脱炭素社会実現に向けて注目される太陽光パネル|その発電量は?

雪の上にある大量のソーラーパネル

再生エネルギーが注目されている中、太陽光パネルは普及率を伸ばしています。企業や個人でも太陽光パネルの導入を検討する方も多いですが、その発電量がどのくらいか漠然としている方は多いでしょう。

今回は、検討している企業のみなさまが知っておくべき太陽光パネルの基礎知識と、実際の発電量、導入のポイントを解説します。

目次

  1. 今さら聞けない太陽光パネルの基礎知識

  2. 太陽光パネルの発電量

  3. 太陽光パネル導入のポイント

  4. まとめ:クリーンエネルギー・太陽光パネル導入を進めよう

1. 今さら聞けない太陽光パネルの基礎知識

再生エネルギーの中でも、太陽光による発電は世界的に年々シェアを伸ばしている注目の発電方法です。脱炭素社会の実現に向けて、再生エネルギーが注目されている中、今後さらなる発展が期待されています。

世界の各年の発電設備導入量、再生可能エネルギーの割合の推移のグラフ

出典:経済産業省資源エネルギー庁『再生可能エネルギーの歴史と未来』(2018/2/1)

太陽光パネルのしくみ

太陽光パネルに使われている太陽電池は、シリコン半導体などに太陽の光が当たると電気が発生する現象を利用して発電します。この太陽電池を繋ぎ合わせてガラスやプラスチックでコーティングしたものが太陽光パネルです。

太陽光パネルによる発電は、太陽光のエネルギーを太陽電池(半導体素子)を使って、電気に変換するクリーンな発電方法です。

出典:経済産業省資源エネルギー庁『変換効率37%も達成!「太陽光発電」はどこまで進化した?』(2017/11/21)

太陽光パネルのメリット

太陽光パネルによる発電には、以下のメリットがあります。

(1)CO2を排出せず発電できる

石油と異なり、エネルギー源が枯渇する心配がなく、繰り返し使えます。また、発電時にCO2を排出しないため、脱炭素社会を目指す上で注目されている方法です。

(2)余剰スペースを活用できる

太陽光パネルは非常に薄いため、屋根や壁面といった、これまで使われていなかったスペースを有効利用できます。

(3)遠隔地でも発電できる

さまざまな場所に設置可能であるため、送電設備のない遠隔地(山岳部、農地など)でも発電できます。

(4)非常用電源として活用できる

電力会社の発電設備から独立しているため、災害時には、非常用電源として活用できます。

出典:経済産業省資源エネルギー庁『太陽光発電』

太陽光パネルのデメリット

太陽光パネルにはメリットもありますが、デメリットもあります。ここではその中の4つを紹介します。

(1)発電コストが必要になる

太陽光発電を行うためには、設備費や施工費、維持費などのコストがかかり、世界と比較しても日本のコストは高いです。しかし、 民間調査機関による将来の発電コストの試算を見ると、2030年までに2017年の実績の半分以下になることが予想されています。

発電目標の推移のグラフ

出典:経済産業省資源エネルギー庁『コストダウンの加速化について』(2018/9/12)

(2)大規模な設備になると景観等に影響を及ぼす

太陽光パネルを設置する場合、周囲の景観に影響を与える可能性や、太陽光パネルの反射光が問題となる可能性があります。さらに、鉄道や高速道路など重要な施設の近くに設置する場合は、斜面の崩落や土砂崩れを引き起こす可能性はないか、安全面を慎重に検討する必要があります。

出典:環境省『太陽光発電の環境配慮ガイドライン』(2020/3)

(3)発電量が天候に左右される

太陽の光をエネルギー源にしているため、発電量は設置した場所の日射量に依存します。そのため、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が公開している日射に関するデータベースやソフトウェアを使って事前に日射量を確認する必要があります。

出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)『日射に関するデータベース』(2021/4)

(4)メンテナンスが必要になる

同じ再生可能エネルギーでも、風力発電に比べると太陽光パネルは可動部がなくメンテナンスは容易です。しかしながら、パネル表面が汚れると発電量が下がってしまう上に、経年劣化による故障もあるので、定期的なメンテナンスは必要です。

主な太陽光パネルメーカー

太陽光パネルを導入する場合、耐久性や発電量など何を優先したいか、設置条件などを考慮して選定しましょう。例えば新しいメーカーの場合、会社が倒産してしまいアフターフォローが受けられなくなったという事例があります。倒産リスクが少ない、ある程度歴史のあるメーカーの方が安心でしょう。

ここでは、主な太陽光パネルメーカーをいくつか紹介します。

・シャープ株式会社

人工衛星にも使われている、国内唯一のJAXA認定太陽電池メーカーです。その他にも灯台や砂漠地帯など過酷な環境で使用されている実績があります。

出典:シャープ株式会社『世界中で幅広く活躍』(2021)

・京セラ株式会社

シャープと同程度の歴史と実績を持つメーカーです。第三者認証機関 テュフ ラインランド(本社:ドイツ)による長期連続試験において、世界で初めて認証を取得しています。

出典:京セラ株式会社『世界に認められた品質』(2017)

・東芝エネルギーシステムズ株式会社

株式会社東芝のグループ企業です。1984年から開発を行っており、大規模ソーラーシステム(メガソーラー)から小規模システムまで3,000カ所以上の納入実績があります。

出典:東芝エネルギーシステムズ株式会社『東芝の強み』(2021)

2. 太陽光パネルの発電量

近年、太陽光パネルを目にすることが増え、太陽光発電が着々と普及している印象を受けます。太陽光でコスト削減が出来るとなれば非常に魅力的ですが、実際の太陽光パネルの発電量はどの程度なのでしょうか。

1日の発電量

太陽光パネルで実際どのくらい発電ができるのでしょうか。下記の式を用いて計算してみます。

Ep=H×K×P÷1

Ep=1日あたりの予想発電量(kWh/日)

H=設置面の1日あたりの平均日射量(kWh/m2/日)

K=損失係数(約73%)※太陽光パネルの種類や汚れなどで多少変動する

P=システム容量(kW)※太陽光パネル×設置枚数の発電能力

1=標準状態における日射強度( kW/m2)

例えば、東京に設置されたシステム容量 1kWの設備の1日あたりの予想発電量は次のように計算できます。

Ep=3.73kWh/m2/日×0.73×1kW÷1kw/㎡ = 約2.7kWh/日

日本各地の年間予想発電量と年平均日射量

出典:一般社団法人 太陽光発電協会『公共・産業用太陽光発電システム手引書(2021)

国立大学法人東京大学経済学部が行ったアンケート結果をもとに計算すると、1ヶ月で1000kWhの電力を使う工場の1日あたりの使用電力量は以下の通りです。

1000kWh/月÷31日=約32kWh/日

システム容量 1kWの太陽光パネル設備で、使用電力の約8%を賄えることになります。環境省の資料を確認すると、容量1kW=15m2の面積と仮定されており、15m2以上の設置場所が確保できる企業であれば、より多くの発電量を賄えるでしょう。

出典:環境省『太陽光の導入ポテンシャル』(2012/03/24)

3. 太陽光パネルのスペックと実際の発電量

太陽光パネルは様々なメーカーから発売されており、それぞれスペックが異なります。中でも太陽光エネルギーを電気に変換する際の効率、「エネルギー変換効率」は発電量に影響してきます。

例えば、国内のメーカー2社を比較しても下記の通り違いがあります。たった2%程度の違いですが、設備が大きくなれば発電量にも大きな差が出てくるでしょう。

・シャープ株式会社「NU-330KC」:19.6%

・東芝エネルギーシステムズ株式会社「TA72E395WB/H」:21.7%

出典:シャープ株式会社『太陽電池モジュール『NU-330KC』

出典:東芝エネルギーシステムズ株式会社『TA72E395WB/H』

ただし、耐久性や重さなどの要素も重要ですので、一概にエネルギー変換効率が高ければいいという訳ではありません。現場に合わせた太陽光パネルの選定が必要です。

4. 太陽光パネル導入のポイント

太陽光パネルは、ただ単に空いたスペースに設置するだけではその性能を活かせません。発電に適した条件を整える必要があります。

(1)適切な場所に設置して発電効率をアップ

太陽光パネルによる発電は日射量によって発電量が大きく左右されます。導入・設置する場合は、NEDOが公開している日射に関するデータベースやソフトウェアを利用して、できる限り日射量がよい土地を選定しましょう。

その他、設置場所へのアクセス、設置予定地の法的制約などを考慮する必要があります。環境省が再生可能エネルギーの導入ポテンシャル情報を公開していますので、こちらも参考にしてください。

出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)『日射に関するデータベース』(2021/4)  

出典:環境省『再生可能エネルギー情報提供システム[REPOS(リーポス)]』(2021/8/20)

(2)パネルの洗浄を行い発電効率をアップ

太陽光パネルは、屋外に設置するため必ず汚れが付着します。パネルに付着した汚れは発電量を低下させ、局所的な汚れはホットスポット故障というトラブルを引き起こします。そのため、鳥の糞、傾斜したパネルの下に溜まる粉塵などには注意しなければなりません。降雪地帯ではパネルに雪がたまることもあります。

設置開始直後は短いスパンで定期点検を行い、どのくらいの期間でどの程度汚れが付着するか確認しましょう。また、洗浄時には、機器を損傷しないように注意が必要です。

出典:一般社団法人 太陽光発電協会『太陽光発電システム保守点検ガイドライン』(2019/12/26)

(3)優遇制度をうまく活用して導入

太陽光パネルのコストは年々安くなっているとはいえ、実際に導入するにはある程度の資金が必要です。優遇制度や補助事業が活用できる場合があるので、うまく活用してみましょう。

・優遇制度例

再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置:再生可能エネルギー発電設備に対して、固定資産税を軽減

・補助事業例

PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業:太陽光発電設備や蓄電池等の導入に対して補助金

出典:経済産業省資源エネルギー庁『再エネガイドブックWEB版

5. まとめ:クリーンエネルギー・太陽光パネル導入を進めよう

太陽光パネルによる発電は、エネルギー源が枯渇する心配がなく、繰り返し使えてCO2も排出しないクリーンな発電方法です。脱炭素社会の実現に向けて、これからも益々注目が高まっていくでしょう。また、資源が乏しい日本において、再生可能エネルギーはエネルギー自給率を上げる有効な手段でもあります。

脱炭素社会の実現が叫ばれる中、使用するエネルギーを再生可能エネルギーに切り替える企業が増えており、企業価値を高めるPRポイントにもなっています。太陽光パネルが注目されている今、国や自治体の支援制度を活用して、太陽光パネルの導入を検討してみましょう。

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