TCFDの概要を解説!シナリオ分析のポイントやコンサルに依頼するメリットについて
- 2024年05月20日
- CO2削減
TCFD提言に基づく情報開示と、コンサルティングを受けるメリットについてわかりやすく解説します!気候変動はもはや避けられない現実であり、その影響は経済やビジネスにも及んでいます。このような状況の中、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のガイドラインが、企業のリスク管理と戦略策定において重要な役割を果たしています。
本記事では、TCFDの基本的な概要から、その核心であるシナリオ分析の実践ポイント、さらにはこの分析を専門家に依頼することのメリットについて詳しく説明します。
目次
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TCFDとは
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TCFDシナリオ分析の実践ポイント
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コンサルにシナリオ分析を依頼するメリット
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まとめ:TCFDシナリオ分析に精通したコンサルを選び、気候関連財務情報を開示しよう!
1. TCFDとは
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、国際社会において企業が持続可能な経営を続けていくうえで重要な取り組みです。ここではTCFDの概要を詳しく解説します。
(1)TCFDの概要
TCFDは、2015年にG20の要請を受けた金融安定理事会(FSB)によって設立された国際的な組織です。金融市場では、気温上昇や気候関連の政策、新興技術のリスクと機会などを含む、気候変動に関する質の高い情報が必要であり、各企業における気候関連財務情報の報告を改善し増加させるために、TCFDは創設されました。
2023 年 10 月に TCFD はその責務を果たしたとして解散しましたが、FSBはIFRS財団(国際会計基準の策定機関)に対し、企業の気候関連開示の進捗状況の監視を引き継ぐよう要請しました。
出典:経済産業省「気候変動に関連した情報開示の動向(TCFD)」(2023/5/11)
出典:TCFD「IMPORTANT MESSAGE – PLEASE READ」
(2)TCFD設立の背景
TCFDは気候関連の財務情報開示方法を開発するために設立されました。大きな気候変動をもたらす温室効果ガスの排出削減には、低炭素社会への移行が必要です。このことは化石燃料に依存する企業にとってはリスクであると同時に、気候変動対策をする企業にとってはチャンスでもあります。
そのため投資家には、企業が低炭素経済へ向けてどのように備えているかという情報が必要であると考えられるようになりました。このような背景からTCFDは設立され、企業に対し気候変動への取り組み情報を開示することを推奨しました。
出典:気候関連財務情報開示タスクフォース「最終報告書」p4,5(2017/6)
(3)気候関連財務情報開示の中核的内容
TCFDは以下の4項目を開示項目として推奨しており、企業がこの枠組みに沿って気候変動への取り組みを情報として開示することを求めています。
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ガバナンス:気候関連のリスクや機会についての監視体制や経営陣の役割
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戦略:企業が識別した気候関連リスクや機会の内容、それがビジネス・財務状況・戦略におよぼす影響、戦略のレジリエンス(強靭性)
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リスク管理:企業が気候関連リスクを識別・評価する方法、管理プロセス、企業全体のリスク管理への統合方法
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指標と目標:企業が気候関連リスクと機会を評価する際に用いる指標、温室効果ガス排出量、目標と実績
TCFDではさらに、「具体的かつ完全であること」「長期にわたって一貫性を保つこと」などの開示原則も提示しています。
2. TCFDシナリオ分析の実践ポイント
企業はTCFD提言に基づく情報を開示することにより、社会や投資家等からの評価の向上に繋がります。以下は、TCFDシナリオ分析に取り組む際の重要なポイントです。
(1)社内体制の構築および分析対象の設定
TCFDシナリオ分析を始めるにあたって、企業は経営活動における気候変動のリスクと機会に関する分析対象を明確に定めなければいけません。そのためには、専門部署を設けたうえで専任の担当者を決めるなど社内体制の構築が必要です。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」p26
(2)リスク重要度の評価
社内体制および分析対象の設定ができれば、現在の企業経営における気候変動の影響によるリスクと機会を分析します。その際、将来的な財務リスクの可能性や組織全体のステークホルダーが関心を抱いている問題であるかという視点であることが重要です。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」p29
(3)シナリオの定義
環境省が発行した「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」には、シナリオ群の定義が公表されています。具体的なシナリオ群の定義は以下の3つです。
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シナリオの選択
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関連する将来情報の入手
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ステークホルダーを意識した流れ
はじめてシナリオ分析に取り組む企業は信頼性の高い外部のシナリオを使用することが推奨されています。その際、社内で意見を合致させたうえで複数のシナリオを想定することが大切です。一方、すでにシナリオ分析に取り組む企業はすでに実施済みのシナリオ分析結果を投資家と共有し、最新の情報を追加するなど情報の補足が重要です。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」p32
(4)事業インパクト評価
上記(3)で定義したシナリオ分析に応じて、気候変動が企業の戦略および財務的な部分にどのような影響を与えるかを評価します。事業インパクトの評価は気候変動リスクと機会が影響を及ぼす財務項目の把握、財務的影響の試算、気候変動が経営にもたらす影響の度合いの把握という流れで実施するのが望ましいとされています。また、影響は定量的な試算が大切です。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」p35
(5)対応策の定義
分析した気候変動リスクと機会への対応策を検討する作業です。対応策は実現可能な内容であることが重要なため、まずは影響を及ぼすであろうリスクを特定し、企業の現状をもとに現実的な対応策を講じる必要があります。また、対応策を確定させた際は、シナリオ分析を含め実施するうえでの社内ロードマップを作成することも推奨されています。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」p37
(6)情報の取りまとめと開示
これまでの分析したシナリオ、事業インパクト、対応策を適切にとりまとめ、文書化して開示します。情報を開示する際は、TCFD提言の開示推奨項目におけるシナリオ分析の位置付けや各項目の検討結果を開示内容に盛り込むことが大切です。適切な情報開示は企業価値の向上につながります。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」p40
3. TCFD開示をコンサル依頼するメリット
TCFD開示は、分析対象の設定や、リスクおよび事業インパクトの評価などをまとめなければいけません。しかし、これらは専門的な知識が必要であり、自社の人材では対応できない場合は外部のコンサルタントに依頼することも選択肢のひとつです。ここでは、TCFD開示をコンサル依頼するメリットを解説します。
(1)TCFDシナリオ分析の経験がある
TCFD開示は経営のメインストリームで議論されることが少ないため、企業が自社のみでシナリオ分析を行うのは難しいと考えられます。そのため多くの企業では外部のコンサルタントを依頼しています。
(2)経営層へのインプットに有効
コンサルタントが外部有識者として、気候変動対応が企業価値へ影響を与えることをインプットすることで、経営層の理解が深まります。これにより、社内の気候変動対応と経営の統合がより一層進むことが期待できます。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」(2023/3)p35
(3)適切なリスク評価ができる
定量的なデータを示すことが難しい項目についても、コンサルタントなど外部有識者の意見を聞き、都度モニタリングをしてもらうことで、定性的な評価を基に次の行動を判断することができます。
出典:環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」(2023/3)p45
4. まとめ:TCFDシナリオ分析に精通したコンサルを選び、気候関連財務情報を開示しよう!
気候問題への意識が広がるとともに、投資家などからは企業に対して気候変動への対応についての情報開示が求められるようになっています。そこで国際機関であるTCFDが設立され、企業の気候に関連した財務情報の開示方法を提言しました。TCFDの提言内容では、企業戦略に関する情報開示を行うにあたって社内体制の整備やリスク重要度の評価など、「シナリオ分析」の実施を推奨しています。
シナリオ分析には専門性などが求められるため、外部のコンサルタントへ相談するのが望ましいと考えられます。TCFDシナリオ分析に精通したコンサルタントを選んで、気候関連財務情報を開示しましょう。