TCFDのメリットとは?設立の目的など基礎知識を徹底解説

2015年12月に設置されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)について、みなさんはどこまでご存じでしょうか。

環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資が広まる中、企業に気候関連財務情報の開示を促すTCFDに注目が集まっています。企業はTCFDに賛同することで、投資家へのアピールができるなど様々なメリットを得ることができます。

この記事では、TCFDとは何なのか、関心のある法人のみなさまが知っておくべきTCFDに関する基礎知識や賛同するメリット、TCFDを促すための日本の取り組みについてご紹介します。

目次

  1. TCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース」とは?

  2. 企業の認知度向上にもつながる。TCFDに企業が賛同するメリット

  3. TCFDへの賛同を促すための日本の取り組みと企業の動向

  4. まとめ:TCFDへの理解を深め、環境問題の取り組みを検討しよう!

1. TCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース」とは?

FSB(金融安定理事会)が2015年12月に設置したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは、どのような組織なのでしょうか。ここでは、TCFDの定義や目的、重要視されている背景などTCFDに関する基礎知識をご紹介します。

TCFDとは?定義と目的

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、「気候関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれています。金融セクターが気候変動問題をどのように考えるかを検討するようにとのG20からの要請を受け、FSB(金融安定理事会)が2015年12月にTCFDを設置しました。

TCFDの目的は、投資家が適切な投資判断をする上で必要となる気候関連財務情報開示を企業に促すことです。金融を通して企業の環境問題への取り組みを促進させようというのが、TCFDの基本的な考え方です。

具体的にTCFDは4つの観点から企業に情報開示を求めます。TCFDは4つの項目の内、ガバナンスを最上位に位置づけています。

  1. ガバナンス:気候関連リスクと機会に関する経営者の役割など組織のあり方について

  2. 戦略:気候関連リスクが事業や戦略、財務に与える影響

  3. リスク管理:気候関連リスクに対する識別や評価、管理状況

  4. 指標と目標:気候関連リスクと機会の評価や管理に用いる指標と目標

出典:環境省『気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)の概要資料』(2021/6)(p.1.5)
出典:資源エネルギー庁『企業の環境活動を金融を通じてうながす新たな取り組み「TCFD」とは?』(2019/9/3)

TCFDが重要視される背景

従来の財務情報に加え、環境・社会・ガバナンスの観点も含め投資を決めるESG投資が日本で普及していることからも分かるように、企業の気候変動に関する対応は、投資家が投資を決定する上で重要な判断材料になっています。

投資にESGの視点を組み入れているPRI(国連責任投資原則)への賛同する機関は、日本を含め世界で増加しています。このような状況下において、企業に投資家が適切な投資判断時に必要となる気候関連財務情報開示を促すTCFDが重要視されています。

出典:経済産業省『ESG投資』

TCFDへの賛同機関数の状況

2021年8月25日現在、世界では2,418の組織がTCFDの賛同を表明しています。日本はその中でも世界で1番多い(475)の団体が賛同しています。次いでイギリス(375)、アメリカ(328)、オーストラリア(117)、フランス(113)と続きます。

これらの数字は毎月更新されており、前回更新の7月26日から日本は24社、賛同企業が増えています。

出典:TCFDコンソーシアム『TCFDとは』(2021年8月25日)

2. 企業の認知度向上にもつながる。TCFDに企業が賛同するメリット

金融を通じ、企業の環境問題への取り組みを促進させるためにTCFDは誕生しました。投資家達の間で企業の認知度が高まり、対話の場が生まれるなど、TCFDに賛同することで企業は様々なメリットを得ることができます。ここでは、TCFDに企業が賛同するメリットについてご紹介します。

投資家や顧客、取引先へのアピール

TCFDは企業に対して、一貫性・比較可能性・信頼性・明確性を持ち効率的な気候関連財務情報の開示を求めます。投資家が適切な投資判断をする上で重要となる情報を企業が公表することで、企業は投資家にアピールすることができます。

TCFDの賛同企業であることを公表することで、気候変動に対するリスクマネジメントがしっかりできている企業であると顧客や取引先にもアピールすることができます。

出典:環境省『気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)の概要資料』(2021/6)(p.1)

リスク管理の強化

TCFDは全ての企業に対し、2℃目標などのシナリオを用いて、気候関連リスク・機会を評価し、経営戦略やリスク管理に反映させ、情報を開示することを求めています。気候関連財務情報についてどのように対応するかを決めるために、企業は自社のリスクマネジメントなどについて熟考を重ねなければなりません。気候関連財務情報を作成することは、企業のリスク管理の強化につながります。

出典:環境省『気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)の概要資料』(2021/6)(p.4)

3. TCFDへの賛同を促すための日本の取り組みと企業の動向

TCFDは民間主導の組織ですが、日本では金融庁や経済産業省、環境省が全面的にバックアップし、TCFDへの賛同を促しています。ここでは、TCFDへの賛同を促すための日本の取り組みと企業の動向についてご紹介します。

TCFDコンソーシアムの設立

2019年5月にTCFDコンソーシアムが設立され、企業の効果的な情報開示のあり方などに関する議論が重ねられています。金融庁や経済産業省、環境省はオブザーバーとしTCFDコンソーシアムに出席し、TCFDの認知度を広めるために、国内外へ積極的な発信を行っています。

出典:経済産業省『TCFDコンソーシアムが設立されます』(2019/5/21)

TCFDガイダンスの改訂

気候関連財務情報の開示をより充実させるために、ガイダンスの見直し、改訂が行われました。業種別にガイダンスが追加され、日本企業を中心としたTCFD開示事例を増やすことにより、TCFDの認知度を高める方針です。

出典:経済産業省『TCFDガイダンス2.0が公表されました』(2020/7/31)

TCFDに対する企業の動向

TCFDへの賛同を促す取り組みが進む中で、企業に意識の変化が生じ、TCFDに賛同する企業が増加しています。経済産業省が公表している資料によると、TCFDへの賛同や情報を開示したことでメリットを感じていると答えた企業は約9割です。

TCFDは4つの項目(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)についての情報を開示することを企業に求めていますが、全ての項目を開示していると答えた企業が2019年度の20社から2020年度には47社に増加しています。

出典:経済産業省『TCFD開示を巡る現状と課題』(p.19.20)

4. まとめ:TCFDへの理解を深め、環境問題の取り組みを検討しよう!

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とはどのような組織であるかについてご紹介しました。企業はTCFDに賛同することで、投資家にアピールし、自社のリスクマネジメントを強化するなどのメリットを得ることができます。

TCFDの国内外への普及を目指し、金融庁や経済産業省、環境省が様々な取り組みを行っていることから、今後もTCFDへ賛同する企業や組織の数が増加することが予測されます。TCFDへの理解を深め、TCFDへ賛同するなど環境問題への取り組みを検討しましょう!

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