非化石証書とは何?生まれた背景や役割とは?
- 2022年06月15日
- CO2削減
非化石証書が生まれた背景には、地球規模で行われている環境保護への取り組みがあります。京都議定書やパリ宣言など、世界各国が共同歩調を取り、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量削減を図ることになり、その結果多くの企業が温室効果ガスを減らす取り組みを求められました。
日本も、この枠組みの中に参加しているので、官民がそれぞれの立場で地球環境の保護に取り組む必要が迫られています。そこで考えられたのが、温室効果ガスの排出量を抑制するため、企業に対してクリーンエネルギーの導入を推進する「非化石証書」制度でした。
具体的な制度の仕組みは、この後の章で解説します。
目次
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非化石証書は企業の二酸化炭素排出量抑制のためにある
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非化石証書の種類と違い
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非化石証書を電力小売り事業者が購入する理由
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まとめ:非化石証書によって電気料金の値下げにつなげよう!
1. 非化石証書は企業の二酸化炭素排出量抑制のためにある
非化石証書とは、その名の通り「化石燃料」ではない「非化石燃料」を使うことで、温室効果ガスの削減目標に貢献していることを証明するものです。
日本では、非化石証書が電力会社を中心に売買されています。
電力会社は、石油や石炭などの化石燃料で発電することがありますが、当然それでは二酸化炭素などの排出を抑制することはできません。ですが、非化石証書を購入することで、クリーンエネルギーの普及や運営に必要な経費を負担し、自身が排出する化石燃料分の二酸化炭素排出と相殺することができるのです。
出典:日刊工業新聞・ニュースイッチ『再生エネの調達環境を変える「非化石証書」とは?』(2018年4月)
二酸化炭素を排出しない電源であることの証明書
非化石証書とは、二酸化炭素など温室効果ガスを排出しない電力・電源であることを証明するものです。
具体的には、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電などがあります。これらの発電方法は、化石燃料を一切使用しないことで、二酸化炭素を排出しないことが認められており、それに対する価値が非化石証書として価値を付与されています。
証書は電力会社が購入する
非化石証書は、2018年から売買する制度が生まれました。実際に売買するのは、小売電気事業者や発電事業者であり、電気を売買する会員制の日本卸電力取引所(JEPX)の中にある「非化石価値取引市場」で実際の売買が行われています。非化石証書は「1Kwhあたり○○円」で売買されるので、電力会社は自分が欲しい電力分の非化石証書を購入します。
ちなみに、非化石証書の売却益はクリーンエネルギーへの投資や運用に充てられます。つまり、電力会社は「化石燃料を使う分、クリーンエネルギーへの資金を提供するよ」という関係性になっているのです。
出典:日刊工業新聞・ニュースイッチ『証書にブロックチェーン…。再生エネの調達が変わり始めた!』(2018年6月)
電力小売り事業者がクリーンエネルギー使用をアピールできる
例えば食品会社が、自社製品に国産大豆を1%でも使っていれば「国産大豆使用」と自社製品をアピールできる、これが現在の制度です。この食品会社の例と同様に、非化石証書を購入していれば、その購入割合分を「○○電力の発電量のうち20%はクリーンエネルギー」とアピールできます。
実際、環境への配慮を会社選択の要素にする人も増えているので、これからも同様のアピールが多くなるでしょう。
2. 非化石証書の種類と違い
現在日本国内で流通している非化石証書は、3種類あります。種類別の違いを、詳しく解説します。
出典:資源エネルギー庁『非化石価値取引市場について』(2018年11月)
(1)FIT非化石証書
再生可能エネルギーのうち、FIT制度(固定価格買取制度)を通じて、買い取られた電気の非化石価値を証書にしたものです。
2011年に制度化されたこの制度では、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間買い取ることになっています。さらに、その原資として私たち市民も電気料金から再生エネルギー賦課金を徴収されています。
(2)非FIT化石証書
(1)に挙げた電気でない、大型水力発電などの再生可能エネルギーの非化石価値を証書にしたものです。
(3)非FIT非化石証書
(1)に挙げた電気ではない、原子力発電などの非化石価値を証書にしたものです。
3. 非化石証書を電力小売り事業者が購入する理由
非化石証書を電力会社が購入するのは、クリーンエネルギーを使用していることをアピールする意味や、化石燃料を使用することで生じる二酸化炭素排出を、非化石証書の価値相当分で相殺する意味があります。
また、地球環境への保護に取り組んでいる先進的な企業、というアピールにも活用できるので、大手電力会社のほぼすべてで非化石証書を購入しています。
(1)化石電源で発生する二酸化炭素排出量を相殺できる
例えば、供給する電気の100%を化石燃料で作っている電力会社があったとしましょう。この会社が、供給電力量の50%に相当する非化石証書を購入すれば、売っている電力のうち50%はクリーンエネルギーとみなされます。
もし、100%相当分の非化石証書を購入すれば、お見込みのとおり「うちの電力は100%クリーンエネルギーです!」とPRすることもできます。
(2)電気だけでは二酸化炭素排出量を抑制できない
実際、日本国内の電力の構成を見てみると、まだまだFIT電気だけでは国内の電力需要をさばききれないのが実情です。
出典:資源エネルギー庁「主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較」
資源エネルギー庁がまとめた、2019年の日本国内の電力構成を見ると、天然ガスが全体の37.1%を占めてトップ、その次に石炭が続いて31.9%、石油が第3位で6.8%です。このベスト3だけで70%を超えており、化石燃料に頼らないと日本国内で必要な電力は確保できないのです。
一方で、風力や水力、太陽光などのクリーンエネルギーで作られた電力の合計は約18%となり、石油発電を上回る実績を残すなど、発電に占める割合を増やしていますが、まだまだ電力需要を発電を満たすには至りません。
そんな実情もあり、国内の生産活動を継続することと引き換えに、温室効果ガスの排出量を抑制することができない、厳しい状況が続いているのです。
(3)再生エネルギー賦課金を減額して電気料金を下げる
非化石証書の販売で生まれた利益は、私たちが支払っている再生エネルギー賦課金と同じように使われます。再生エネルギー賦課金は、クリーンエネルギーの導入や運営に必要な費用として負担しているものですから、非化石証書が売れれば売れるだけ、クリーンエネルギーの運営資金が増えると思ってください。
ですので、今後非化石証書を購入する電力会社が増えていけば、クリーンエネルギーはどんどん広がっていき、私たちに課せられている賦課金も減額されるようになります。
企業としては、非化石証書を買えば買うほど、結果的に顧客に対して電力料金を値下げできるので、経営状況とのバランスを見ながら、価格競争することもできます。
電力会社も「発送電分離」制度になり、電力小売り会社を消費者が選べる時代となっており、今後電気料金の価格競争はさらに続くでしょう。
まとめ:非化石証書によって電気料金の値下げにつなげよう!
企業にとって、非化石証書がもたらすメリットはかなり大きいものです。特に大きなメリットは、電気料金の値下げではないでしょうか。電力会社は、電力需要を考慮すると、化石燃料をどうしても使用しなければならない事情があり、温室効果ガスの排出抑制を、非化石証書を買うことで満たそうとします。
非化石証書が売れれば、その分再生エネルギーへの資金投入が進み、結果的に再生エネルギー賦課金そのものの減額につながります。電気料金から再生エネルギー賦課金分が減額でき、かつ電力小売り会社同士の競争に持ち込めば、多くの企業がコストダウンを図ることができるのです。この仕組みは、大企業だけではなく中小企業であっても同様です。
また、クリーンエネルギーだけを販売する電力小売り会社から電力供給を受ければ、その企業は「100%クリーンエネルギーで生産活動している企業」と、自身のことも環境にやさしい企業としてPRできるのです。
このように、非化石証書は大企業の環境保護への取り組みを促進するだけでなく、多くの企業にとってコストダウンの契機になるともいえるのです。