CCUSとは?CO2の有効活用にチャレンジする企業たち!

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現在日本で「CCUS」という新技術に取り組んでいる企業があることを知っていますか?日本は地球温暖化対策として2050年カーボンニュートラルの達成を目標としており、「CO2の排出削減」に取り組んでいます。一方CCUSは、「CO2排出量の削減ではなく、排出されたCO2を有効活用しよう」という取り組みで、様々な分野の企業が取り組み、研究・開発も進んでいます。

企業でもR100などCO2の排出削減への取り組みが求められておりますが、削減とは違う視点での環境対策としてこのCCUSを理解しておきましょう。

目次

  1. カーボンニュートラルに向けた新技術!CCUSとは?

  2. CCUSを導入することのメリット

  3. 官民一体で取り組む!CCUSへチャレンジする企業

  4. 【まとめ】日本はCO2の再利用技術<CCUS>へ積極的に取り組んでいる!

1. カーボンニュートラルに向けた新技術!CCUSとは?

CCUSとは

現在、地球温暖化の原因としてCO2の排出が問題とされ、排出の削減に向けた再生可能エネルギーへの転換の動きが加速しています。しかし、現状では天候に左右されず、安定的に発電できる化石燃料による火力発電が主力となっています。この排出されるCO2に対しての新しいアプローチが「CCUS(Carbondioxide Capture Utilization Storage)」となります。これは、排出されたCO2を分離・貯蔵し、利用するというものです。

※CO2の「回収・貯留」する技術を「CCS(Carbondioxide Capture and Storage)」と呼びます。

アメリカではCO2を古い油田に注入し、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するといった開発が行われ、石油の増産にもつながる新しいビジネスとして注目されています。

また、CO2を利用し、石油代替燃料や化学原料などの有価物を生産する技術の研究・開発も進められています。

CO2を①分離・回収→②有効活用→③圧入・貯蔵留 の流れを表した図

出典:環境省『環境省CCUS事業の概要』(平成31年3月5日)

CCSUにむけた日本の現状は?

日本では、2012年から北海道・苫小牧で大規模な実証実験が行われており、2016年からは港内の海底の下にCO2を高い圧力で貯留する作業が開始されています。これは海底深く掘った井戸に年間10万トン規模のCO2を3年間埋め込む計画となり、その後CO2が漏れ出していないかモニタリングが続けられています。

出典:苫小牧市『企業立地ガイド』

また、2015年に日米共同でCCSの研究開発を促進するための協力文書が交わされ、2017年・10月にはこの協力範囲をCCUSに広げることで合意されています。

出典:資源エネルギー庁『知っておきたいエネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」』(2017.11.14)

2. CCUSを導入することのメリット

ではCCUSの導入のメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。

  • CO2の大幅な削減が可能

CCUSによってCO2の大気中への放出を、大幅に削減するできます。例として、約27万世帯分の電力供給ができる出力80万kwの石炭火力発電所にCCUSを導入すると、年間約340万トンのCO2の大気放出を防ぐことが可能になります。またCCUSは、火力発電所の他、製鉄、セメント生産、ゴミの焼却所等、CO2を大量に出すあらゆる分野に利用できます。

出典:環境省『CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み』(2020.2)(p2)

  • 炭素の循環利用が可能に

CCUSでは、再生可能エネルギー由来の水素とCO2を反応させることにより、メタンなどの化学原料をつくりだすことができます。メタンは天然ガスの代替えとしてエネルギー原料として利用できるため、これによりメタンの循環利用が可能となります。

  • 再生可能エネルギーの普及を加速

再生可能エネルギーは出力の安定が難しく、電気を貯蔵する仕組みが必要になります。その一つは水素を製造し、貯蔵するというものですがまだまだインフラが整っていません。CCUSで作られたメタンなら既存の都市ガス用インフラが利用でき、より早く再生可能エネルギーの普及につながります。

出典:環境省『CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み』(2020.2)

3. 官民一体で取り組む!CCUSへチャレンジする企業

この政府のエネルギー政策に対して、企業も開発に協力し、取り組みが始まっています。ここでは政府のCCUS取り組みへの目標とその研究・開発に取り組んでいる企業についてご紹介します。

低コストなCO2分離回収技術の確立

CCUSの促進のためには、CO2の回収コストを削減する必要があります。政府は2050年までにCO2の分離回収コストを1000円/t-CO2を目標としています。このため、燃焼後回収用の固体吸収材や燃焼前回収用の分離膜を用いた「分離回収技術の研究」が進められています。

これには〈RITE・川崎重工業・大崎クールジェン・日立製作所〉といった企業が参加しています。

年代とCO2分離回収コストの関係を表した図

出典:経済産業省『CCUS/カーボンリサイクル関係の技術動向』(令和2年7月)(p3)

バイオ燃料・合成燃料の製造や、使用に係わる技術開発

世界では、ガソリン等を燃料とする内燃機関自動車は2040年で8割を超えると見込まれています。これを踏まえ、排出されたCO2から、液体の合成燃料を製造する技術開発をすすめています。2030年頃に実証レベルの製造技術の確立、2040年頃には製造コストを既存のバイオエタノール(200円/L)と同等またはそれ以下の水準にすることが目標です。

こちらは〈日立造船・積水化学工業・東芝〉といった企業が参加しています

液体の合成燃料を製造する技術開発の開発目標を表した図

出典:経済産業省『CCUS/カーボンリサイクル関係の技術動向』(令和2年7月)(p8)

人工光合成を用いたプラスチック製造

産業プロセスによる排ガス等から分離回収したCO2と、人工光合成により得られる水素等を反応させて、基幹化学品を製造する技術の研究が進められています。2030年までに技術を確立し、2050年には化石燃料由来基幹化学品と同等のコストまでにすることが目標となります。

こちらは〈三井化学・TOTO・三菱ケミカル・東芝〉が東京大学、東京理科大学、名古屋大学等と共同で研究・開発を進めています。

人工光合成を用いたプラスチック製造のイメージ図

出典:経済産業省『CCUS/カーボンリサイクル関係の技術動向』(令和2年7月)(p10)

機能性化学品製造の実現

現在、材料に特殊な機能をもたせた機能性化学品の製造法として主流となっているのは、1つの反応ごとに原料を入れて、その都度加熱・冷却して反応物を得る工程を独立して行う「バッチ法」と呼ばれるものです。しかしこのやり方にはCO2排出量や排気量排出量において改善すべき課題が残っています。そこで、「フロー法」と呼ばれる原料を連続して供給し、かつ複数の反応を連続させて一連の工程で行う技術を確立することにより、大幅な省エネルギー化とコスト低減を目指します。

2030年までにCO2を原料とした機能性化学品の製造プロセスの構築、既存同等コストが目標となっています。こちらは〈IHIプラントエンジニアリング・東京理化器械株式会社・東和薬品株式会社・三菱ガス化学・三菱重工エンジニアリング〉といった企業が取り組んでいます。

低コストメタネーション技術の開発

低コストメタネーション(CO2と水素からの燃料製造)において、2050年までに既存のメタンと同等のコストにするための取り組みがおこなわれています。回収したCO2を利用して燃料に使用可能なメタンを低コストで製造する技術を確立するために、劣化の少ない触媒の開発、製造システムの最適化を図り、2030年以降の本格的な実用化を目指しています。

〈INPEX・日立造船〉などが取り組んでおり、将来のビジネス展開まで見据えたサプライチェーンを意識した体制の構築を行なっています。

左:メタン利用イメージ、右:再エネ由来水素とCO2合成によるメタン製造コスト試算

出典:経済産業省『CCUS/カーボンリサイクル関係の技術動向』(令和2年7月)(p17)

DAC技術の追求

DAC(Direct Air Capture)とは大気中に排出されたCO2の分離・回収やCO2の利用、固定化する技術のことであり、この技術のさらなる開発が進められています。新たな分離膜、化学吸収材等の開発や、得られるCO2の利用手法のシステム化を2050年までに確立することが目標です。

〈川崎重工業〉が2014年より取り組んでいます。

DAC技術のイメージ図

出典:経済産業省『CCUS/カーボンリサイクル関係の技術動向』(令和2年7月)(p23)

4.【まとめ】日本はCO2の再利用技術<CCUS>へ積極的に取り組んでいる!

  • CCUSとは排出されたCO2を分離・回収・貯留し、利用する技術でアメリカでは原油の増産技術に利用されたり、石油代替燃料や、化学原料などの有価物を生産する技術の研究・開発も進められている。

  • 日本では、2012年から北海道・苫小牧で大規模な実証実験が行われており、2015年に日米共同での協力文書が交わされたことによりCCSの研究開発の促進が進んでいる。

  • CCUSでは技術の低コスト化や、利用先などの課題があり、政府や企業が問題の解決に向けて様々な分野で研究・開発が進められている。

地球温暖化対策として重要なCO2排出問題について、削減とは違う観点から取り組む技術としてUUCSは非常に期待される分野で、2050年のカーボンニュートラル達成には欠かせない技術でもあります。まだまだこれからの技術ですが、今のうちに情報を得ておくことは企業としても必要なことでしょう。

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