課題解決や地域活性化にもつながる!おもしろい発電方法をご紹介
- 2023年08月18日
- 発電・エネルギー
日本も含めて世界は、意外な物を燃料として、一風変わった興味深い方法で発電を試みています。日本では地域が抱える廃棄物の課題を解決し、地域活性化につながる新しい発電が行われています。
この記事では、そんな日本の発電状況と今後の動向、日本と海外で行われている「おもしろい発電方法」をご紹介します。おもしろい発電方法を理解することで発想を豊かにし、取り組みの検討やビジネスチャンスにつなげましょう。
目次
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日本の発電状況と今後
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うどんから発電?おもしろい発電3種についてご紹介
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牛のゲップから??世界でも進むおもしろい発電方法
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まとめ:おもしろい発電をキッカケに社会の動向を見てみよう
1. 日本の発電状況と今後
現在、日本はどのような方法で発電を行い、発電割合はどのような状況にあるのでしょうか。2022年度における電源構成と、日本が今後の目標としている電源構成についてご紹介します。
日本の発電の種類と割合
isep(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)によると、日本における2022年度の発電の種類と割合は次のようになっています。
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[火力発電]合計:72.4%
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石炭:27.8%
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LNG(天然ガス):29.9%
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石油:3.0%
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その他火力:11.8%
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[原子力発電]原子力:4.8%
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[再生可能エネルギー発電]合計:19.1%
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水力:7.1%
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太陽光:9.9%
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風力:0.9%
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地熱:0.2%
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バイオマス:4.6%
日本は、2050年度までの脱炭素を目指していますが、火力発電が占める割合が多いです。
出典:isep『2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)』
日本が注目する新たな電源
日本は、2020年10月に2050年度までの脱炭素を宣言し、経済産業省が中心となり「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。脱炭素を実現させるためには、再生可能エネルギーの最大限の導入や原子力の活用の他に、水素やアンモニアなど新たな選択肢の追求が必要であるとの見解を示しています。
その中において、新たな脱炭素電源としてアンモニアと水素を2050年度までに10%まで普及することを目標にしています。
出典:グリーン成長戦略と脱炭素化に向けた海外展開支援について』(2021年3月)(p.3)
2. うどんから発電?おもしろい発電3種についてご紹介
国レベルでは新たな電源として、水素やアンモニアが推進されていますが、各地域においては、廃棄する食品や家畜の排泄物を燃料にして発電するなど、一風変わった、思わず興味深いと感じるようなおもしろい発電への取り組みが行われています。ここでは、各地域で実施されているおもしろい発電についてご紹介します。
[1]廃棄うどんが電力に?
讃岐うどんで知られる香川県は、うどんの消費量が日本一です。うどんの消費量が多い県ならではの「廃棄うどん」という課題を抱えています。そこで環境省中国四国地方環境事務所四国事務所はローカルSDGs四国を立ち上げ、環境・経済・社会が抱える課題の解決と地域活性化を目指した様々な取り組みを実施しています。
その取り組みの1つが、うどんまるごと循環プロジェクトです。廃棄されるうどんなどからバイオガスを発生させ発電し、バイオガス生成後に出た残渣を活用してうどん液肥を作り、小麦畑に肥料として撒くというものです。うどん発電の様子を一般家庭に向けオンラインで公開するなど、市民の意識改革にもつながっています。
出典:ローカルSDGs 四国『うどんまるごと循環プロジェクト』
[2]牛の排せつ物からバイオガスをつくって発電
生乳生産量日本一を誇る北海道野付郡別海町には、人口の約7倍の数の牛がおり、排泄物処理という大きな課題を抱えていました。この課題を解決するために、牛の排泄物から電力を作る別海バイオガス発電所が建設されました。酪農家から供給される牛の排せつ物を発酵させることでメタンガスを発生させ、それを燃料にして発電しています。
別海バイオガス発電所は国内最大規模のバイオガス発電で、1日当たり、乳牛4500頭分相当の排せつ物280トンと産業廃棄物5トンから発電を行っています。
出典:三井造船『2015年7月10日 国内最大規模のバイオガス発電施設運転開始』
[3]通勤ラッシュの力が電力に?
地球温暖化防止への取り組みが熱心なJR東日本は、自営の火力発電所と水力発電所を所有しています。
2006年10月には、東京駅で通勤ラッシュの力で発電するという大変ユニークな実験を実施しています。改札口に圧力で発電する床を設置し、その上を乗客が急ぎ足で歩くことで発電する仕組みです。
3. 牛のゲップから??世界でも進むおもしろい発電方法
実用には至っていないものの、世界でもおもしろい発電への取り組みが進んでいます。世界が取り組んでいるおもしろい発電方法についてご紹介します。
[1]牛のゲップから発電 アルゼンチン
牛のゲップにはCO2の20倍以上とされる温室効果のあるメタンが含まれており、温暖化の原因になっています。アルゼンチンから排出されているメタンの約3割は牛のゲップに起因するものです。2005年国立農牧技術院(INTA)が牛の胃にチューブをつなぎ、消化ガスをタンクにためた後にメタンガスを分離し、それを燃料にして発電する方法を開発しています。
出典:独立行政法人農畜産業振興機構『牛の排出するメタンガスの簡易測定技術を開発(アルゼンチン)』
[2]空中浮体式風力発電 アメリカ
アメリカのベンチャー企業「アルタエロス・エナジーズ社」が取り組んでいる新しい発電方法です。ヘリウムガスを充填した風洞型気球を地上約600mの高さに浮上させることで、従来の風力発電の約2倍の電力を安定して発電するというものです。ソフトバンクや三菱重工業などもこの取り組みに投資を行っています。
出典:新エネルギー財団『未来の再エネ(その1 空飛ぶ風力発電)』
[3]宇宙太陽光発電 アメリカ
2021年に、米国防総省の研究チームが宇宙空間における太陽光パネルの試験に成功したことをCNNが報じています。将来的に各地への電力供給源になるのではないかと期待されています。
出典:CNN『宇宙でエネルギーを集める太陽光パネル、将来は地球各地に電力供給か』(2021/3/6)
4. まとめ:おもしろい発電をキッカケに社会の動向を見てみよう
日本の発電状況は、火力発電と原子力発電、再生可能エネルギー発電を3つの柱にしています。今後は水素やアンモニアによる発電割合も伸びることが予想されます。
この記事では、日本や海外でのおもしろい発電方法について紹介しました。エネルギー問題は日本で大きな課題となっていますが、思わぬところに課題を解決するヒントが隠れているかもしれません。
大きな課題の解決方法はビジネスチャンスにつながり、かつて発明された現在主流の発電方法のように、経済が大きく動く可能性もあります。この記事を機会に、発電方法にもアンテナを張り、社会の動向やビジネスチャンスに注目してみてはいかがでしょうか。