脱炭素実現の鍵! ネガティブエミッションについて分かりやすく
- 2023年08月18日
- CO2削減
カーボンニュートラルを実現させるためには、ネガティブエミッション技術などの新しい技術開発も重要と考えられています。この記事では、ネガティブエミッションに関心のある法人のみなさんが知っておくべき、ネガティブエミッションの概念や代表的な種類、世界での取り組み状況や課題など基本的な知識についてご紹介します。
目次
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大気中のCO2を吸収!ネガティブエミッションの概念など基礎知識
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ネガティブエミッションにはどんな種類がある?
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ネガティブエミッションの世界の取組状況と課題
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まとめ:ネガティブエミッションについての理解を深め、取り組みを検討しよう!
1. 大気中のCO2を吸収!ネガティブエミッションの概念など基礎知識
カーボンニュートラルを実現させるための手法の1つであるネガティブエミッションとはどのような技術なのでしょうか。ここでは、ネガティブエミッションの概要や重要視される背景など、ネガティブエミッションに関する基礎知識をご紹介します。
ネガティブエミッションとは?
ネガティブエミッションは、大気中に蓄積している温室効果ガスを回収・除去する技術の総称で、正味ゼロ排出(ネットゼロ)を実現させるための効果的な手法の1つであると考えられています。正味ゼロ排出とは、どうしても削減できない温室効果ガスを吸収や除去により差し引いてゼロにするという考え方で、いわゆるカーボンニュートラルを指す環境用語です。
出典:グリーンイノベーション戦略推進会議『脱炭素社会に向けた対策の考え方』(2020/11/11)(p.4)
ネガティブエミッションが重要視される理由
2050年までのカーボンニュートラルを宣言している日本は、実現させるために再生可能エネルギーを最大限に導入する方針を固めています。しかし太陽光や風力は天候に左右されるというデメリットがあるため、電力を安定させるために火力発電は欠かせません。このように化石燃料の使用を完全にゼロにするのは現実的ではないことから、排出されたCO2を回収・除去するネガティブエミッションが重要視されています。
出典:資源エネルギー庁『第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組』
出典:グリーンイノベーション戦略推進会議『脱炭素社会に向けた対策の考え方』(2020/11/11)(p.1)
2. ネガティブエミッションにはどんな種類がある?
ネガティブエミッション技術には様々な種類があります。代表的なネガティブエミッション技術の種類についてご紹介します。
(1)CO2を回収・貯留するCCS
CCSはCarbon dioxide Capture(CO2の回収)、Storage(貯留)の略語で、工場などから排出されたCO2を大気中から回収し、地中深くに貯留する技術です。
バイオマス発電所から排出されたCO2を回収し貯留する技術はBECCSと呼ばれています。BECCSはbioenergy with carbon dioxide capture and storageの略語です。
出典:資源エネルギー庁『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」』(2017/11/14)
出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)
(2)CO2を再利用または貯留するCCUS
CCUSはCarbon dioxide Capture(CO2の回収)、Utilization(有効利用)、Storage(貯留)の略語です。工場などから排出されるCO2を回収し、資源として再利用するまたは地層の中に貯留する技術を指す言葉です。たとえば、再生可能エネルギー由来の水素とCO2を反応することでメタンを生成し、化学製品の資源として活用できます。
出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み』(p.2.3)
(3)CO2を大気から直接回収するDAC
DACはDirect Air Captureの略語で、CO2を大気中から直接回収する技術を指す言葉です。DACは日本で開発が進んでいるネガティブエミッション技術であることから、経済産業省はイノベーションの加速化を目的として「カーボンリサイクル技術ロードマップ」に新たに加えています。
出典:経済産業省『「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を改訂しました』(2021/7/26)
3. ネガティブエミッションの世界の普及状況と課題
ネガティブエミッションは、世界でどのような技術として捉えられているのでしょうか。ここでは、ネガティブエミッションの世界における普及状況や普及を阻んでいる課題についてご紹介します。
ネガティブエミッションの世界の取組状況
海外では大企業を中心に、ネガティブエミッション技術の取り組みが加速しています。マイクロソフト社は2030年までにカーボンネガティブの達成を目標に掲げており、ネガティブエミッションなどの技術開発に10億ドルの基金を設置することを発表しています。
ライバル社であるアマゾンが、2040年までにカーボンニュートラルの実現を目標にしていることが背景にあると見られています。
出典:Microsoft『Microsoft will be carbon negative by 2030』(2020/1/16)
ネガティブエミッション技術が抱える課題
バイオマスエネルギーとCCSを組み合わせたBECCSは、IPCCの第5次評価報告書
において主要な選択肢になる技術であると想定されています。しかしながら、バイオマス発電は社会経済的・技術的な不確実性が大きく、大規模にBECCSを実施した場合に、その影響を土地利用や生態系サービスの観点からどのように評価するかが課題とされています。
出典:国立環境研究所『ネガティブエミッション技術による気候変動リスク管理の課題』
出典:国立環境研究所『ネガティブ・エミッションの達成にむけた全球炭素管理』(2015/10/30)
4. まとめ:ネガティブエミッションについての理解を深め、取り組みを検討しよう!
ネガティブエミッションは、脱炭素社会を実現させるための鍵を握る新しい技術です。ネガティブエミッション技術の中でも2℃目標を達成する上で有力な選択肢になると期待されているのがBECCS技術ですが、バイオマス発電の不確実性が今後の課題とされています。ネガティブエミッションへの理解を深め、脱炭素実現に必要な取り組みについての検討につなげていただければと思います。