次世代電力システムとして注目されるP2P電力取引を徹底解説
- 2023年12月15日
- 発電・エネルギー
近年注目されているP2P電力取引とはインターネットの通信技術を電力販売の取引に応用した次世代のプラットフォームビジネスです。
この記事では、個人間でも電力取引を可能にするP2P電力取引とはどのようなものなのか、それに必要なブロックチェーン技術とはどのような技術なのか。企業が注目すべきP2P電力取引について様々な角度から解説します。
目次
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P2P電力取引とは |次世代プラットフォームビジネス
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P2P電力取引のブロックチェーン技術とは
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P2P電力取引の課題とは
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P2P電力取引は卒FIT後の売電手段として注目を浴びている?
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まとめ:P2P電力取引で未来に取り組む企業を目指す
1. P2P電力取引とは |次世代プラットフォームビジネス
P2P(ピア・ツー・ピア)とは何か
P2P電力取引のP2Pとは「Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)」の略称であり、コンピューターの中央サーバーを通さずに多数の端末が互いの信頼において直接データファイルを共有するネットワークを意味します。元々はインターネットの通信技術であり、その仕組みに例えているのでP2Pと呼ばれています。また「Peer」には、「情報の共有を対等な立場で行う端末」という意味があります。
P2P電力取引の仕組みとは
P2Pの電力取引は、この通信方法を売電に応用することにより、これまでは事業者を介して取引されていた電力の売買を個人でも行うことを可能にしました。ブロックチェーンなどの技術により発電する事業者と需要者を直接結びつけ、電力の取引が成立するようになったので消費者が再生可能エネルギー(以下再エネ)由来の電力などを購入しやすくなったのです。
P2P電力取引が生まれた背景
これまでは、大手の電力会社が発電した電力を需要側に一方的に供給するという形で、電力の取引は行われていました。そのため、需要側に応じた電力の供給が難しいという側面がありました。新規の小売り電力会社から再エネ由来の電力を購入するなどの選択も可能でしたが、契約の難しさや安定供給という面が課題でした。P2P電力取引の技術は、こうした課題を解決し、再エネの普及促進を可能にするなどのメリットがあると言われています。
2. P2P電力取引のブロックチェーン技術とは
ブロックチェーン技術の基礎知識
それではP2P電力取引に活用されているブロックチェーンとはどんな技術なのでしょうか。ブロックチェーンは、日本語では「分散型台帳技術」呼ばれており、簡単に言うとデータを記録し管理する技術で「経済的価値のあるインターネット」とも言われています。インターネットで連結するコンピューター間の取引記録を共有管理しチェーン(鎖)のようにつなぎ、取引データは暗号化されて「ブロック(BLOCK)」として蓄積されていきます。仮想通貨取引などにも使用されている技術です。
ブロックチェーンの3つのメリット
(1)耐改ざん性が高い
ブロックチェーンは、データをブロック状に蓄積し保存するという仕組みのため、過去のデーターの書き換えを行うことは理論上まずできません。また取引の情報は公開されているため、ユーザーが互いに監視することが可能で、不正な改ざんを防止できます。
(2)取引の履歴が安心安全で正確である
ブロックチェーン技術は、誰が誰に電力を販売したかなどのデータを暗号化するため、個人情報などが漏れる心配はありません。しかし公開されている取引の履歴や情報は誰でも見ることが可能なため、正確性と透明性は維持されるのです。
(3)スマートコントラクトの応用
ブロックチェーンには「スマートコントラクト」という契約の自動実行機能が組み込まれています。第三者を仲介せず契約可能なので、取引の時間の短縮や人件費の削減などを可能にします。また契約者は、自分の希望や要望に応じた契約を自動的に受けることができるため、顧客サービス向上に役立ちます。
ブロックチェーンの利用事例
生産過程から流通までの履歴を追跡するシステム、トレーサビリティでもブロックチェーン技術は活用されています。電力会社の中でも先駆けてP2P電力取引を利用しているところもあります。電力という可視化の難しい商品をブロックチェーンを利用し記録することで、知的財産の安全性や利便性を訴えることを可能にしました。そうして再エネ等を直接発電事業者や小売業者へと展開しています。
出典:経済産業省「第7回 次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの在り方研究会(資料4)」(p5)(2019.5.10)
3. P2P電力取引の課題とは
P2P電力取引法整備の問題
P2P電力取引は新たな電力の取引方法のプラットフォームとして期待されていますが、ビジネスとして確立するためには、法整備などクリアしなければならない課題が多くあります。例えば個人の小規模の電気事業者は、現行の電気事業法では供給主体になれないなどの問題があります。
出典:経済産業省「第7回 次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの在り方研究会(資料3)」(p12)(2019.5.10)
技術面での拡張性の問題
P2P電力取引が小規模のうちは問題なく取引できても利用する顧客が増えることでブロックチェーンの活用に負荷がかかり、処理速度などに問題が生じるという、インターネット特有の課題が浮き彫りになる可能性があります。また相互運用においても、ブロックチェーンは様々な方式が存在します。そのため、ビジネスとして展開する場合、各ブロックチェーンの相互運用を正確に安全に行えるようにしなくてはいけません。
仮想通貨の実体化の問題
P2P電力取引はそのようにネットの通信技術としてブロックチェーンを応用するため、取引には仮想通貨を利用することになります。しかし、仮想通貨自体を法定通貨として実体化し変換出来るのかという問題があります。これについては、今後どのような解決策が示されるのか検討されている状況です。
4. P2P電力取引は卒FIT後の売電手段として注目を浴びている?
P2P電力取引は、2019年で国が一定価格で電力を買い取るFIT制度が終了し、買取期間の満了を迎えました。その中で太陽光発電などの余剰電力を今後どう活用するか、いわゆる卒FIT後の新たな売電手段としても注目されており、P2P電力取引の今後の展開を注意深く見ていく必要があります。
出典:資源エネルギー庁「住宅用太陽光発電にせまるFIT買取期間の満了、その後どうする?」(2019.2.19)
大手企業のP2P電力取引の実証実験
大手企業では電力の効率的利用を目指し、P2P電力取引の実証実験を行っているところもあります。トヨタ自動車株式会社はTRENDE株式会社や東京大学と提携し、2019年6月にブロックチェーンを活用したP2P電力取引の共同実証実験を開始しました。
太陽光パネルや、蓄電池、電動自走者などの分散型の電源を活用し、個人の電力売買のシステムを検証するのがねらいです。電力網につながる住宅や事業所、電動自動車などの間で電力取引を可能とする画期的な試みで、トヨタの東富士研究所近辺の地域で開始されました。
またドイツの大手企業テクノロジー会社シーメンスもバイエルン州のある自治体でP2P電力取引の実証実験を行っており、海外での検証も次々開始されています。このように、海外や大手の企業にもP2P電力取引は注目されているのです。
主要電力会社のP2P電力取引への積極的な取り組み
国内の主要電力会社も、この次世代電力システムには積極的に取り組み始めています。関西電力は豪州の電力会社と提携し実証を行い、東北電力、中部電力などもブロックチエーンを活用した電力システムの取り組みを進めており、技術的には順調な適応が為されています。今後は各電力会社でも実証実験が進んでいき、P2P電力取引が電力ビジネスモデルとしてさらなる発展を遂げていくのは間違いないと言えるでしょう。
P2P電力取引による再エネの普及促進の期待
P2P電力取引は、需要者が使用したいエネルギーや事業者を幅広く選択することを可能にします。また卒FIT後の余剰電力を、個人でも販売購入を可能にします。このように利便性が高いことで、再エネ購入や導入の機会が増えることは間違いありません。再エネは、今後世界の脱炭素に向けてますます重要性を持つエネルギーです。私たちは持続可能な社会を構築するため、再エネの普及促進を目指さなくてはいけません。
5. まとめ:P2P電力取引で未来に取り組む企業を目指す
通信技術が発達した現代、P2P電力取引により電力を調達する企業は今後増加することが予想されます。すでに大手の企業だけではなく、ベンチャー企業も次世代の電力システムとしてP2P電力取引を使った取り組みを始めています。ブロックチェーンという革新的な技術は、電力の購入を個人間でも可能にしました。
P2P電力取引は、これまで再エネ電力の購入に敷居を高く感じていた個人の需要者や、中小企業に向けて再エネ導入の機会を増やす可能性を高めます。次世代の新電力システムを取り入れることで、企業は未来のビジネスを広げるチャンスが到来しているのです。ぜひこのチャンスを逃すことなく、積極的にP2P電力取引を使った取り組みを始めてみてください!