気候変動による影響と私たちにできることとは

海面に浮かぶ氷

日本のみならず世界で気候変動による影響が深刻化しています。

ところでみなさんは、なぜ気候変動が起きるのかをしっかり理解しているでしょうか。気候変動は気象の変化から起きています。そして気象の変化は我々人類の経済活動によって引き起こされていることは疑う余地のない事実なのです。

この記事では、気候変動が起きるメカニズムから解説し、気候変動が社会・経済に与える影響と私達人類ができることをまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。

目次

  1. 実際起きている気象変動について知ろう

  2. 気象変動は自然・社会・経済に影響を及ぼす

  3. 人類はどのように気象変動に対応してきたか

  4. 気象変動に対応するためには脱炭素が鍵!

  5. まとめ:気象変動の関心を高め、脱炭素に向けた取り組みを行おう

1. 実際起きている気候変動について知ろう

気候変動のイメージ画像

出展:気象庁「気候変動」

気候変動の主な要因

地球上のあらゆる物質は太陽のエネルギーから影響を受けて大気の状態を変えています。この大気の状態を気象と呼びます。そして気象は気候に影響を与えます。

気候とは、ある地点の平均的な気象の状態を指します。具体的には天気・気温・風・降水量などです。気候変動は気象の変化によって生じ、気象は地球上に存在する物質の変化によって引き起こされます。

この地球上の物質の変化は「自然の要因」と「人為的な要因」によるものと言われています。「自然の要因」としては火山の噴火や太陽活動の変化があり、「人為的な要因」としては、温室効果ガスの排出や森林破壊が挙げられるのです。

そして、2021年8月にIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)で初めて「温暖化の原因は人間活動が原因であることは疑いの余地が無い」と人為的な要因として初めて断言しました。

出典:環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠) 政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)」

現在観測されている気候変動

現在日本で観測されている気候変動は主に以下の3つです。

  • 平均気温の上昇

日本の平均気温は変動を繰り返しながら上昇しています。2020年の平均気温は、1898年の統計開始以降で最も高い偏差値(過去30年の平均と比べて+0.65℃)でした。長期的には100年あたり1.26℃の割合で上昇していくと考えられています。

出典:気象庁「日本の年平均気温」

  • 真夏日と猛暑日の増加

最高気温30℃以上の真夏日と35℃以上の猛暑日の年間日数が増えており、猛暑日は統計開始の30年と直近30年の平均を比べたときに3.1倍で増加しています。
【13地点平均】日最高気温35℃以上の年間日数(猛暑日)のグラフ
出典:気象庁「日本の年平均気温」

  • 豪雨の増加と降水量の減少

1時間に50mmの雨が滝のように降る豪雨が発生した日が、統計開始の10年間(1976年ー1985年)と比べ、直近の10年間(2011年ー2020年)は1.5倍まで増加しているのです。一方、雨が降った日は0.9倍と減っており、さらなる豪雨の増加と降水日の減少が予測されています。
左図:【アメダス】1時間降水量50mm以上の年間発生回数 右図:【51地点平均】日降水量1.0mm以上の年間日数
出典:気象庁「日本の日降水量100mm以上の年間日数」

特に、令和に入ってからの3年間に発生した豪雨のうち、5件が激甚災害に指定されるほど社会へ影響を与えているのです。
出典:内閣府「防災情報ページ」

次章では、これら気象変動によって私たちの生活にどのような影響が出ているかをみていきましょう。

2. 気候変動は自然・社会・経済に影響を及ぼす

気候が変わると我々の生活にどのような影響が出るのでしょうか。

ここからは、現在進行中の気候変動によって予測されている影響を紹介します。

自然環境への影響

気候変動はまず自然環境に影響を与え始めます。

例えば豪雨が増加することで河川の流量も変化し、それによって洪水や土砂災害が引き起こされます。前述のとおり、日本の降水量は減少していますが豪雨は増加しています。今後、気候変動が進行すれば、土砂の深層崩壊により河川流域の複合的な水害・土砂災害の激甚化が予測されています。

出典:環境省「日本の気候変動とその影響」

また、気候変動は生態系にも影響も与えます。例えば、気候変動による温暖化でサンゴ礁が消滅する可能性があります。また、日本固有の動物であるニホンライチョウの生息域が減少したり、南方系魚類が東京湾に定着するといった影響も考えられています。
出典:環境省「おしえて!地球温暖化」(p.5)

人間社会への影響

自然環境への影響は人間社会へも影響を与えます。

気温の上昇や降水量の減少はお米や果物の品質を悪くするのです。特にお米に関しては、一部地域の高温化によってすでに収穫量が減少していることも報告されています。

左図:2031年から2050年 右図:2081年から2100年 【日本の気候変動におけるお米の収穫量の変化予想】

出典:環境省「日本の気候変動とその影響」

また、高気温は人体への健康被害も招きます。近年、熱中症による死亡者数は増加傾向にあり、2010年は過去最多の1731人、直近の2018年でも1581人もの死亡者が出ているのです。

年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和元年)

出典:厚生労働省「年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和元年)」

産業・経済活動への影響

気候変動によって自然環境から人間社会へ影響が及んだ先には、産業・経済活動へ影響が派生していきます。

2011年、タイで発生した洪水は現地の日系企業に大規模な被害をもたらしました。現地では精密機器の部品を製造しており、サプライチェーンを通じて日本国内企業におよそ3,150億円もの損失が出たと試算されています。

日本でも豪雨や強い台風など気象の極端現象が増加したり強まることで、産業生産プロセスが滞るなど甚大な被害が経済へ影響を与えると予測されているのです。

出典:環境省「日本の気候変動とその影響」

3. 人類はどのように気候変動に対応してきたか

前述の通り、地球温暖化による気候変動は人間活動が原因であると断言されています。しかし、人類はこの地球温暖化を黙って見ていたわけではありません。

IPCCの誕生

1985年、世界の有識者は既に「21世紀前半にはかつてなかった規模で地球の平均気温の上昇が起こりうる」との見解を発表しています。この発表をきっかけに1988年IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が誕生し、地球温暖化についての研究が始まりました。

実は、日本でも1990年に「地球温暖化防止行動計画」が公布されています。これは、2000年以降の二酸化炭素排出量を1990年と同程度にする目標です。しかし、二酸化炭素排出量は経済の発展とともに増加し続け、目標達成とはなりませんでした。

COPの開催

一方世界では、1992年に地球サミットで「気候変動枠組み条約」が締結されます。この条約を基にして1995年よりCOP(条約を締結した国が参加する会議)が開催されることとなりました。

ここでは、温室効果ガス排出量削減策などを協議する場として第1回ドイツ・ベルリンで開催されて以降、毎年開かれています。日本では京都で第3回COPが開催され、京都議定書が締結されることになるのです。

京都議定書の締結

京都議定書は1997年に第3回COPで締結された議定書です。

この中では、温室効果ガスを2012年までに1990年水準と比較して5.2%削減する法的拘束力をもつ目標設定や、EUは8%、アメリカは7%、日本は6%削減とすること、排出量の取引を可能とするなど具体的な温暖化対策の目標が締結されました。

しかし、京都議定書は長期的な取り組みでないことやインドや中国といった主要排出国が削減義務を負っていないなどの課題がある中での採択となってしまったのです。

パリ協定の採択

2015年、パリで開催されたCOP21においてパリ協定が採決されました。

京都議定書は2012年までの短期目標且つ、目標を定められた国が限定的だったのに対して、パリ協定は全世界の国が参加して世界の平均気温の上昇を産業革命前の2℃未満(努力目標1.5℃)に抑えることや21世紀後半には温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としました。

2016年にパリ協定は批准を満たして発効され、世界各国が気候変動の対策に力を入れ始めることとなったのです。

4. 気象変動に対応するためには脱炭素が鍵!

ここまでで、気象の変動が気候を変化させ人間生活へも大きな影響を与えていること、そして世界的な取り組みが推進されていることがご理解いただけたかと思います。

では、私たちにできる取り組みはあるのでしょうか。既に起きている気候変動に対してできることは「緩和」と「適応」だと言われています。

脱炭素社会に向けた日本の動き

2020年10月26日に菅義偉総理大臣は、臨時国会で2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言しました。カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出をゼロにすることであり、脱炭素社会を実現するという重大な宣言です。

出典:首相官邸「第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説」

日本国内では、カーボンニュートラル実現に向けて改正地球温暖化対策推進法の成立や地域脱炭素ロードマップが決まるなど、取り組みが加速しています。

出典:環境省「脱炭素ポータル」

気候変動の発生を抑止する取り組みとしての「緩和(Mitigation)」

前述したカーボンニュートラルの実現は、気候変動に対する「緩和」に分類される取り組みの一例です。つまり、「緩和」とは温暖化の原因となるCO2の排出を積極的に抑制することを指します。温室効果ガスを減らしていくことで、地球の平均気温が予測より少しでも低くなれば、それだけリスクは減るのです。

IPCCの第5次報告書には、地球温暖化のシナリオが4種類あります。最もリスクが高いシナリオは2100年までに地球の平均気温が更に2.6~4.8℃上昇するというシナリオで、最も低いシナリオは0.3~1.7℃です。

緩和とは最も低いシナリオを実現するための取り組みということになります。

二酸化炭素などの温室効果ガス排出を減らすための具体的方法として、省エネの推進や再生可能エネルギーの普及が挙げられます。

気候変動への「適応(Adaptation)」

そして、気候変動には「適応」する必要もあります。

「適応」とはすでに起こりつつある気候変動の影響によるリスク回避していくこと、また、新しい気候条件を利用して自然や人間社会の在り方を調整していくことです。

具体的方法として減りつつある降水量の渇水対策や農作物の新種開発、高くなる最高気温に対する熱中症対策などが挙げられます。

5. まとめ:気象変動の関心を高め、脱炭素に向けた取り組みを行おう!

人類の経済活動が気象の変化を引き起こし、気候変動を招いています。気候変動は結果として人類の経済活動に影響を与え、すでに多くの損失が出ているのです。

まずは、私たちができる「緩和」と「適応」からはじめていきましょう。使用電力は太陽光パネルなどの再エネで賄うことや、電気自動車の導入などを進めるとともに、気候変動による事業リスクを把握し、適応策を考えることが重要です。

これを機に、気象変動の関心を高めてできることから取り組んでいきましょう。

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