二酸化炭素排出量世界第3位のインドの脱炭素に向けた動向

インドの道路

インドは二酸化炭素排出量が、中国、アメリカに次ぐ第3位です。しかし、まだカーボンニュートラル宣言をしておらず、2021年4月に開催されたバーチャル気候変動サミットでは脱炭素に向けた新たな取り組みをいしていません。

この記事では、インドの二酸化炭素排出に関する現状に関心のある法人の皆さまが知っておくべきインドの二酸化炭素排出量や政策、現在抱えている課題などについてご紹介します。

目次

  1. インドの二酸化炭素排出量はどのくらい?

  2. 二酸化炭素排出量が多いインドの政策

  3. 脱炭素実現に関するインドの課題

  4. まとめ:インドの現状を知り、企業は脱炭素へ取り組もう!

1. インドの二酸化炭素排出量はどのくらい?

世界で3番目に二酸化炭素排出量が多いインドでは、どのくらいの二酸化炭素が排出されているのでしょうか。二酸化炭素排出量が多い国の排出量とインドで二酸化炭素排出量が多い原因についてご紹介します。

世界各国の二酸化炭素排出量

2018年の世界の二酸化炭素排出量は335億トンで、インドは中国、アメリカに次いで二酸化炭素排出量が多い国です。世界各国の二酸化炭素排出量と全体に占める割合は以下の通りです。

 

億トンCO2

世界全体に占める割合

中国

95.3

28.4%

アメリカ

49.2

14.7%

EU28ヵ国

31.5

9.4%

インド

23.1

6.9%

ロシア

15.9

4.7%

日本

10.8

3.2%

 

1990年度と2018年度を比較した時に、二酸化炭素排出量の増加割合が最も大きいのが356%増の中国です。インドは中国に次いで増加割合が大きく、335%増となっています。世界のエネルギー起源CO2排出量(2018年)の円グラフ

主な国別エネルギー起源CO2排出量の推移

出典:環境省『世界のエネルギー起源CO 排出量(2018年)』

インドで二酸化炭素排出量が多い原因

インドは石炭が豊富で、中国に次ぐ世界第2位の石炭生産国です。2019年度の世界における石炭生産量の56.3%を中国とインドの2カ国が占めています。石炭は同じ化石燃料に分類されている石油や天然ガスよりも二酸化炭素排出量が多いです。つまりインド国内における石炭への依存率の高さが、インドで二酸化炭素排出量が多い原因になっています

                                       燃料別の二酸化炭素排出量の例

燃料の種類

排出係数 tC/GJ

原料炭

0.0245

一般炭

0.0247

原油

0.0187

ガソリン

0.0183

ジェット燃料油

0.0183

灯油

0.0185

軽油

0.0187

A重油

0.0189

液化天然ガス(LNG)

0.0135

 

世界の石炭生産量の推移(国別)のグラフ

 

出典:資源エネルギー庁『第2節 一次エネルギーの動向』

出典:環境省『燃料別の二酸化炭素排出量の例』

2. 二酸化炭素排出量が多いインドの政策

インドでは石炭の使用などによる大気汚染が深刻化しています。ここではインドの脱炭素に向けた目標と現在の電源構成割合、脱炭素に向けた取り組みについてご紹介します。

インドの脱炭素に向けた目標

2021年4月22日にバーチャル気候変動サミットが開催され、アメリカは脱炭素に向け具体的な目標を示しましたが、インドと中国は新しい取り組みを提示しませんでした。

出典:BBC NEWS『バイデン氏、気候変動対策の「勝負の10年」サミットでCO2削減の新目標を発表』(2021/4/23)

インドの電源構成割合

2019年度のインドの電源構成割合は、以下の通りです。

石炭73%、再生可能エネルギー19%、ガス5%、原子力3%、石油1%

インドでは石炭に依存していますが、石炭は資源に限りがあることから、10年間に渡り太陽光発電と風力発電の普及を推進してきました。

インドの電源構成(発電量ベース、2010~2019年)

出典:自然エネルギー財団『世界の革新的な脱炭素政策:インド』(2020/9/18)

インドの脱炭素に向けた取り組み

インドはまだカーボンニュートラル宣言をしていませんが、再生可能エネルギーの導入目標を大幅に引き上げる意向を示しています。2018年には2つの目標を公表しています。

  • 2022年までに再生可能エネルギーの導入量を227GWにすること。

  • 2027年までに再生可能エネルギーの導入量を275GWにすること。

2019年9月に開催された国連気候行動サミットにおいて、インドは新たな目標として再生可能エネルギーの発電設備容量を450GWに引き上げることを発表しています。

インドでは政府が再生可能エネルギーの普及を推進していることから、市場の成長余地が大きいとし、国外の企業からも注目を集めています。2020年にはオリックスがインドの再生可能エネルギーの大手であるグリーンコ・エナジー・ホールディングスに出資しています。

出典:自然エネルギー財団『世界の革新的な脱炭素政策:インド』(2020/9/18)

出典:日本経済新聞『仏エネ大手トタル、インドの再生エネ企業に2570億円投資』(2021/1/18)

3. 脱炭素実現に関するインドの課題

インドは脱炭素への取り組みとして再生可能エネルギーに重点を置いています。ここでは二酸化炭素排出量が多いインドで起きている環境問題や再生可能エネルギー導入に関してインドが抱える課題についてご紹介します。

二酸化炭素排出が原因で生じたインドの環境問題

インドでは、排出された二酸化炭素による大気汚染で深刻な環境問題が生じています。インドで問題になっているのは、事業活動を通して排出される二酸化炭素だけではありません。ヒンドゥー教の祭典による花火や焼き畑、わら焼き、自動車の排気ガスなども加わり、生命に危機を及ぼすレベルにまで大気汚染が深刻化しています。有害物質であるPM2.5の濃度は中国の北京の約7倍に達していると報告されています

出典:BBC NEWS『インド・デリー大気汚染、「耐えられないレベル」外出自粛求める』(2019/11/4)

国内の電気事情

石炭火力発電に代わる電源として期待されているのが、安価で環境に優しい再生可能エネルギーです。インドは再生可能エネルギー政策の中心にオークション制度を置き、再生可能エネルギーの普及を推進していますが、いくつもの課題を抱えています。

課題の1つが国内の電気事情です。電力メーターの不足や盗電、メーター値改ざん不正などに起因する電気料金の徴収率の低さにより、配電会社の財務状況が悪化しており、安価な電力を提供するのが困難な状況にあります。

出典:自然エネルギー財団『世界の革新的な脱炭素政策:インド』(2020/9/18)

4. まとめ:インドの現状を知り、企業は脱炭素に取り組もう!

二酸化炭素排出量が多いインドでは、脱炭素に向け再生可能エネルギーに重点を置いていますが、アメリカや日本のようにはっきりとした取り組みを示していません。様々な要因から二酸化炭素排出量が多くなっているインドでは、死亡者が多数出るなど深刻な環境被害が起きています。インドのような深刻な状況に陥らないために、企業は脱炭素へ取り組むようにしましょう。

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