再生可能エネルギー課題解決の鍵を握る蓄電池とは?
- 2022年06月15日
- 発電・エネルギー
日本における再生可能エネルギーが抱える課題を解決する鍵を握る装置として期待されているのが蓄電池です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーにより発電した電力を貯めることができるため、企業は蓄電池を活用することで、省エネルギーや災害時に電力を確保できます。
この記事では、蓄電池の導入をご検討中の法人の皆さまが知っておくべき、蓄電池の基礎知識や日本での普及状況などについてご紹介します。
目次
-
なぜ再生可能エネルギーは普及しない?普及を阻む3つの課題
-
再生可能エネルギー課題解決の鍵を握る蓄電池とは?
-
蓄電池に期待される将来性
-
まとめ:蓄電池に関する理解を深め、蓄電池導入を検討しよう!
1. なぜ再生可能エネルギーは普及しない?普及を阻む3つの課題
2050年度までの脱炭素化を目標に掲げる日本は、再生可能エネルギーを最大限導入する方針を示していますが、2030年度に設定している目標はまだ達成されていません。なぜ再生可能エネルギーが思うように普及しないのか、普及を阻んでいる3つの課題をご紹介します。
電力系統による制約
日本において再生可能エネルギーの普及を阻んでいる課題の1つに、電力系統による制約があります。電力系統とは、需要家の受電設備に電力を送るためのシステムですが、送ることができる容量に制限があります。このため容量に空きがないとの理由から、再生可能エネルギーにより発電した電力を送れないという事例が発生します。容量を増やすためには高額な費用負担が生じるため、再生可能エネルギーの普及を進めるためには、電力系統による制約の緩和または解消が求められます。
出典:資源エネルギー庁『再エネをもっと増やすため、「系統」へのつなぎ方を変える』(2021/3/25)
コストが高い
海外と比較すると、発電コストや設備を建設・設置するための初期投資が高いことも、日本で再生可能エネルギーの普及を阻んでいる課題の1つです。発電コスト検証ワーキンググループは、2030年に新たな発電設備を更地に建設し運転する場合のkWhあたりのコスト試算を以下のように示しています。
陸上風力:9円台後半〜17円台前半
洋上風力:26円台前半
事業用太陽光:8円台前半〜11円台後半
小水力:25円台前半
中水力:10円台後半
地熱:16円台後半
混焼バイオマス:14円台前半〜22円台後半
専焼バイオマス:29円台後半
出典:資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020年9月)(p.5)
出典:経済産業省『発電コスト検証に関するこれまでの議論について』(2021/7/12)(p.4)
再エネ発電量のコントロールが困難
日本における再生可能エネルギーは、太陽光発電に偏っています。太陽光発電や風力発電など自然に影響を受ける再生可能エネルギーを主電源にするためには、不安定な発電量をコントロールする調整役が必要です。
出典:資源エネルギー庁『再エネの主力電源化を実現するために』(2018/5/15)
2. 再生可能エネルギー課題解決の鍵を握る蓄電池とは?
日本における再生可能エネルギーの普及を阻んでいる課題の1つである発電量のコントロールを解決する装置として期待を集めているのが蓄電池です。ここでは蓄電池の役割など基本的な知識や、実際の活用事例についてご紹介します。
蓄電池とは?
蓄電池とは、1回限りで充電することで繰り返し利用できる電池のことです。再生可能エネルギーが抱える課題の1つである「発電量のコントロール」を解決できる装置として大きく期待されています。太陽光や風力により集めた電力を足りない時に補い、過剰に余った時は貯めておくことができます。
蓄電池は発電量のコントロールの他にも様々な役割を持っています。蓄電池に再生可能エネルギーで発電した電力を貯めておけば、発電が困難な夜間や災害時に使用できますし、次世代自動車の電力としても使用することもできます。
出典:資源エネルギー庁『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~「蓄電池」は次世代エネルギーシステムの鍵』(2017/10/17)
蓄電池は災害時の水と電力の確保につながる
熊本県玉名市にある社会福祉法人 熊本厚生事業福祉会は、熊本大地震の経験を踏まえて太陽光発電と蓄電池を導入しています。2回路ある蓄電池のうち1回路は、災害時の井戸ポンプ専用とし、災害時の水不足に備えています。太陽光発電と蓄電池導入の前後を比較すると、CO2排出量は18.2t-CO2。CO2の削減、エネルギーコストは53万円の削減につながっています。
このように企業も太陽光発電や蓄電池を導入することで、CO2排出量やエネルギーコストを削減し、災害時にも備えることができます。
出典:環境省『環境省 エネルギー対策 特別会計補助事業わかりやすい活用事例集(抜粋版)』(2020年3月)(p.13.14)
3. 蓄電池に期待される将来性
再生可能エネルギー普及拡大に貢献できる装置として注目を集めている蓄電池ですが、日本の蓄電池の普及状況はどのような状況にあるのでしょうか。ここでは世界から見た日本の蓄電池普及状況と、蓄電池普及を推進するための国の補助金事業についてご紹介します。
世界から見た日本の蓄電池普及状況
日本における蓄電池市場はxEV用の市場が全体の半分以上を占めています。2019年のxEV用蓄電池の見込みは2.8兆円で、民生用は1.7兆円、定置用は1.4兆円です。
日本における蓄電システム累積導入実績は、世界的に見ると進んでいる状況にあり、2019年度の累積導入実績は9.6GWhです。しかし内訳を見ると再エネ併設・系統用で使用されているのは1.2GWhで、家庭用の約半分と少ないです。
出典:株式会社三菱総合研究所『蓄電システムをめぐる現状認識』(2020/11/19)(p.13.14)
蓄電池普及を推進!国の補助金制度
蓄電池の普及を推進させるために、日本が実施した補助金制度についてご紹介します。
[1]定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費補助金
定置用リチウムイオン蓄電池の導入を促進させることを目的に、事業所と家庭を対象に補助金制度が2011年度、2013〜2014年度に実施されました。
[2]需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業費補助金
2017〜2020年度に実施された国の補助金事業で、バーチャルパワープラント構築に向けた実証事業や電動車充電のピークシフトを行う実証事業の事業者を対象に補助金が交付されました。
出典:資源エネルギー庁『令和2年度「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」に係る補助事業者(執行団体)の公募について』(2020/1/29)
[3]災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金
2019年に実施された国の補助金事業で、災害時に備えて家庭用蓄電システムを導入する家庭を対象に補助金が交付されました。
出典:資源エネルギー庁『災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進』
4. まとめ:蓄電池に関する理解を深め、蓄電池導入を検討しよう!
ここまで蓄電池に関する基本的な知識や、日本における蓄電池の普及状況などについてご紹介しました。蓄電池は再生可能エネルギーの電力安定に役立つ他に、夜間や災害時、電気自動車の充電に利用できるなど、企業にとって多くのメリットがあります。蓄電池に関する理解を深め、蓄電池の導入を検討されてみるのはいかがでしょうか。