GX推進機構とは?目的や役割をご紹介

GX推進機構は、日本が脱炭素社会への移行を加速させるために設立された機関で、2024年7月より本格的に活動が開始されました。日本では、カーボンニュートラル達成を目指して、企業にも環境への対応が求められており、GX推進機構は企業の持続可能な未来を支える重要な役割としても期待されています。ここでは、GX推進機構の基礎知識や組織の脱炭素社会に向けた重要な役割、今後の展望などを分かりやすくご紹介します。

目次

  1. GX推進機構とは何か

  2. 民間企業へのGX投資の支援

  3. 化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収

  4. 排出量取引制度の運営

  5. 気になる今後の展望

  6. まとめ:GX推進機構の理解を深め日本の脱炭素社会実現をサポートしよう!

1.GX推進機構とは何か

まず初めに、GXについて振り返るとともにGX推進機構の基礎知識をご紹介します。

GXとは

GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための改革やその実現に向けた取り組みのことです。これは、太陽光や風力、水素などの持続可能なエネルギー源を活用し、化石燃料に頼らない方法でエネルギーを作ることを目指したもので、これにより、地球温暖化の原因となるCO2の排出量を減少させると同時に、新たな経済成長の機会を創出することを目指しています。

出典:経済産業省『知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?』(2023/01/17)

GX推進機構とは

GX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)とは、排出量取引制度と炭素に対する賦課金制度の両方を一体的に管理し、徴収業務を行う機関のことで、この「ハイブリット型」のカーボンプライシングを導入することを目的としています。具体的には、化石燃料に課せられる負担金や特定事業者の排出枠の割り当て、入札の実施などの業務を担当し、脱炭素成長経済型へのスムーズな移行をサポートするものです。また、債務保証やその他のサポートを通じて社会の脱炭素経済の実現を目指しています。

出典:経済産業省『脱炭素成長型経済構造移行推進戦略』p,21.(2023/07/27)

出典:経済産業省『脱炭素成長型経済構造移行推進機構定款』p,1.(2024/05/24)

GX推進機構設立の背景

最近、カーボンニュートラルを目指す国や地域が急増し、これらの国々のGDP(国内総生産)の合計は世界全体の約94%を占めるようになりました。この動きに伴い、金融市場も変化し、すべての産業が脱炭素社会に向けた競争に突入、環境への対応が企業や国家の競争力に直接影響する時代になっています。日本では、経済産業省が今後10年間で150兆円以上のGX投資を実現するために、GX推進法に基づいて今年5月にGX推進機構を設立し、7月からその組織が活動を開始しました。

出典:経済産業省『我が国のグリーントランスフォーメーション政策』p,4.(2024/01/30)

出典:経済産業省『GX推進機構の金融支援業務に関する支援基準を定めました』(2024/08/13)

2. 民間企業へのGX投資の支援

GX推進機構のひとつ目の役割として、民間企業へのGX投資の支援があります。

保証や出資などの金融支援

政府は、民間企業がGX投資に取り組む際に、債務保証や出資などの資金支援を提供しており、GX推進機構は、民間の金融機関が引き受けられないリスクをカバーしています。これは、リスクをしっかりと引き受けて必要な資金を提供することで、新技術の普及をサポートするとともに、日本全体でGXの推進が滞らないようにすることを目指しています。その他にも、GX関連の施策を含む政府機関やそれに関わるさまざまな関係者との連携を図り、新しいプロジェクトの発掘や専門人材の確保、また、民間との人材交流やGX推進に関する教育の場を提供する役割も担っています。GX推進機構における金融手法

出典:経済産業省『GX推進機構』(2024/07)

出典:経済産業省『GX推進機構の金融支援業務に関する支援基準を定めました』(2024/08/13)

3.化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収 

成長志向型カーボンプライシングの一環として、CO2排出量が多い企業などに対して「化石燃料賦課金」や「特定事業者負担金」が課せられることになりました。これらで得た収入は、GX経済移行債の返済に活用されます。

化石燃料賦課金とは

2028年以降、化石燃料の輸入業者などに対して、輸入される化石燃料から排出されるCO2の量に応じて化石燃料賦課金が課せられることになります。化石燃料賦課金は、「化石燃料賦課金単価×CO2排出量」で算出され、その上限額は、2022年度比の石油石炭税収の減少率と2023年度比の再エネ賦課金の減少率から当該年度の特定事業者負担金を引いた金額となります。また、下限額は前年度までのGX移行債発行額から化石燃料賦課金と特定事業者負担金を差し引き、2050年度までの残りの年数で割った後、その年の特定事業負担金を引いた金額となります。

出典:環境省『我が国におけるカーボンプライシングの導入に向けた検討状況』p,4.(2024/02/14)

出典:経済産業省『脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要』(2023/02/10)

特定事業者負担金とは

特定事業者負担金とは、2033年度からCO2排出量が多い発電事業者(特定事業者)に対して、CO2排出量枠が有償または無償で割り当てれるもので、有償割当量は、再エネ賦課金の総額や脱炭素成長型経済への取り組み状況などを考慮して決められます。特定事業者負担金は、「1トンのCO2あたりの料金×事業者のCO2排出枠の量(トン)」で算出され、その上限額は2023年度比の再エネ賦課金減少率となります。また、下限額はGX移行債の発行額から化石燃料関連の収入を差し引き、残りの年数で割った後、石油石炭税収の減少分を引いた金額となります。

出典:環境省『我が国におけるカーボンプライシングの導入に向けた検討状況』p,4.(2024/02/14)

出典:経済産業省『脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要』(2023/02/10)

4.排出量取引制度の運営

排出量取引制度とは、環境保護と持続可能な発展を両立させるための重要な取り組みです。GX推進機構では、排出量取引制度の運営も担っています。

排出量取引制度とは

排出量取引制度とはCO2の排出枠を売買する制度で、CO2排出量が多い企業が脱炭素経営を取り組む上で有効な手立てとなっています。これは、まず企業が自社から排出されるCO2排出量を排出枠という枠組みを決め、実際のCO2排出量が排出枠を超えてしまった場合に、排出枠に余裕がある企業から余っている分の排出量を購入できる制度です。他者から排出枠を購入し、実際の排出量と同等にすることで、排出量が超過してしまった企業は、自社の排出量を削減したと見なされます。

出典:環境省『国内排出量取引制度について』p,3.(2013/06/29)

5.気になる今後の展望

今後、企業はGX推進機構の取り組みのもと脱炭素社会の実現に向けた影響が及ぶものと考えられます。最後に、GX推進機構の今後の展望をご紹介します。

成長型カーボンプライシングの推進

現在、日本では政府がGXに取り組む企業などにGX経済移行債を通して今後10年で20兆円規模の先行投資支援を行なっています。これは、化石燃料賦課金や排出量取引制度などのカーボンプライシングを通じて2050年までに返済され、将来的な財源としても期待されています。今後のロードマップとして、2026年度からCO2排出量が多い産業に対して「排出量取引制度」が本格的にスタートします。そして、2033年度からは、発電事業者に対して「特定事業者負担金」を導入し、さらに、2028年頃に石油や石炭などの化石燃料の輸入業者に対して「化石燃料賦課金」を導入します。

出典:経済産業省『我が国のグリーントランスフォーメーション政策』p,9.(2024/01/30)

政府と民間の協力

脱炭素技術の社会実装を加速させるには、政府による中長期的の政策ロードマップの提示を通じて将来的の予可能性を向上させる必要があり、そのためには、さまざまなリスクに応じて公的資金と民間資金を上手く組み合わせる「ブレンデッド・ファイナンス」が重要となります。GX推進機構は、GX技術の社会実装段階において、通常の投資よりも長期の期間や莫大な資金量などのリスクを特定し、リスク補完策を検討・実施する際に、民間金融機関だけでなく株式会社日本政策金融公庫や株式会社日本政策投資銀行、株式会社産業革新投資機構、株式会社脱炭素化支援機構などの公的金融機関などとも連携を図り金管投資の拡大を目指します。

出典:経済産業省『脱炭素成長型経済構造移行推進戦略』p,22.23.(2023/07/27)

5.まとめ:GX推進機構の理解を深め日本の脱炭素社会実現をサポートしよう!

GX推進機構は、日本の脱炭素成長型経済構造移行推進機構で、民間の企業のGX実現に向けた投資をサポートする機関です。その役割は、化石燃料賦課金や排出量取引制度の運営や成長型カーボンプライシングの実務などを担っています。今後、CO2排出量が多い産業や企業、発電業者は、2026年度に開始する排出量取引制度を皮切りにGXの実現に向けて、企業経営に影響が及ぶことが予想されます。ぜひ、GX推進機構の理解を深め将来の経営を見つめ直すとともに、日本の脱炭素社会の実現をサポートできる企業を目指しましょう。

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