循環型社会への移行を加速!マテリアルリサイクルとは?

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世界は今、急速にサーキュラーエコノミー(循環型社会)へと移行しています。環境・経済・社会の全ての面において、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄のリニアエコノミー(直線型経済)の限界がやってきたのです。

このサーキュラーエコノミーでは、資源のリサイクルは非常に重要です。この資源のリサイクルについて、経済的な視点から基本的な知識を確認しておきましょう。

目次

  1. マテリアルリサイクルとは?

  2. 海洋プラスチック問題

  3. サーキュラーエコノミーへの移行

  4. まとめ:企業にとってリサイクルへの対応は必須

1. マテリアルリサイクルとは?

我が国における廃プラスチックの処理状況の推移

出典:経済産業省『循環経済ビジョン骨子案 データ集 』p.16(2019年3月)

サーキュラーエコノミーに対応したリサイクル(再資源化)の方法には大きく分けてマテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル・サーマルリサイクルの3種類があります。プラスチックの処理状況を見ると、2000年には50%以上が焼却または埋立処分されていましたが、2017年には85%以上がリサイクル利用されています。

マテリアルリサイクル

マルチリサイクルの流れ

出典:経済産業省『循環経済ビジョン骨子案 データ集 』p.36(2019年3月)

マテリアルリサイクルとは、プラスチックなどの廃棄物を、同様な用途の原料として再生利用することです。物質還元リサイクルとも呼ばれます。

マテリアルリサイクルをさらに細分化すると、同一製品の原料として使用する場合は「レベルマテリアルリサイクル」、同一製品への原料には品質が満たない場合に、一段格下げされた分野の製品原料として使用する「ダウンマテリアルリサイクル」、または「カスケードマテリアルリサイクル」に区別されます。

出典:経済産業省『平成 16 年度 廃プラスチックリサイクル・システム調査委員会報告書 建築現場における熱可塑性プラスチックの リサイクル・システム調査研究 5.リサイクルシステム』p.170

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとはプラスチックなどの廃棄物を化学的に分解することでガス化・油化などを経て、製品原料として再利用することです。元の製品であるかは問われません。

プラスチックのケミカルリサイクルの技術は主に次の5つがあります。

  1. 高炉原料化技術
    高炉でコークスの代わりに還元剤として利用します。コークスと違ってプラスチックの主要成分は炭素と水素なので、銑鉄生産時のCO2排出量が少なくなります。

  2. コークス炉化学原料化技術
    廃プラスチックを圧力下で高温熱分解し、高炉の還元剤となるコークス、化学原料となる炭化水素油、発電などに利用されるコークス炉ガスを得ます。

  3. ガス化技術
    酸素の量を制限して加熱することにより、プラスチックの大部分が炭化水素・一酸化炭素・水素になり、メタノール・アンモニア・酢酸など化学工業の原料に利用します。

  4. 油化技術
    約400度下で改質触媒を用いてプラスチックを完全に熱分解し、炭化水素油を得ます。一般廃棄プラスチックの処理には、いかに塩素分を除去するかか重要です。

  5. 原料・モノマー化技術
    廃プラスチック製品を化学的に分解し、原料や※モノマーに戻し、再度プラスチック製品に活用します。
    ※モノマー:ポリマーを構成する低分子の単位分子で、単位体とも呼ばれる。モノマーが多数結合した高分子がポリマー。

出典:経済産業省『3R政策 第3章 国内のケミカルリサイクルの技術・市場動向』p.7(2005年3月)

サーマルリサイクル

サーマルリサイクルとは、プラスチックなどの廃棄物を主原料または助燃材として利用することにより、その燃焼処理により得られる熱量を原料等の製造工程などに有効利用することです。熱源利用リサイクルとも呼ばれます。

埋め立て処理などの最終処分の前工程として容積を縮減するための焼却処理とは同一視されません。日本では、一般廃棄物焼却施設における発電量は2014年(H26年)以降、増加傾向にあり、発電効率も向上しています。

出典:経済産業省『平成 16 年度 廃プラスチックリサイクル・システム調査委員会報告書 建築現場における熱可塑性プラスチックの リサイクル・システム調査研究 5.リサイクルシステム』p.171

我が国における一般的廃棄物燃却施設の発電状況の推移のグラフ

出典:経済産業省『循環経済ビジョン骨子案 データ集 』p.16(2019年3月)

2. 海洋プラスチック問題

現代の日常生活ではプラスチックがさまざまな形で利用されています。しかし、利用後のプラスチックが適切に回収・廃棄されず、海洋に流出し世界的な問題になっています。マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの技術の向上・社会実装により、廃プラスチックが有用な資源として、海に流出する前に適切に回収されるようになることが期待できます。

海洋プラスチック問題の現状

海洋プラスチックによる海洋汚染は、世界規模で広がっています。想定される被害として、①海洋生物などの生態系への影響②航行における障害③観光への影響④沿岸地域居住者への影響が挙げられます。

また、陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量(2010年推計)を人口密度や経済状況などから国別に推計した結果、1〜4位が東・東南アジアという結果が出ました。2016年の世界経済フォーラムの報告書によると、このまま海洋にプラスチックが流出し続けると、2050年までに海洋中に存在するプラスチックの量が魚の量を重量ベースで超えることが予測されています。 国別の陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量ランキング

出典:環境省『海洋プラスチック問題について』p.3(2018年7月)

CLOMAとは

海洋プラスチックごみ問題は、地球規模で深刻化しており、解決に向けて世界全体で取り組むことが必要です。CLOMAは、この海洋プラスチックごみ問題の解決のため、業種を超えた幅広い関係者の連携とイノベーションの加速のためのプラットホームとして設立されました。
※CLOMAはJapan Clean Ocean Material Allaianceの略称

出典:クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス『CLOMAについて』

きれいな海に魚が泳ぐ

出典:経済産業省 Meti Journal『海洋プラスチック問題 オールジャパンで挑む』(2020年6月)

CLOMAの取り組み

資源に乏しく、国土も狭い日本はこれまでも資源の有効活用を積極的に推進してきました。しかし、海洋プラスチックごみ問題はひとつの国、ひとつの企業の取り組みだけでは克服できない世界的な課題です。

CLOMAは、用途に応じたプラスチックに代わる最適な代替素材を容易に選択するための技術情報の共有や、新たな技術に関心のある流通や商品、消費財など利用業者とのマッチングなどに取り組んでいます。CLOMAの全体目標は2030年時点で容器包装リサイクル率60%、2050年にはプラスチック製品のリサイクル率100%です。

出典:経済産業省『METI Journal 海洋プラスチック問題オールジャパンで挑む』(2020年6月)

CLOMAの主な活動内容

出典:経済産業省『海洋プラスチックごみ対策に係る取組について』p.2(2019年2月)

CLOMAの主な5つの活動

2020年5月にCLOMAが今後の方針としてまとめた「CLOMAアクションプラン」では、5つの活動分野別に中長期的な達成目標と具体的な方策、技術検討課題、実証テストなどの計画が打ち出されました。CLOMAの分野別の活動は次の5つです。

  1. プラスチック使用量の削減

  2. マテリアルリサイクル率の向上

  3. ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装

  4. 生分解性プラスチックの開発・利用

  5. 紙・セルロース素材の開発・利用

出典:経済産業省『METI Journal 海洋プラスチック問題オールジャパンで挑む』(2020年6月)

3. サーキュラーエコノミーへの移行

サーキュラーエコノミーへの移行の流れ

大量生産・大量消費・大量廃棄のリニアエコノミー(線型経済)では、健全な物質の循環を乱し、気候変動問題・天然資源の枯渇・生物多様性の破壊など、様々な環境問題を招きました。世界では資源・エネルギー・食糧の需要が増大しており、廃棄物発生量の増加が問題となっています。

サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えながらストックを有効活用し、資源・製品の価値を最大化、資源消費・廃棄物発生を最小化して、長期的にも持続可能な経済活動を指します。サーキュラーエコノミーへの移行により、企業には事業活動の持続可能性を高め、コロナ禍からの復興における競争力の向上と、新たなビジネスの機会の獲得が期待されています。

出典:環境省『環境白書 令和3年版 循環経済(サーキュラーエコノミー)に向けて』(2021年6月)

資源循環の流れ

出典:経済産業省『資源循環政策の現状と課題』p.1(2018年7月)

サーキュラーエコノミーへの移行が求められる背景

日本はサーキュラーエコノミーへといち早く移行することにより、世界全体の持続可能な発展に貢献すると同時に、資源への依存度を下げ、市場の変動にも耐性のある産業・経済として、国際競争力を強化することを目指しています。

出典:経済産業省『循環経済ビジョン 2020』p.3(2020年5月)

ESG投資が国内外で年々拡大しており、今後も循環ビジネスの市場規模拡大が予想されます。日本は廃棄物のリサイクルにおいて高度な技術や政策を有しており、これを海外に輸出することにより、リサイクル分野の市場を国際的にも押さえることが期待されています。
※ESG投資:環境への対応・社会貢献・企業自らの統治体制を重視して行う投資

出典:経済産業省『海外展開戦略(リサイクル)』p.1,p.2(2018年6月)

天然資源等投入量とGDPの関係

出典:経済産業省『資源循環政策の現状と課題』p.8(2018年7月)

国際資源循環の推進

日本では人口減少により廃棄物の発生量も減少傾向にありますが、世界では廃棄物の発生量は増加しています。日本では今後も廃棄物の発生量は減少が見込まれており、リサイクル分野では海外の需要の獲得が重要です。

世界的な資源需要の増加、鉱山開発コストの上昇が予想され、海外からの資源依存度が高い日本は、産業競争力の強化のためにも、リサイクルによる都市鉱山からの金属資源の確保が必要です。また、新興国ではリサイクル制度の整備が不十分であったり不適切な廃棄物処理による環境汚染や健康被害、資源損失が発生していることから、環境保全のためにも日本のリサイクル技術や制度を輸出し、国際資源循環の推進に貢献することが求められています。

出典:経済産業省『資源循環政策の現状と課題』p.5(2018年7月)

世界の廃棄物量推移

出典:環境省『平成26年版 環境白書』p.110(2014年6月)

4. まとめ:企業にとってリサイクルへの対応は必須

自然には分解が困難な人工的素材は、リサイクル技術により人工的に循環させることができます。また、製造の段階でリサイクルへの配慮を行うことにより、製品の使用後より効率的にリサイクル利用できるようになります。

特にマテリアルリサイクルはサーキュラーエコノミーへの移行、脱炭素社会の実現において、非常に重要な位置を担います。これからの製品開発は、リサイクルできることが前提となることも予想できます。

中小企業にも環境への対応が求められる社会になりました。自社の事業・活動をよりリサイクルに適応させることで、環境への意識が高まる市場での生き残り、ESG投資からの資金確保、長期的に持続可能な企業の経営へとつなげましょう。

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