CO2フリーの電力とは?脱炭素化を促進させる未来のエネルギーを紹介

CO2がフリーになる電力をご存じでしょうか。わが国は2020年10月に2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現することを宣言しました。日本だけではなく、世界121カ国とEUがカーボンニュートラルを宣言しています。

これをきっかけに多くの企業がカーボンニュートラルや脱炭素化の目標を掲げています。目標達成に伴い注目されているのが、CO2フリーの電力です。

今回は、CO2フリーの電力の概要や脱炭素化に向けて企業がどのように取り組めばいいのかをご紹介します。

目次

  1. そもそもCO2フリーの電力とは?

  2. CO2フリーの電力のメリット

  3. 中小企業がCO2フリーに取り組む4つの方法

  4. より身近なCO2フリー、中小企業の取り組みとは

  5. まとめ:まずは再生可能エネルギー由来の電力を利用してみよう

1. そもそもCO2フリーの電力とは?

CO2フリーの電力とは、発電する際に二酸化炭素を排出しない電力のことを指します。発電においてCO2が排出される方法と排出されない方法がありますが、以下でそれぞれ説明していきます。

(1)CO2が排出される発電方法

日本には、火力発電、水力発電、地熱発電、原子力発電の4種類※1があり、それぞれの長所・短所を組み合わせて電力を供給しています。

火力発電は、石油・石炭の化石燃料を燃やして発電しているため、資源枯渇やCO2排出が問題となっており、環境影響が大きいのが短所です。原子力発電も火力発電に比べCO2排出は少ないですが、厳重な放射線管理、適切な廃棄物処理が必要となります。これらは日本の主流の発電方法であり、脱炭素化を目指しているのに対し、火力発電、原子力発電に頼っているという矛盾が一番の課題です。

※1出典:電気事業連合会『発電のしくみ』

(2)CO2が排出されない発電方法

近年は自然のエネルギーを活用した太陽光、風力、燃料電池発電などの新エネルギーが注目され、実用化しています。再生可能エネルギーというワードも聞きなれてきました。

再生可能エネルギーは自然の特徴を活かして電力をつくるため、火力発電のように資源枯渇の心配がなく、CO2排出もありません。

そのため、脱炭素化をめざす上で、再生可能エネルギーの主力電源化が強く求められます。現在政令で定義されている再生可能エネルギーは、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱・その他の自然界に存する熱・バイオマスがあります。再生可能エネルギーが占める電源構成割合2019年で18%にとどまり、諸外国にくらべ低い水準です。

経済産業省によると、2030年のエネルギーミックスに向け、再生可能エネルギー割合を36~38%にし主力電源化していく方針です。

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』
出典:資源エネルギー庁『エネルギー基本計画(素案)の概要』(令和3年7月21日)(p.12)

2. CO2フリーの電力のメリット

(1)環境にやさしい再生可能エネルギー

先程も述べましたが、CO2フリーの電力の発電においては、CO2が出ないかつ資源枯渇問題が発生しないため、地球環境に対する悪影響を今までよりも小さくすることができます。

(2)国へ報告するCO2排出係数がゼロになる

「地球温暖化対策の推進に関する法律」でCO2の排出係数をゼロとして報告できます。この法律は、一年間に排出したCO2の量を企業が国に報告する制度です。排出係数は、発電過程で発生したCO2を基に決定するので、電力会社によって差がありますが、FIT制度非適用の再生可能エネルギーはCO2排出係数がゼロになります。

(3)電力の地産地消ができる

再生可能エネルギーでつくられた電力は、FIT制度(固定価格買取制度)にて国が決めた一定価格で電気事業者に買い取ってもらえます。しかし、ここには2つ問題があります。FIT制度での買取期間は10年~20年と、一部期間満了を迎える事業者がいること、期間中売電している電力は、CO2フリーの環境価値ないとみなされること。

このような電源をCO2フリーの環境価値を持ったエネルギーとして有効活用する取り組みが出てきました。地域で発電した再生可能エネルギー由来の電力を、環境価値と共に電気事業者が買い取り、同じ地域に供給するといった仕組みです。今まで市場に一般の電力として売電していたものを再エネとして地域で活用できるため、環境価値市場での取引増加や、地域のブランディングといった地域貢献に繋がります。

3. 中小企業がCO2フリーに取り組む4つの方法

前章にてCO2フリーの電力のメリットを述べましたが、実際にどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。今回は中小企業でも取り組める方法を4つ紹介します。

(1)再生可能エネルギーを自社発電することで電気料金もお得に

毎年、太陽光発電によるFIT制度の売電単価が値下がっています。2012年には1kwhあたり40円でしたが、2021年には12円/kwhになっています。また、購入分の電気料金の値上げにより、現在は、再生可能エネルギーを自社で使う方がお得になってきています。太陽光発電は地域や天候に左右されるという短所があるので、地域や電力使用量、時間帯に合わせて蓄電池などを活用しながら再生可能エネルギーを導入することをおすすめします。

出典:経済省資源エネルギー庁『固定価格買取制度』

(2)再生可能エネルギー由来の電力を小売事業者より購入

自社で再生可能エネルギー発電設備の導入が難しい企業は、電力会社から購入できます。

先述しましたが、国は2030年までに再生可能エネルギーによる発電を増やす方針のため、再エネ由来の電力を取り扱っている電力会社も増えており、今後は再生可能エネルギー由来の電力がより一般的になることでしょう。

(3)J-クレジットなどを用いたカーボンオフセット

J-クレジットとは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度です。つまり、再エネ由来の電力を使わずとも、企業や自治体がCO2等を削減したという環境価値を、企業が脱炭素化や削減目標達成のために購入し相殺(オフセット)できるという制度です。特定の都合で電力切り替えが難しい企業や、自社で植林などを行っている企業で有効活用されています。

出典: 経済産業省『Jークレジット制度』

(4)PPAモデルは再生可能エネルギーの切り口

PPAモデルとは、Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデルの略で、発電事業者が企業の敷地や屋根に太陽光発電設備を設置し、その設置費用や所有、管理を発電事業者が担当し、発電された電力を企業が受け取るという仕組みです。発電所の設置費用を発電事業者が負担するので設備投資や初期費用が一切かかりません。企業が再生可能エネルギー導入の一歩として注目されています。

4. より身近にCO2フリー、中小企業の取り組みとは

(1)再生可能エネルギー電力を供給し、購入する事例

兵庫県に本社を置く株式会社二川工業製作所は、水上太陽光発電事業に取り組み、2020年に国内全拠点における使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを達成しました。兵庫県内2箇所のフロート式水上太陽光発電所で生み出した電気を、アスエネ株式会社へ供給し、再生可能エネルギー由来の電力を利用しています。

出典: 株式会社二川工業製作所『再エネ・環境事業』

出典:PRTIMES『再エネ100宣言 RE Action参加企業で最大規模の電力使用量を誇る二川工業製作所がアスエネから兵庫県産の水上太陽光から再エネ100%電力調達を開始、脱炭素社会と地方創生の両立を目指す』(2020年12月8日)

(2)ムダなエネルギーを有効利用する事例

衣料関連事業を展開する株式会社艶金では、建築廃材の木質ボイラーの廃熱を利用し、染色整理工程における温水を100%供給しています。この活動により、水を温めるガスや電力の使用を削減し、さらなるCO2削減に取り組んでいます。

地中熱の一種である温泉の排湯熱も利用することができます。温泉施設ではもとも掘ってある井戸付近にヒートポンプを設置し、排湯熱を施設の暖房や給湯器に活用しています。

 出典:再エネ100宣言RE Action『再エネ100宣言【事例紹介】』

5. まとめ:まずは再生可能エネルギー由来の電力を利用してみよう

企業で取り組んでいる省エネ活動が行き詰ってしまったら、次は再生可能エネルギー由来のCO2フリーな電力を利用してみるのがいいでしょう。

現在は太陽光発電設備の費用も年々下がり、PPAなどの新しい契約方法もあります。また、再エネ由来の電力を購入する場合も、既存の契約より電力代が下げられるという企業もあります。

今後は再生可能エネルギーの利用が当たり前になる時代です。企業の持続可能な開発のためにも、今から積極的に導入を検討してみてはいかがでしょうか。   

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