e-fuelとは?脱炭素に期待がかかるe-fuelを分かりやすく解説!

e-fuelとは、再生可能エネルギーを利用して製造する合成燃料の1種で、CO2と水素を原料として作られます。そして、e-fuelは持続可能なエネルギー源として期待されており、今後の技術革新とコスト削減が進めばより広く普及する可能性があります。ここでは、e-fuelとは何か、e-fuelの製造方法や期待や課題などをe-fuel導入を目指している企業の取り組み事例と併せてご紹介します。ぜひ、e-fuelの理解を深めて脱炭素社会に貢献できる企業を目指しましょう。

目次

  1. e-fuelとは何か

  2. e-fuelの製造方法は主に2種類

  3. e-fuelの期待と課題

  4. e-fuel導入に向けた企業の取り組み事例

  5. まとめ:e-fuelの理解を深め積極的な導入で脱炭素に貢献しよう!

1.e-fuelとは何か

まずはじめに、e-fuelとは何か、そして、なぜe-fuleが注目を集めているのかをご紹介します。

e-fuel(イーフューエル)とは

e-fuel(イーフューエル)は、再生可能エネルギーを使って作られた水素と空気中のCO2を組み合わせて作る液体燃料のことで、ガソリンや軽油と同じように使えることから「人工的な原油」と呼ばれることもあります。原料となるCO2は、工場や発電所などから排出されるCO2を、「DAC(Direct Air Capture)」という技術で直接空気中から集める仕組みです。また、e-fuelは、原油に比べて有害な硫黄や重金属が少なく、エネルギー密度はガソリンや軽油と同じくらい高いのが特徴です。そして、常温常圧で液体のまま保存できるので水素などの他の新しい燃料よりも長期保存しやすいという利点があります。

合成燃料におけるCO2の再利用のイメージ

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/07/08)

出典:資源エネルギー庁『ガソリンに代わる新燃料の原料は、なんとCO2!?』(2023/10/24)

出典:新エネルギー財団『合成燃料「e燃料(e-fuel)」の活用 | 新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ』(2023/09)

出典:経済産業省『合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 2023年中間とりまとめ』p,3.(2023/06/30)

2.e-fuelが注目される理由とは

ここでは、持続可能なエネルギー源として期待されているe-fuelが注目される理由をご紹介します。

e-fuelの優れた特徴

e-fuelは、発電所や工場から排出されるCO2や空気中のCO2を利用して製造するので、従来の化石燃料と異なり製造から使用までの全過程でCO2の排出量を実質ゼロにできるカーボンニュートラルな燃料と言えます。そして、e-fuelは車や飛行機や暖房などにガソリンの代替燃料として使用でき、また、既存の貯蔵タンクやパイプラインをそのまま使うことができるので、新しい設備を作る必要がありません。さらに、e-fuelを使用する際に車や船、飛行機のエンジンを改造しなくても使用できるため脱炭素化の早期実現に重要な手段として期待されています。

出典:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構[JOGMEC]『カーボンニュートラルで話題の「合成燃料(e-fuel)」とは?そのメリットから製造方法まで解説! : 刊行物 』

出典:新エネルギー財団『合成燃料「e燃料(e-fuel)」の活用 | 新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ』(2023/09)

世界から見たe-fuelの活用の考え

EUは、2030年までに温室効果ガス排出量を55%削減することを目標とした「Fit For 55」を進めています。この計画の一環として、2035年以降もe-fuelを使った内燃機関車の使用を認める考えを示していることで、ますますe-fuelが注目を集めています。その一方、日本では2050年までにカーボンニュートラルを達成するための計画の一環として、自動車や船舶などのモビリティ分野を中心に2040年までに商用化することを目指しています。

出典:新エネルギー財団『合成燃料「e燃料(e-fuel)」の活用 | 新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ』(2023/09)

出典:経済産業省『合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 2023年中間とりまとめ』p,3.(2023/06/30)

出典:経済産業省『e-fuelに関する国際的な政策動向 及び我が国における動向等』p,4.(2023/12/14 )

2.e-fuelの製造方法は主に2種類

e-fuelの主な製造方法として、「FT合成」と「メタノール経由合成」があります。ここでは、このふたつについてご紹介します。

製造プロセス

出典:内閣官房『参考資料(水素等)』p,18.(2023/12/21)

(1)フィッシャー・トロプシュ合成(FT合成)

FT合成は、合成ガス(COやH2)を使って液状炭化水素を作る技術です。まず、CO2を逆シフト反応でCOに変え、それをH2と組み合わせてFT合成を行い原油に相当する合成粗油を製造します。簡単に言うと、CO2と水素を使って人工的に石油を作る技術のことです。その後、アップグレーディング技術によって合成原油をガソリンやジェット燃料(e-SAF)、ディーゼルなどの液体合成燃料に変えます。FT合成の特徴として、重い成分を多く含む油を作るのが得意とする一方で、酸素を含む化合物や固体であるワックスなどの不要な副生物が生成するため、これらを除去する工程が必要となることが課題となっています。

出典:経済産業省『合成燃料研究会 中間取りまとめ』p,11.(2021/04)

出典:経済産業省『e-メタノールの導入可能性について』p,6.(2023/12/14)

(2)メタノール経由での合成

メタノール経由での合成とは、e-fuelを製造する際に水素とCO2を使ってメタノールを作り、そのメタノールを使う方法です。製造されたメタノールは船の燃料や化学製品の原料として使われるだけでなくMTGやMTJなどの特別な技術を使ってガソリンやディーゼルなどの燃料に変えることができます。MTGとは、メタノールを使って合成ガソリンを作る方法で、また、MTJは、メタノールを持続可能な航空燃料(SAF)に変換する技術のことです。

出典:経済産業省『e-メタノールの導入可能性について』p,6.(2023/12/14)

出典:経済産業省『等を用いた燃料製造技術開発」 プロジェクトに関する国内外の動向について』p,15.(2023/06/28)

3.e-fuelの期待と課題

e-fuelは、カーボンニュートラルの実現に向けた重要な技術として期待を集める一方で、実用化に向けてまだまだ課題があります。ここでは、e-fuelの期待と課題についてご紹介します。

e-fuelの活用で期待できる効果

e-fuelは、製造過程で空気中のCO2を使用することから、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献できると期待があります。特に大きな効果として挙げられるのが、e-fuelは化石燃料と同じくらい高いエネルギーを持っている点です。e-fuelを使うと、化石燃料と同じくらいのエネルギー量を保ちながらCO2の排出を減らすことができます。つまり、少ない燃料でたくさんのエネルギーを作り出せる効果が期待できます。また、e-fuelは、水素エネルギーなどの他の燃料と比べて新しい機器やインフラを整備する必要がないので、導入コストを抑えられ市場への導入がよりスムーズになると考えられています。

e-fuelのメリット

出典:経済産業省『合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 2023年中間とりまとめ』p,2.(2023/06/30)

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/07/08)

コストや技術面での課題も

e-fuelの期待が高まる一方で、製造コストや技術面での課題もあります。e-fuelの製造コストは化石燃料よりも高く、特に国内での水素製造コストは海外の2倍〜3倍かかっています。そのため、e-fuelの製造は海外で製造する方法が一番コストを抑えられると予想されています。また、e-fuelの製造では効率を上げる必要があり、現在そのための新しい技術が研究されています。現在、e-fuelは高効率な大規模FT合成プロセスを使ってベンチプラントによる実証段階であり、将来的には、2025年度に1バレル/日(BPD)を製造し、その後パイロットプラントでの実証を経て、2028年度までに300バレル/日(BPD)の製造を目指しています。今後は、e-fuelの商用化を目指して現在のGI基金事業の支援を強化し、既存技術を活用して早期供給を目指す企業の設備投資やビジネスモデルの確立に向けた実証実験を支援するものといています。そして、各国との連携や情報プラットフォームの整備を進めて行きます。

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/07/08)

出典:経済産業省『合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 2023年中間とりまとめ』p,9.(2023/06/30)

 

4.e-fuel導入に向けた企業の取り組み事例

最後に、e-fuel導入を目指している企業の取り組み事例をご紹介します。

出光興産株式会社

日本を代表するエネルギー企業のひとつ「出光興産株式会社」は、北海道の製油所で計画されている日本製のe-fuleを作るプロジェクトに参加しています。これは、出光興産と北海道電力、JAPEXの3社が北海道の苫小牧エリアでCO2の回収、利用、貯留(CCUS)を実施するために共同検討を開始し、再生可能エネルギーを使って水素を作り、CCUS技術でCO2を資源として活用しe-fuleを製造することで苫小牧地域の新しいビジネスや産業の発展を促進し、2050年までにカーボンニュートラルとゼロカーボン北海道を目指しています。

出典:経済産業省『合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 2023年中間とりまとめ』p,11.(2023/06/30)

イーセップ株式会社

ナノセラミック分離膜技術の開発および関連機器・システム等の提供を行う「イーセップ株式会社」は、水素を運ぶ技術を使って環境に優しい燃料やエネルギーを効率良く利用する社会作りを目指しています。イーセップ株式会社は、分離したい分子の大きさに合わせた特殊な膜を作る技術を持っており、e-fuel製造に必要なメタノールを生成する際に、水からメタノールを分離するための膜を提供できます。そして京都産業21と京都府が連携して先進的な研究開発を促進する「けいはんなオープンイノベーションセンター」でメタノールを取り出すための実験を行っています。また、令和3年10月には「株式会社やまびこ」とe-fuleの実証実験を行うための研究開発契約を結びました。

出典:京都府『イーセップ株式会社(京都企業紹介)』(2024/01/12)

5.まとめ:e-fuelの理解を深め積極的な導入で脱炭素に貢献しよう!

e-fuelは、再生可能エネルギーを使って作った水素と空気中のCO2を組み合わせて作る人工的な液体燃料で、2050年カーボンニュートラル実現に大きく貢献できると注目を集めています。e-fuelの強みは、ガソリンなどの化石燃料と同じくらいのエネルギーを持っていることと、既存のエンジンや供給システムをそのまま使える点で、e-fuelを使うことで化石燃料と同じエネルギー量を維持しながらCO2の排出を減らすことができます。しかし、e-fuelの製造は化石燃料よりもコストがかかり、また、製造プロセスの効率を改善する必要があるなどの課題もあります。ぜひ、企業は、e-fuelについて理解を深め導入を検討することで、脱炭素社会の実現に貢献しましょう。

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