ESGの意味とは?間違いやすいSDGsと比較しながら解説

最近ESGやSDGsなど、様々な用語がでてきているけど、その意味が分かりづらい。こう思う人も多いのではないでしょうか。ただでさえ英語で難しいのに、頭文字をとった用語ばかりでなかなか意味の区別が難しいですよね。しかし現在ESGは企業にとって重要な考え方になっています。様々な日本企業がESGを意識して経営を始めており、また東洋経済も「ESGに優れた企業ランキング」というランキングを発表しています。今日本の企業の間で話題になっているESGの意味をSDGsと比較しながら、意味を解説していきます。

ESGの意味とは?

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という3つの観点から企業を評価しようとする考え方です。これは今まで企業を評価してきた財務状況とは異なる評価基準になります。

ESGは環境や社会的に貢献度が高く、また企業自身の統治がしっかりとされているかどうかの評価をする指標となっています。そしてESG評価の高い企業は、健全な運営をされている持続性の高い企業と判断されるようになりました。

 

 ESGの具体的な取り組み例

ESGの意味を理解するために、具体的な取り組み事例を参考にするとESGの意味がよりイメージしやすいです。

 

環境(Environment):企業が排出する二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減や、企業活動の中で太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーの導入などの取り組みです。また製造過程のフードロスや廃棄物削減などもこの環境に入ります。

社会(Social):多様な人々の人権問題を配慮した活動や、多様性を尊重した働き方の確保などはこの社会に入ります。

ガバナンス(Governance):企業の不祥事の回避や法令順守、情報開示など、透明性などはこのガバナンスに入ります。

 

以上のようにESGとは、自分の利益のみを追求するのではなく、環境や社会、そしてその企業に関わるすべての人々に利益があるよう活動する考え方です。 

 

ESGが重要視されるようになった理由

日本でESGが重要視されるようになったのは、2017年7月に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が本格的にESG投資をスタートしたと発表してからです。GPIFは日本最大規模の機関投資家であり、約11兆円規模の投資を行ったことから、日本で一気にESGという単語が知れ渡りました。

 ではなぜGPIFがESG投資を始めたかというと、国連が2030年までに達成すべき世界共通の目標として、SDGs(Sustainable Development Goals =持続可能な開発目標)を2015年に採択したためです。

 

 ESGが注目されたきっかけ?SDGsの意味とは

SDGsとは、持続可能なより良い社会を目指し、全世界のすべての人や企業、団体が達成するべき最終目標として設定した17個のゴールを指します。

 

SDGsの17個のゴールとは?

ここでは簡単にSDGsの17個のゴールをご紹介します。

目標1 [貧困]貧困をなくそう。あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

目標2 [飢餓]飢餓をゼロに。飢餓に終止符を打ち、食料の安全確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

目標3 [保健]すべての人に健康と福祉を。あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

目標4 [教育]質の高い教育をみんなに。すべての人に公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

目標5 [ジェンダー]ジェンダー平等を実現しよう。性の違いによる、職場や生活の中での差別をなくす。

目標6 [水・衛生]安全な水とトイレを世界中に。すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する

目標7 [エネルギー]エネルギーをみんなにそしてクリーンに。すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

目標8 [経済成長と雇用]働きがいも経済成長も。すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長を推進する

目標9 [インフラ、産業化〕産業と技術革新の基盤をつくろう。強靱なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業を推進する

目標10 [不平等]人や国の不平等をなくそう。国内および国家間の格差を是正する

目標11 [持続可能な都市]住み続けられるまちづくりを。都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靱かつ持続可能にする

目標12 [持続可能な消費と生産]つくる責任使う責任。持続可能な消費と生産実現する

目標13 [気候変動]気候変動に具体的な対策を。気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

目標14 [海洋資源]海の豊かさを守ろう。海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全する

目標16 [平和]陸の豊かさも守ろう。陸上生態系の保護、森林の持続可能な管理

目標15 [陸上資源]平和と公正をすべての人に。持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進

目標17 [実施手段]パートナーシップで目標を達成しよう。持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

出典:外務省『持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組』

 

SDGsの達成を後押しするESG投資の意味とは

上記のSDGsの目標達成のために、企業が主体的に取り組んでいるのがESG投資になります。環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して投資を行います

 出典:GSIA『Global Sustainable investment Review(Trends Report 2018. page 9)』

この表は、世界持続可能投資連合(GSIA)という投資団体が発表しているレポートの一部を抜粋したものです。このグラフは資産全体に対するESG投資額の割合を示したものです。5つのグラフの内4つは2018年には上昇しています。特に日本は2016年では3%でしたが、2018年には18%に上昇しています。今後もこのトレンドは続くと見込まれています。

 ESG投資の意味は、ESGに取り組む企業に投資する投資手法

ではESG投資とはどんな投資がおこなわれているのでしょうか?投資先を選定している基準がわかれば、今後どういった企業にお金が集まりやすくなるのか分かります。

 

ESG投資の種類とは

  ESG投資の種類は主に7つあり、世界持続可能投資連合(GSIA)という投資団体が2018年に発表したレポートで定義しています。ここではその7つをそれぞれ簡単に説明していきます。

出典:GSIA『Global Sustainable investment Review(Trends Report 2018. page 7)』※1

1.ネガティブ・スクリーニング

ESGの観点から問題のある企業をあらかじめ投資対象から除外する投資手法です。例えば、アルコールやたばこ、ギャンブル製品を作っている企業は投資する対象から排除されます。また武器製造企業、原子力発電企業、児童就労を強いる企業なども例として挙げられます。

2. ポジティブ・スクリーニング

ESGの観点から評価の高い企業のみを限定して、投資対象に入れる投資手法です。例えば人権問題や環境問題に積極的取り組む企業が例として挙げられます

3. 国際規範スクリーニング

ESG分野で国際的な基準を満たしていない企業を投資の対象から除く投資手法です。

4.サスティナビリティ・テーマ投資

食糧や農業、気候変動など持続可能性(サスティナビリティ)を意識した投資を行っている運用機関に投資する手法です。ESG投資をしている運用機関を応援するような投資手法です。

5.インパクト・コミュニティ投資

社会問題や環境問題の解決に貢献する技術やサービスを提供している企業に投資する投資手法です。

6.ESGインテグレーション

投資する企業の評価において、財務情報以外にも、財務情報には表れないESGへの取り組みも分析・評価して投資する手法です。

7.エンゲージメント/議決権行使

株主が企業に対して交渉を申し入れるなど、エンゲージメント(対話)や議決権行使を通じて、企業へESG経営を積極的に促す手法です。

以上がESGの投資の種類になります。

企業がESGに取り組む意味はあるのか?

ESGに取り組むということは、大きな変革が伴い、コストや労力が大きくかかるものになります。

では企業にとって、大きなコストや労力をかけてまで、ESGに取り組むメリットはあるのでしょうか?ここでは企業がESG経営に取り組むことで得られるメリットとデメリットをご紹介します。

 

ESG経営のメリット

まず資金面において大きなメリットがあります。機関投資家はESGを意識して巨額の投資額を投資しているわけですから、そういったESG経営をしている企業価値の高い企業は容易に投資資金を調達できるようになります。

ESG経営を行うことで、企業としての価値が高まります。なぜなら環境や社会にやさしい、透明性の高い会社は、ESGに投資している多くの機関投資家からの評価が高くなるからです。例えば電気自動車メーカーである、テスラはESG投資の高まりの結果、トヨタ自動車を抜くほど、時価総額が増加しました。このようにESG経営を行うことで、投資家からの評価が高まり、その結果株価上昇など企業価値が高まるのです。

 

次に企業のブランディング効果です。ESG経営とは、環境や人権などを犠牲にして、目先の利益を追求するといった経営ではなく、環境や社会を考慮した、持続性が高い経営スタイルになります。こういった経営はクリーンな企業という社会へのPRになり、企業のブランディングにつながります。

例えば東洋経済新報社は『ESGに優れた企業』のランキングを発表しています。

このように、ESGに取り組むことで、各社がランキングを発表することで、企業のイメージが変化することになるでしょう。

 

ESG経営のデメリット

ESG経営は、企業活動による売上や利益を実感するのに時間がかかる傾向があるのがデメリットです。利益がでるのに時間がかかるということは、企業にとっては経営が苦しくなることを意味します。また経営開始時期は設備投資なども必要になり、コストが大きくかかるため、企業側の負担も大きくなります。

 

世界はESGに向かって動いている

コスト面や経営面で、デメリットがあるとはいえ、現在世界全体がESGに関心が傾いており、投資額も増額している現状を考えると、そういったコストを初期投資とみなして経営の舵を切った方が、長期的に見ると企業利益が上がると考えられます。

出典:GSIA『Global Sustainable investment Review(Trends Report 2018. page 8)』

世界のESG投資の増加率をみると、ほとんどが増加傾向です。特に日本の増加率は他国よりもかなり大きく、大きな時代の変化を表しています。

そしてそういった資金はESG投資を通して、ESGに取り組む企業に多く流れることになります。

逆に言えば、今後ESGを考慮しない企業は淘汰され、資本的な立場で不利になる可能性があるということです。

日本のみならず世界のトレンドとなっているESG経営。ぜひ自分の会社にあった取り組みを検討してみましょう。

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