術革新が進み再生可能エネルギーの調達コストは年々下がっているため、太陽光発電や風力発電では、2030年までに10円/kWhを下回る見込みです。
出典:資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020/9)
4. 日本の再生可能エネルギーの現状と問題点
再生可能エネルギーは、これからの時代、非常に重要な役割を持つエネルギーです。しかしながら、世界と比較すると日本の再生可能エネルギー普及率は高いとは言えません。なぜ日本では再生可能エネルギーの普及率が低いのか解説していきます。
固定価格買取制度(FIT)の弱点
2012年に導入された「固定価格買取制度(FIT)」は、再可能エネルギーでつくった電気をあらかじめ決められた価格で買い取ることで、普及を促すものでした。そのおかげで再生可能エネルギーの設備容量は年々大きくなりましたが、FITの買取費用は拡大を続け、結果的に私たち消費者が賦課金として負担を強いられる状況が生まれています。
2017年には再生可能エネルギー特別措置法の一部を改正する法律(改正FIT法)が施工されました。この法律改正で国民の負担を抑えつつ、再生可能エネルギーがより普及することが期待されましたが、賦課金が減ることは無く2020年度の賦課金は2.4兆円にも上っています。
出典資源エネルギー庁『2020ー日本が抱えているエネルギー問題』(2020/11/18)
世界と比較して、調達コストが高い
日本の再生可能エネルギーの問題点として、調達コストが高く諸外国と比べると約2倍のコストがかかるというデメリットがあります。
太陽光に関しては、日本の調達コストは若干減っているものの、世界と比べてまだまだコスト削減の伸びしろがあるといえます。
出典:資源エネルギー庁『コストダウンの加速化について(目指すべきコスト水準と入札制)』(2018/9/12)
電力系統の未整備
再生可能エネルギーは自然現象を利用しているため、地域によって電源の立地ポテンシャルが異なります。現在の日本では、電力系統が整備されておらず再生可能エネルギーを導入しようとしても送電線につなげない、高いといった問題があり、今後の系統整備が課題です。
出典:資源エネルギー庁『再生可能エネルギーの主力電源化に向けた制度改革の必要性と課題』(2019/9/19)
5. 中小企業の再エネ導入計画RE100への参加
企業による再エネ導入の一環として、RE100へ参加することが挙げられます。RE100とは、企業で使う電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す取り組みです。世界的な企業では、ナイキ、アップル、グーグルなど、日本ではソニー株式会社、イオン株式会社などが参加しています。
取り組みの輪は中小企業にも広がっており、中小企業版SBT・RE100として再生可能エネルギーの導入事例が環境省のホームページにまとめられています。
出典:環境省『環境省RE100の取組』(2020/6/19)
出典 :環境省『中小企業版SBT・RE100取組事例』(2020)
再生可能エネルギー発電設備の設置
中小企業における再生可能エネルギー発電設備の設置事例を紹介します。
・株式会社鈴廣蒲鉾本店(神奈川県)
株式会社鈴廣蒲鉾本店は、再生可能エネルギー事業者支援事業費補助金を活用して太陽光発電、地下水を熱源とするヒートポンプシステムなどを導入しています。再生可能エネルギーの導入により、前年に比べて空調用の 1 次エネルギー消費量は 71%、 CO2 排出量は 76% に低減されました。
設置された地中熱ヒートポンプシステム
再生可能エネルギーを購入する
再生可能エネルギーを導入するとなると、発電設備を設置しなければならないと思われるかもしれませんが、電力の自由化により設備導入せず再生可能エネルギーを選択的に購入できるようになりました。
介護事業を株式会社CareNationでは、再生可能エネルギーを購入し電力調達を行っています。再生可能エネルギーを購入することで、コストを削減しつつ環境貢献に取り組むことができるのです。
6. まとめ:中小企業も再生可能エネルギーの導入に突き進もう!
再生可能エネルギーは、これからの地球環境を考える上で非常に重要な役割を担っているため、国も支援事業や税制優遇措置を設けて導入を促しています。再生可能エネルギーを導入することで、コストダウンも見込めますし、環境に優しいエネルギーを使うことで、企業イメージの向上も期待でき自社の成長へ繋がります。
中小企業こそ自社の発展のために、再生可能エネルギーの導入を検討しましょう。