太陽光発電の利用を促進するPPAモデルとは?

カーボンニュートラル達成のため注目されているのがPPAモデルです。特に太陽光発電において、PPAモデルによる事業が実施されています。

今回は、PPAモデルとは何か、PPAモデルを考えるうえで必要となる電気事業法の知識、PPAモデルのメリット・デメリット、PPAモデルの導入事例や補助金などについてわかりやすくまとめます。

目次

  1. PPAモデルとは?

  2. 電気事業法とは?

  3. PPAモデルのメリット・デメリット

  4. 太陽光発電におけるPPAモデルの導入事例

  5. PPAモデルによる太陽光発電への補助金

  6. まとめ:PPAモデルを利用し、太陽光発電設備を導入しよう!

1. PPAモデルとは?

PPAモデルとは、「Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル」の略で、PPA事業者が、電力需要家の敷地や屋根等のスペースを借り太陽光発電システムを設置し、そこで発電した電力を電力需要家に販売する事業モデルです。

出典:日本経済新聞『イオン、商業施設へのPower PurchaseAgreement(電力販売契約)モデル導入を開始』(2019/4/18)

出典:資源エネルギー庁『需要家による再エネ活用推進の ための環境整備』(p.5)(2021/3/22)

PPAモデルには、自社敷地内で発電し、自社で消費する「オンサイト型PPA」と自社敷地外で発電された電力を自社で消費する「オフサイト型PPA」の2種類があります。自家発電といってもよい「オンサイト型PPA」と比べ、社外から送電を受ける「オフサイト型PPA」にはさまざまな区分があります。

まず、自社の敷地内に太陽光パネルなどの発電設備を設置するオンサイトPPAの場合、そのパネルの所有者が自社であっても他社であっても電気事業法上の規制を受けません。

自社の工場などで生産された電力を自社のオフィスで使用するような社内融通型のオフサイトPPAの場合も同様に規制対象外です。

それに対し、関連会社から電力の供給を受けるオフサイトPPAの場合、自社と関連会社がどれだけ密接な関係性を持っているかが問われます。関係性が薄いと判断されれば、電気事業法上の規制対象となります。

2. 電気事業法とは?

出典:資源エネルギー庁『電力供給の仕組み』

日本では、電気事業法により電気事業の運営がなされています。この法律では、国に届け出て登録を認可された小売電気事業者だけが需要者に電力を販売すると定められています。したがって、再生可能エネルギーの発電業者が直接、需要者に電力を販売できない仕組みとなっています。

そのため、現行法では他社が発電した再生可能エネルギーを事業者が直接買う他社融通型のオフサイト型PPAは認められていないのです。

3. PPAモデルのメリット・デメリット

出典:環境省『初期投資0での 自家消費型太陽光発電設備』(P2)

(1)PPAモデルのメリット

PPAモデルの最大のメリットは初期費用がかからないことです。初期費用がかからない理由は太陽光パネルなどの発電設備はPPA事業者が用意し、設置するからです。加えて、メンテナンスもPPA事業者が行いますので、手間がかかりません。

また、再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)がかからないのもPPA導入のメリットです。他社が発電した再生可能エネルギーの場合、電気料金に再エネ賦課金が追加されますが、自社で調達した場合はその対象外となるからです。

出典:資源エネルギー庁『需要家による再エネ活用推進のための環境整備』(P10)(2021/3/22)

(2)PPAモデルのデメリット

PPAモデルのデメリットは契約期間が長いことです。日本と同じく、電力事業が自由化されていないジョージア州の例を挙げると、契約期間は10年から30年の長期にわたります。

さらに、設置された設備は自社所有物ではないため、勝手に処分できません。また、契約期間終了後には設備が譲渡される場合がありますが、その際はメンテナンスのコストが発生します。

いずれにせよ、PPAを導入するにあたってはその場の利益だけではなく、企業の今後を見据えた長期的な視点が必要不可欠となるでしょう。

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA 実践ガイドブック』(P21)(2020/9)

4. 太陽光発電におけるPPAモデルの導入事例

出典:環境省『初期投資0での 自家消費型太陽光発電設備』(P2)

(1)中部電力・Looop

2020年に設立された中部電力・Looopは「Zero-Roofs」と銘打ったPPA事業を展開。契約先の建物の屋根に太陽光パネルを設置し、電力を供給します。すでに、トヨタグループの一つである株式会社キャタラーと契約しています。

また、中部電力・Looopがイオンモール津南・イオンモール松本などと契約を結び、それぞれに太陽光パネルを設置。これらの施設に再生可能エネルギー由来の電力を供給するとともに、太陽光発電設備の維持管理を担っています。

イオンは、将来的には全国200か所でオンサイトPPAの導入を検討中で、実現すれば、かなり大規模なPPAの事例となるでしょう。

出典:中部電力株式会社『株式会社中電Looop Solarの概要』(P6)(2020/10/6))

(2)オリックス株式会社 

大手金融サービス事業者のオリックスは、中部地方や近畿地方にスーパーを展開するバローの2店舗(下恵土店:岐阜県可児市、三園平店:静岡県富士宮市)の屋上に太陽光発電設備、リチウムイオン蓄電池、エネルギーマネジメントシステムを設置しました。

発電設備の運営はオリックスが行い、太陽光で発電した電気をバローに供給します。バローは使用した電力量に応じて、オリックスに料金を支払います。

出典:オリックス株式会社『PPAモデル(第三者所有モデル)』

5. PPAモデルによる太陽光発電への補助金

(1)オンサイトPPAモデルへの補助金

出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(P1)

環境省は総務省や経済産業省と連携し、オンサイトPPAモデルの普及を支援する補助金を設定しました。この補助金は、オンサイトPPAの普及を支援します。PPAの普及拡大により電力価格の低減や地域の再生エネルギー主力化を狙います。

出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(P6)

さらに、環境省は脱炭素化の推進や防災の観点から、太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせたオンサイトPPAの設備導入支援の補助金も設定しました。

(2)オフサイトPPAモデル(コーポレートPPA)への補助金

出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(P7)

経済産業省は密接な関連を持つ企業からの電力融通を認めました。これにより、企業が長期間にわたって発電業者から再生可能エネルギー由来の電力を購入する「コーポレートPPA」が可能となりました。

現行の電気事業法では、企業が直接発電業者と取引することはできませんが、小売電気事業者を間に挟んだ3社間のコーポレートPPAが可能です。そこで、環境省はコーポレートPPAを推進するための補助金を設定しました。

6. まとめ:PPAモデルを利用し、太陽光発電設備を導入しよう!

2020年10月に日本政府が表明した「カーボンニュートラル」。これを達成するにはFIT制度やFIP制度だけでは達成が難しいかもしれません。そのため、PPAモデルの検討が本格化しました。

PPAモデルの普及は、中小企業にとって電気代の削減をもたらす可能性があります。特に、初期費用が安く済むオンサイトPPAは非常に魅力的です。新しい制度を導入することで、低炭素社会に適応した企業であることを内外にアピールする効果もあるでしょう。

今後の経営戦略上、PPAモデルの導入は積極的に検討する価値があるのではないでしょうか。

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