脱炭素社会到来!伸びる企業はどんな企業?その理由とは?

脱炭素社会とは、地球温暖化の原因となる、二酸化炭素などの温室効果ガスを実質的に排出量ゼロにすることを目指し、それを実現する社会のことをいいます。特に、産業活動の結果排出された二酸化炭素を回収することで、温室効果ガスの排出量をプラスマイナスゼロに近づける取り組みのことを、別名で「カーボンニュートラル」とも呼びます。

今回は、脱炭素社会の到来により飛躍が予想される企業やそのきっかけについて、詳しく解説します。

目次

  1. 脱炭素社会とはどんな社会?企業が伸びるきっかけになる?

  2. 脱炭素社会で伸びる企業の要素とは?

  3. 脱炭素社会で伸びる企業!代表的な分野とは

  4. まとめ:脱炭素社会への対応はビジネスチャンスになる!

1. 脱炭素社会とはどんな社会?企業が伸びるきっかけになる?

脱炭素社会を簡単に言えば、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を抑制するとともに、排出した温室効果ガスを回収したり、排出量相当分の環境対策を講じる取り組みが当たり前になる社会のことを言います。

これらの取り組みを実践する中で、企業の体質も変化し、新たなビジネスチャンスをゲットする企業も現れることが予想されています。

脱炭素社会に向けた具体的な動き

環境問題を地球規模で検討し目標を定めて実践する「京都議定書」や「パリ協定」などの締結により、各国において具体的な温室効果ガスの削減目標が設定されました。

日本では、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減する中期目標が定められました。これを受けて環境省では、2016年に「地球温暖化対策計画」を策定し、産業や家庭、運輸など部門ごとに温室効果ガスの排出量抑制目標を設定しました。

2030年まであと10年を切った今、企業などに対しても具体的な成果を伴う活動が迫られているのです。

出典:資源エネルギー庁『さまざまなエネルギーの低炭素化に向けた取り組み』(2018年2月)

企業の生産活動による環境問題の深刻化

企業では、さまざまな生産活動を行っていますが、当然その過程では温室効果ガスの排出が付きまといます。製造過程において発生するガス、製品を運搬する自動車等の排出するガス、製造に必要な電力を生み出すために発生するガス生産活動を止めることができない実情では、環境の悪化が止まらないジレンマに陥っているのです。

二酸化炭素の排出抑制に成功している企業こそ“伸びる企業”

これからの時代は、温室効果ガスの発生を抑制し、地球環境に配慮している企業こそ「伸びる企業」であると言われています。

環境を壊す生産活動を抑制するためには、将来的に罰則を伴う法の整備や、環境基準の更なる厳密化などが行われることから、企業が今までのように生産活動を持続することはまず不可能です。

それゆえに、企業自らが生産活動を見直し、環境に配慮した生産活動を行えるようにならなくてはならないのです。

2. 脱炭素社会で伸びる企業の要素とは?

それでは、脱炭素社会の到来とともに「伸びる」企業の要素について、詳しく分析してみます。

[1]二酸化炭素の排出を抑制している企業

まず、生産活動を行っている企業だけが温室効果ガスの排出努力を追っているわけではありません。

火力発電など、温室効果ガスの発生を伴う電力消費を行っている企業にも、その電力確保において風力や水力などの「クリーンエネルギー」を積極的に導入するなど、温室効果ガスの排出につながる取り組みが求められています。

首都圏を中心に小売店舗を展開している丸井グループでは、2018年からすべての店舗や事業拠点に自然エネルギーの電力を導入する取り組みを進めています。

2030年までに事業活動で消費する電力の100%を再生可能エネルギーにすることを目標にしており、取り組みの好事例とされ注目されています。

出典:自然エネルギー財団『丸井グループ、地球環境と共存するグリーンビジネス拡大』(2019年3月)

[2]二酸化炭素の排出抑制の技術を持っている企業

温室効果ガスの抑制技術は、生産活動を行う企業にとっては喉から手が出るほどと欲しいものです。

注目されているのは、燃焼させても温室効果ガスの排出を抑制できる代替燃料の技術です。家畜のふんや稲わら・麦わらなどを発酵させてバイオエタノールなどを生成する技術は、特にこれから注目を集めると思われます。

環境省でも、これらの技術開発のために補助制度を設けて、企業の金銭的な支援にあたっています。

出典:環境省『二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金』(2020年4月)

[3][1]や[2]に欠かせない知識や人材を提供できる企業

[1]や[2]で紹介した技術や知識を導入するには、それらに長けた人材が必要不可欠です。

人材の確保や育成については、環境省が中心となって進めており、令和2年度より「再エネの最大限の導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業」を展開しています。

この事業では、地域再生エネルギーの技術開発と必要な人材の育成、あわせて新たな環境ビジネスの起業を促進しています。

出典:環境省『再エネの最大限の導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業』(2021年3月)

[4][1]や[2]に欠かせない資源を確保している企業

また、[1]や[2]に係る資源を確保している企業も、これからの時代に「強み」を持っているといえます。バイオエネルギー1つを取ってみても、稲わらを発酵させてバイオマスを生成し、生み出されたガスを燃焼して発電する、これだけのプロセスをすべて有している企業というのはほとんど存在しません。

例えば、今までだと単なるごみ収集とだけしか位置付けられなかった廃棄物収集企業が、その収集物を活用してバイオマスを生成できるとわかれば、さまざまな企業から引き合いが来るようになる、という事例が現実にあります。

このように、今まで見向きもしなかったものが資源となり、そのノウハウを持つ企業が注目されることは時代の流れ上、必然と言えるでしょう。

3. 脱炭素社会で伸びる企業!代表的な分野とは?

それでは、ここからは脱炭素社会で伸びると思われる企業を、分野ごとに厳選してご紹介します。

[1]自動車業界

生産活動だけではなく、製品そのものが二酸化炭素など温室効果ガスを排出する自動車業界は、脱炭素社会への対応が急務となっている業界です。自動車大手のホンダは、2040年までに取り扱う自動車すべてを化石燃料機関から電気自動車などに転換することを打ち出しています。日本の根幹産業ともいえる自動車業界、既にハイブリッドーの生産などで脱炭素社会への対応を進めているのも事実です。

2020年度に販売した自動車に占める電気自動車の割合を見ると、日本は販売台数の36%がすでに電気自動車などに入れ替わっています。同年度におけるアメリカの場合、販売数の5%程度しか入れ替わっていないことから見ても、日本の取り組みはより進展しているといえます。

出典:日本自動車新聞「2020年の乗用車販売、電動車比率36.2% 軽も初めて3割超える」(2021年1月)

2]電力業界

電力業界では、化石燃料からの脱却が急ピッチで進んでいます。

2011年に施行された「再生エネルギー法」により、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が促進されました。

出典:資源エネルギー庁「主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較(2019年度)」

実際、日本国内における発電量中の太陽光発電などの再生エネルギーが占める割合も、2019年には18%までに成長しています。今後、風力発電やバイオマス燃料発電など、さまざまなクリーンエネルギーが導入され、それらの取り組みがより注目されることでしょう。

[3]家電業界

家電業界も、生産産業であるがゆえに、その原材料であるプラスチックの生成や、生産に必要な電力を化石燃料に由来していることが多く、脱炭素社会への取り組みが急務になっていました。

一方で、発電したエネルギーを蓄える蓄電池の分野で新たな市場が見えているきたのも、家電業界の特徴です。経済産業省もその取り組みを支援しており、2021年2月にはトヨタ自動車とパナソニックが設立する電池合弁会社において生産される「車載電池」向けに1兆円規模の金融支援を検討していることが明らかになりました。

家電だけを売るのではなく、家電で培った蓄電や省電力化の技術を、他の業界と提携して活用する、新しいビジネスチャンスが到来しているともいえるでしょう。

出典:日本経済新聞『官民でEV蓄電池』(2021年9月

[4]RE100参加企業

出典:環境省『企業の脱炭素経営への取組状況』(2021年8月)

RE100とは、使用する電力の100%を再生可能エネルギーにより発電された電力に置き換えることを実践している企業が、加盟している国際的な企業連合のことです。

既に脱炭素社会への準備を済ませ、更なる飛躍が見込まれている企業と言っても過言ではありません。日本企業では2015年にリコーが加入第1号となったのを皮切りに、積水ハウス、アスクル、大和ハウス、ワタミ、イオンなどが加入し、どの企業も2050年までには脱炭素化を成し遂げる目標を掲げています。

RE100に加入するには、厳しい審査を経て加入が認められるもので、それぞれの企業の取り組みが世界基準で認められた、と考えてもよいでしょう。

出典:環境省『環境省RE100の取組』(2019年4月)

4. まとめ:脱炭素社会への対応はビジネスチャンスになる!

脱炭素化社会は、生産活動一辺倒であった日本経済、あるいは正解経済に大きな影響を与える変革と言えます。ですが、その変革から生まれる新しい技術は、大きなビジネスチャンスといっても過言ではありません。

人々の、環境に対する関心や取り組みが年々高まっている中、企業としても環境保護の取り組みを実践していることをアピールすることは、企業のイメージアップにもつながります。

日本政府としても、国際的な枠組みである議定書等で定めた基準を満たすことに躍起になることが予想され政府からの働きかけや企業等への支援も、今後拡充されることになるでしょう。

 

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