再エネはコストが高い?日本と世界の再エネコスト事情を解説
- 2022年06月15日
- 発電・エネルギー
コストが高いと言われる日本の再生可能エネルギー(以下再エネ)ですが、地球環境を維持するためにも、日本のエネルギー自給率を高めるためにも、重要なエネルギーであることに間違いはありません。また世界では再エネのコストは大幅に低減している事実があります。
日本の再エネのコストは本当に高いのか、その実情を知り検討することは今後の日本と企業の未来につながります。日本と世界の最エネコスト事情を比較して解説します。
目次
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日本の再エネ推進の壁はコストの高さ?
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世界の再エネコスト事情は様々な要因で減少している
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日本の再エネコスト低減の取り組み
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日本の再エネコストは低下している
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まとめ: 再エネはコストダウン可能
1. 日本の再エネ推進の壁はコストの高さ?
なぜ日本の再エネの発電コストは高いのか?
日本の最エネの発電コストが高いことの理由に市場規模がまだ小さいことが挙げられます。そのため施設整備や投資などの関連ビジネスの発達が遅れコストの高さにつながっているのです。発電設備設置に当たり、発電事業者を取り巻く制度や仕組みにも違いがあるため価格比較が単純にできませんが、いずれにせよ再エネに掛かるコストの高さは発電所設立などの初期費用にかかるものがほとんどと言えます。
日本における再エネの普及の推移
日本では2002年から「再生可能エネルギー導入量割当制度(RPS制度)」を実施し、2009年からは「余剰電力買取制度」などで電力会社が太陽光発電の余剰電力を一定の価格で買い取る制度なども実施されていました。そして2012年には「固定価格買取制度(FIT)」(以下FIT法)が制定されました。これは再エネで発電した電力を一定期間定価格で買い取ることを国が保証した制度で、この制度により再エネの導入は一気に促進されたのです。
出典:資源エネルギー庁『スペシャルコンテンツ 再エネのコストを考える』(2017.9.14)
日本と世界の再エネコストの違いは
世界では再エネが主電源になりつつあるなか、日本の導入はまだまだ遅れているのは事実です。しかし世界には再エネ発電において自然条件や地理的要因が日本より恵まれている国もあり、また設備の設置や効率の違いなどもあるため一概に比較できません。ただ世界のそういった好条件がさらに再エネ導入を加速しコストの低減化へとつながっています。
日本は地理的要因などの独自の課題に向き合い、それを解決していくことで今後の再エネコストを低減化していくことが可能です。
出典:資源エネルギー庁『スペシャルコンテンツ 再エネのコストを考える』(2017.9.14)
2. 世界の再エネコスト事情は様々な要因で減少している
世界で進む再エネの導入
世界では地球温暖化の危機に伴う脱炭素の気運が高まっており、それとともに再エネ導入は加速しています。世界的に見ると2015年には、既存発電設備容量で水力発電などをはじめとした再エネによる発電が石炭火力発電を超えているのです。また欧州だけではなく、米国や中国といった経済的大国も政治的なインセンティブの高まりなどから環境問題対策に本腰を入れ始めており、こうした状況から再エネへの投資や事業は世界的にさらに拡大すると考えられます。
出典:自然エネルギー財団『世界の電力(2021年3月31日)』
世界の再エネがどんどんコストダウンしている理由
各国の再エネへの取り組みはさまざまであり、一括りに語ることはできませんが、海外では事業者が入札しやすい環境が整っており、単純な価格競争となるため価格が下がりやすいという状況があります。また再エネ発電の設備を設置するとき日本よりも地理的な条件が良好など複数の要因が合わさり、再エネの低コストが実現しています。そして結果的に再エネのコストが低いことでさらに再エネの導入が進むという好循環を生み出しているのです。
欧州の最新政策
欧州では2020年には再生可能エネルギーが化石エネルギーを初めて追い越し、最大の電力源となったのです。風力と太陽光のエネルギーの伸びが大きく、風力は9%増加、太陽光は15%増加で欧州の発電電力の5分の1を占めました。
特に洋上風力エネルギーの発電が推し進められており、デンマークやオランダなどでは洋上風力発電の設備に伴う環境アセスメントを政府が主導するなど積極的な取り組みが行われ、結果的に事業者の開発リスクが低下し低コスト化につながっています。
出典:新エネルギー財団「海外の再エネ事情(2020欧州 その1)」(2021.2)
3. 日本の再エネコスト低減の取り組み
日本の再エネコストの現状
日本の最エネにかかるコストは国際水準と比較してもまだ高いのが現状です。太陽光発電では日本と欧州を比較すると太陽光発電のシステム費用料には二倍近くの差があります。コストがかかるということは国民にも影響します。日本が再エネ促進のために制定したFIT法には国民が負担する賦課金が含まれているため、それがそのまま国民への負担になっていくのです。
出典:資源エネルギー庁『第3節 再生可能エネルギーの主力電源化に向けて』(2021.7.19)
日本ならではのコスト削減解決策
日本でも世界の動向を注視しながら再エネのコスト低減化に向けて多様な取り組みを始めています。地理的条件など日本ならではの課題もあるため、単純に海外の取り組みを参考にするのではなく独自の努力が必要です。日本の再エネはFIT法が制定後、間違いなく導入が促進しました。だからこそ日本の課題を見据え、バランスの良い再エネ導入に向けての取り組みを進めていくことが大切なのです。
FIT法改正・FIP法
その取り組みのひとつとして開始されたのが、FIT法改正です。これはFIT法で浮かび上がった課題を解決するために制定され、事業の効率化や制度の適正化を図ることが目的です。また未稼働案件発生防止を含め、事業計画認定制度も設けられました。入札制度導入など再エネをコスト競争力のある電源とするための仕組み作りも始まっているのです。
出典:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度』
さらに2022年に新たに市場価格を踏まえてプレミアム額が交付されるFIP法が創設されました。プレミアムを交付することで、再エネ事業者にさまざまな投資インセンティブを促しさらに再エネ導入を加速させる狙いです。このように再エネ導入とそれに伴うコストダウンにむけて多彩な取り組みが行われています。
出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2021第3章 第1節 競争力のある再エネ産業への進化』(2021.7.19)
4. 日本の再エネコストは低下している
日本の再エネコストの推移
日本の現状の発電コストは事業用太陽光発電で2019年は13.1円/kWh、風力発電で2019年11.3円/kWh程度とされています。また今後の発電コストとしては、事業用太陽光発電が2030年5.8円/kWh、風力発電で2030年6.6円/kWh程度といった水準が見通されています。長期的に見て再エネコストが大幅にダウンする可能性が示されているのです。
出典:資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020.9)
再エネはコストダウンできるのか
さまざまな取り組みからなる再エネのコストダウンは今後ますます可能になります。世界の環境保全に向けた脱炭素の動きは将来的に加速し、それに伴い再エネは注目されるエネルギーとなっていきます。日本も例外ではありません。注目されればそれだけ再エネの導入は加速していくのは間違いないのです。コストはやがてどんどん低下し、日本の再エネコストは高い、と言われるのは過去の話になるでしょう。
日本企業の環境イニシアチブの参加も注目
また世界的に地球温暖化や脱炭素にむけて再エネ事業が取り組まれる中、海外で注目されている環境イニシアチブの「RE100」「SBT(Science Based Targets)」「WMB(We Mean Business)」などの国際機関に参加する日本の企業は年々増加しています。そのようなイニシアチブに参加することは企業としての価値を大いに高め、社会的にも注目されます。このような動きは再エネ導入とコストダウンをより可能にします。
出典:環境省 『グリーン・バリューチェーンプラットフォーム 国際的な取り組み(2021.8.24)
5. まとめ: 再エネはコストダウン可能
漠然と再エネはコストがかかるというイメージを持つ方も多いでしょうが、実際の実情を知りつつ、さまざまなコストダウンに向けた取り組みが行われていることがご理解いただけたと思います。日本の再エネのコストダウンは可能であり、それを促進するのは再エネを導入する企業のもつ将来的な力です。再エネ導入を検討しコスト削減の一端を担い、日本の未来の力となってみませんか。