FIT終了後、売電はどうなる?FITの現状やその後の売電に関して解説

FIT終了後の売電はどうなる?再生可能エネルギーの普及拡大を目指し、2012年7月に固定価格買取制度であるFITがスタートしました。FITでは一定期間(調達期間)が満了すると、調達価格での買い取りが終了します。企業は、再生可能エネルギー設備の導入を検討する前に、FIT終了後の売電について方針を決める必要があります。この記事では、法人の皆さまが知っておくべきFITに関する基礎知識や、FITの現状、FIT終了後の対応についてご紹介します。

目次

  1. FIT(固定価格買取制度)に関する基礎知識

  2. FIT導入売電により生まれた問題点

  3. 年々安くなっている?FITの売電価格の推移

  4. FIT終了後の売電には2つの選択肢がある

  5. まとめ:FITやFIT終了後の売電に関する理解を深め、導入を検討しよう!

1. FIT(固定価格買取制度)に関する基礎知識

FITの売電についての理解を深める前に、そもそもFITとはどのような制度であるのかFITに関する基礎知識についてご紹介します。

FITとは?

FITとは再生可能エネルギーで発電した5種類の電力を、電力会社が一定期間・一定の価格で買い取ることを国が保証する制度で、2012年7月にスタートしました。

[FIT買い取り対象電力の種類]

  • 太陽光発電

  • 風力発電

  • 中小水力発電

  • 地熱発電

  • バイオマス発電

調達期間と調達価格は価格目標や適正な利潤などを勘定した上で、電源ごとに経済産業大臣が毎年度決定します。FITがスタートしたことで、再生可能エネルギーの導入量は急増しましたが、太陽光発電への偏りや再生可能エネルギー設備の未稼働などの問題が出たため、内容の見直しが行なわれ、2017年に法改正されています。

出典:資源エネルギー庁『FIT法改正で私たちの生活はどうなる?』(2017/8/8)
出典:資源エネルギー庁『買取価格・期間等』
出典:資源エネルギー庁『制度の概要』

FITが誕生した背景

日本における再生可能エネルギーの発電コストの高さや、普及が進まない現状を改善するために誕生したのがFITです。また、日本はエネルギー自給率が非常に低く燃料資源を海外からの輸入に頼っているのが問題となっていますが、FIT導入を通して再エネによるエネルギー自給率を高めたいという狙いがあります。FITの主な目的は、再生可能エネルギーの導入を拡大することと、それを通して再生可能エネルギーのコストを下げることです。

出典:資源エネルギー庁『FIT制度の抜本見直しと再生可能エネルギー政策の再構築』(2019/4/22)(p.2)

2. FIT導入により生まれた問題点

FITがスタートしたことで、日本における再エネの導入量は増加しました。しかしその一方で問題も発生しています。ここでは、FITにより生じた問題点についてご紹介します。

太陽光発電への偏り

FIT導入前の2012年度と2018年度の再生可能エネルギーの電力量を比較すると、約3倍に伸びています。日本は世界トップクラスのスピードで拡大していますが、太陽光発電に偏っており、バランス良く普及が進んでいないという問題点が生まれました。

2011年度から2018年度において、日本の再生可能エネルギー割合は、以下のように推移しています。

  • [2011年度]全再生可能エネルギー割合10.4%
     内、太陽光0.4%、風力0.4%、地熱0.2%、バイオマス1.5%、水力7.8%

  • [2018年度]全再生可能エネルギー割合16.9%
     内、太陽光6.0%、風力0.7%、地熱0.2%、バイオマス2.3%、水力7.7%

出典:資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020年9月)(p.6.7)

国民負担の増加

電力会社がFITに基づき電力を買い取る時にかかった費用は、電気を使用している国民が毎月の電気代において「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という形で負担しています。FITがスタートし、電力会社が買い取る電力が増加したことで、国民の負担も増えています。

資源エネルギー庁が公表しているデータによると、2018年度の買取費用総額は3.1兆円で賦課金総額は2.4兆円、2019年度の買取費用総額は3.8兆円で賦課金総額は2.4兆円です。2030年度の再生可能エネルギー割合を23.6%と仮定すると、買取費用総額は4.0兆円で賦課金総額は3.0兆円に増加する見通しです。

出典:資源エネルギー庁『今後の再生可能エネルギー政策について』(2021/3/1)(p.88)

3. 年々安くなっている?FITの売電価格の推移

日本では、太陽光発電により発電した電力のみ、年々FIT売電価格が安くなっています。ここでは、FIT導入以降の事業用太陽光発電の売電価格の推移と、売電価格の今後についてご紹介します。

今後も下がり続ける?売電価格の推移と今後

10kWh以上の規模である事業用太陽光の売電価格は、2012年度の40円から下がり続け、2020年度は12円でした。

資源エネルギー庁によると風力・水力・地熱・バイオマスの調達価格は、2020年度から2022年度まで変化はありません。唯一売電価格が下がるのが太陽光です。

1kWhあたりの売電価格は、設備規模により以下のように推移する見通しです。

  • 50kW以上250kW未満:2020年12円/2021年11円/2022年10円

  • 10kW以上50kW未満:2020年13円/2021年12円/2022年11円

  • 10kW未満:2020年21円/2021年19円/2022年17円

出典:資源エネルギー庁『太陽光発電について』(2020年11月)(p.2)

出典:資源エネルギー庁『買取価格・期間等(2021年度以降)』

4. FIT終了後の売電には2つの選択肢がある

契約が自動契約になっていない場合、FITの調達期間が満了すると、電力会社にこれまでのように調達価格で売電することができなくなります。つまり、太陽光発電でつくった電力を売ることによる売電収入が下がる可能性が大きくなります。そこで企業に最適なプランを決める必要があります。FIT終了後の主な売電には2つの選択肢があります。ここでは、2種類の選択肢についてご紹介します。

(1)主要電力会社に継続して売電・新電力会社に売電

FIT終了後は、調達価格での買い取りはありませんが、電力会社と契約して引き続き再生可能エネルギーにより発電した電力を売電することができます。売電先は主要電力会社または新電力会社です。新電力会社とは、電力自由化により新規参入した小売電気事業者のことです。資源エネルギー庁は、ホームページでFIT終了後に売電できる電力会社一覧を掲載しています。

出典:資源エネルギー庁『売電できる事業者』

(2)企業内で消費する

昼間に太陽光発電により発電した電力を、事業活動に活用するなど、企業内で消費することができます。蓄電池を導入すれば、余った電力を貯め、太陽光がない日や夜間に使用することも可能です。

出典:資源エネルギー庁『自家消費・相対・自由契約』

5. まとめ:FITやFIT終了後の売電に関する理解を深め、導入を検討しよう!

FITの調達期間が満了すると、これまでのように調達価格で売電することができなくなります。FIT終了後の売電の主な選択肢は、主要電力会社への売電、新電力会社への売電、企業内での消費になります。企業にとって最適なプランを検討しましょう!

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