これからの企業に必要な脱炭素・ESG経営を考える「アスエネESGサミット2024」開催レポート

(写真提供:環境ビジネス)

CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「ASUENE」とESG評価クラウド「ASUENE ESG」、GX・ESG人材特化型転職プラットフォーム「ASUENE CAREER」により、企業の脱炭素・ESG経営をサポートするアスエネは、日本最大級のESGカンファレンス「アスエネESGサミット2024」を8月27日(火)に開催しました。

省庁や各界を代表するスピーカーを迎え、脱炭素経営・ESG・GXなどをテーマに、2つの基調講演と3つのセッション、4つの講演が行われました。

会場となった虎ノ門ヒルズフォーラムのオフラインで400名、オンラインで1600名、約2000名が参加した、本イベントの一部をレポートします。

 

目次

  1. 基調講演① Climate Tech 領域で世界No.1 へ

  2. 基調講演② 環境省のESG・脱炭素の取組について

  3. セッション① 岐路に立つ日本の気候政策

  4. セッション② 経営戦略として取り組むリコーのESG

  5. セッション③ 実態経済の脱炭素化への貢献

  6. 講演① 「しあわせな未来」を目指すロッテのサステナビリティ

  7. 講演② 大和ハウスグループのカーボンニュートラルへの挑戦

  8. 講演③ 進化する脱炭素経営 ~サプライチェーン上流・下流の連携とCFPの進展~

  9. 講演④ 進むサステナビリティ関連規制 -規制のその先を考える-

  10. まとめ

1. 基調講演① Climate Tech 領域で世界No.1 へ -アスエネ × 日本経済新聞社 対談

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登壇者:株式会社日本経済新聞社 編集 総合解説センター担当部長 上田 敬 氏

    アスエネ株式会社 Founder & 代表取締役 CEO西和田 浩平 

アスエネの西和田から、外部環境として世界の平均気温が史上最高を更新するなど異常気象が続く中、原因となるCO2排出量を削減するため、日本では政府がGXリーグを立ち上げるなど、CO2排出量の見える化と開示義務化の流れがあることが指摘されました。それを受けて、企業は今脱炭素の取り組みとビジネスの両輪を回していくように迫られています。そのような中、複雑な計算が必要なCO2の見える化、そしてその先の削減をどのように行っていいかという点に課題を抱えている企業が多いからこそ、CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「ASUENE」とESG評価クラウド「ASUENE ESG」、イベント当日にローンチを発表したGX・ESG人材特化型転職プラットフォーム「ASUENE CAREER」により、企業の課題を解決する事業者になっていきたいとの考えを西和田は示しました。

上田氏は、アスエネがサービスを提供するだけではなく、企業を巻き込んだエコシステムの構築をしていると指摘。さらには欧米でルールメイキングが行われている脱炭素・ESG領域でグローバルでNo.1になるための秘策について質問を投げかけました。それに対し、西和田は従来のサービスに加え、8月にリリースを発表したGHG排出量・非財務データの第三者保証の事業買収と、新会社「アスエネヴェリタス」の設立を皮切りにM&Aを加速していくと返答。また、脱炭素・ESG領域では、アスエネがグローバルNo.1になる可能性が大いにあると説明しました。欧州で脱炭素・ESG関連の企業が誕生したのが2020年前後であり、アスエネは2019年創業である点を考えると、グローバルでこの領域において一斉にスタートが切られたといっても過言ではない。日本から世界へ、システムおよびサービスの輸出が可能であるとも話しました。

それに対し上田氏は、世界におけるオポチュニティをつかみ、アスエネがデファクトになってくれればと期待を寄せました。

2. 基調講演② 環境省のESG・脱炭素の取組について

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登壇者:環境省 大臣官房環境経済課 課長 平尾 禎秀 氏

平尾氏からは、2030年度目標および2050年ネットゼロ達成に向けた進捗状況について説明がありました。「2050年に向けて、CO2排出量は順調に減っているけれど、それで話を終わりにしたくない」と語ります。90年代、2000年代から、排出量を早期に削減するために、長らく苦闘が行われてきたという現実がありながらも、削減しやすいものから削減が行われるからこそ、ここからが削減を実現するための本番が待ち受けているという別の視点を提示しました。

また、COP28における「グローバルストックテイク」や今年開催されるCOP29などにおいて行われるであろう議論を踏まえて、2025年2月に、35年のCO2削減数値目標を「国別決定貢献(NDC)」として各国が提出することになる点を指摘。日本においてはGX委員会でこれから議論が行われていくと話しました。具体的な取り組みについても、本基調講演のなかで説明がされました。

そして、ISSBなどの動きを踏まえて、今後の開示の動向についてどのように議論していくかについても示唆。金融庁のみならず、その他省庁も含めて、CO2排出量の削減や情報開示についての取り組みが行われていく見込みを指摘したほか、ウェルビーイングをはじめとするさまざまな価値観も取り込んだ第6次環境基本計画やGX実現に向けた金融分野における施策など、多岐にわたるESG・脱炭素に関連する取り組みについて言及されました。

3. セッション① 岐路に立つ日本の気候政策

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登壇者:UNEP金融イニシアチブ 特別顧問 末吉 竹二郎 氏

現在日本国内で行われているGXに関わるさまざまな検討が、今後の日本の立ち位置を決定づけるものであるものの、まだまだ議論が足りないという警鐘から、末吉氏のセッションはスタートしました。最新のデータなどを提示しながら、「日本は気候変動への切迫感を世界と共有していない」のではないかとの疑問を投げかけ、日本が世界の中で生き残っていくためには、国内経済基盤の大転換とサステナブル社会の建設の促進が急務であるとも指摘しています。

そして、再生エネルギーへの転換が遅れている点についても言及。主要5カ国の中でも、RE100の進捗が遅れていることをデータとともに示し、英国やドイツにおける再エネ政策について解説しました。

さらには今後、日本が行うべき気候変動政策における軌道修正の方法として、現状是認と「なにをするべきか」の議論ばかり行うのではなく、そもそも「Why」取り組むべきなのかをしっかり議論することを挙げました。「Why」を議論・理解せず、現状是認を続けていると、気が付いた時には世界の本流から取り残されることを末吉氏は危惧しました。本セッションを通じて、多くの警鐘を鳴らす末吉氏の言葉からは、日本のあるべき姿、目指すべき姿が示されていました。

4. セッション② 経営戦略として取り組むリコーのESG

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登壇者:株式会社リコー コーポレート執行役員 ESG・リスクマネジメント担当 ESG戦略部・部長 鈴木 美佳子氏

本セッションにおいては、鈴木氏よりお客様や社会からの要求の動向やリコー社内のESGに取り組むための体制などについての説明が行われました。

EUのESPR(エコデザイン規則)、PPWR(包装・包装廃棄物規)などのようなサーキュラーエコノミーに関する法規制、CSDDDのような人権デューデリジェンスに関する法規制など、さまざまな規制のなかでESGの要求が高まっていることを指摘。実際にお客様からあったESGの要求事例を挙げながら、リコーにおいて、社会やお客様からどのような対応が迫られているかについて具体的な説明が行われました。具体例の中には欧州のみならず、日本の企業(製造業)におけるものもあり、欧州だけの話では済ませることができない点について指摘されました。国内のお客様からはどのような要求が、どの業界でなされているかデータとともに解説。大企業だけではなく、中堅・中小企業にも要求が行われ、サプライチェーン全体で取り組む必要性があることも示唆されました。

そして、リコーでは一般的に「非財務」と呼ばれる項目を「将来財務」として設定し、今から取り組むことで、将来的に財務に好影響を与える活動として設定していると解説。マテリアリティ一つ一つにKPIとしてESG目標を設定するほか、ESG目標を各部門ごとに落とし込むなど積極的な取り組みを行っていると説明しました。また、リコーにおけるESG経営を実行するためのポイントとしてESG委員会の立ち位置にあるなどより詳細な説明が行われました。

5. セッション③ 実態経済の脱炭素化への貢献

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登壇者:株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 サステナブルソリューション部長 藤間 正順 氏

    アスエネ株式会社 Founder 代表取締役 CEO 西和田 浩平 

アスエネと業務提携をしている三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の藤間氏からは、銀行(金融)でありながら、非金融業界の脱炭素化に力を入れている背景についてセッションが行われました。

サプライチェーン全体のCO2排出量の見える化という点について、アスエネとともに取り組みをしていると説明。そのうえで、脱炭素に向けて年長調達や事業構造を大きく転換する必要があり、そのパートナーを探したいというニーズが存在することを示唆しました。そのニーズに応えるために、金融機関として、非金融の脱炭素化の支援に力を入れていると説明をしました。国内外でさまざまなお客様と取引があるからこそ、削減ソリューションの提案などにつながっているとの指摘もありました。

またグローバルで新エネルギーや新技術におけるリスクテイクにも取り組んでいるほか、日本やアジアをはじめとするトラジション支援など世界規模での取り組みを行っていることも示しました。

西和田から、削減に課題を抱えている企業が多い点が指摘されると、藤間氏はCO2排出量を見える化したデータを活用、分析しているとし、実際に削減ソリューションを提案した企業例を挙げてその取り組みを解説しました。

実体経済の脱炭素化を進めるうえで、外部パートナーとの連携の重要性について西和田から質問が投げかけられると、「パートナーリングなしでは脱炭素はなしえない」と藤間氏は即答しました。藤間氏は、1年弱にわたるアスエネとのパートナリングの中で「アスエネはSMBCにないものを持っている」と分析。今後、アスエネとSMBCのさらなる連携の計画について言及し、本セッションは終了しました。

 6. 講演①「しあわせな未来」を目指すロッテのサステナビリティ

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登壇者:株式会社ロッテ サステナビリティ推進部企画課 課長 飯田 智晴 氏

サステナビリティ経営を、成長戦略と生存戦略の2軸で推進しているというロッテ。非上場の企業でありながら、脱炭素の取り組みとしてTCFD開示を実施していると説明しました。具体的にシナリオを提示しながら、どのように外部環境を認識し、取り組みを行っていくかを話しました。

さらには、なぜ「ASUENE」を導入し、どのように活用しているのかについて詳しい説明がされました。アスエネの導入によって、CO2排出量の見える化がより効率的に行えるようになったと分析し、さまざまな導入企業とコミュニケーションをはかることで、よりよい活用方法を模索していきたいと、脱炭素化にむけて意欲を表明しました。

また食品企業であるからこそ、食品ロスおよび食品廃棄物の削減にも注力していることを踏まえ、AIを活用した販売予測など、削減のための具体的な施策について解説しました。脱プラや調達など食品業界の企業ならではの課題とその解決のための施策も紹介。

生活者と近い企業だからこその取り組みなども示されたほか、原産国に実際訪れたことがあるという飯田氏が肌で感じた調達と人権問題などの考察が語られました。

7. 公演②大和ハウスグループのカーボンニュートラルへの挑戦

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登壇者:大和ハウス工業株式会社 経営戦略本部 サステナビリティ統括部長 小山 勝弘 氏

人・街・暮らしの価値協創グループとして、脱炭素化に取り組む大和ハウスグループの小山氏からは、「2030年までに、やれることはすべてやる」という取り組みの基本方針が説明されました。この方針をもとに「事業成長と社会貢献の両立」をカーボンニュートラルの骨子として掲げ、原則すべての屋根に太陽光パネルを設置、2030年度原則ZEH・ZEB率100%などの成長戦略を据えていることも併せて解説。省エネやEV化などより具体的な取り組み事例も紹介されました。

大和ハウスグループに求められているのは「再エネ100%のまちづくり」であるとし、建物使用のCO2排出量の削減、ZEH対応の標準化、ZEBの普及を推進するほか、不動産開発においてはインターナル・カーボンプライシングを導入など、さまざまな取り組みを進めることで、戸建て住宅・マンション・商業施設など建物の種類の枠を超え、街全体における脱炭素化・カーボンニュートラルの実現についての説明が行われました。

サプライヤーとの協働により、サプライチェーンの脱炭素化を推し進め、カーボンニュートラルへの貢献をしながら事業価値も高めることを目指すという小山氏の宣言がなされました。

8. 講演③ 進化する脱炭素経営 ~サプライチェーン上流・下流の連携とCFPの進展~

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登壇者:ボストン コンサルティンググループ マネージング・ディレクター & パートナー

BCGパブリックセクターグループ、気候変動・サステナビリティグループ 森原 誠氏

本講演では、森原氏から主にCFPに関する説明が行われました。2022年度「CFPガイドライン・CFP実践ガイド」の発効からこれまでの推移の中でボストン コンサルティング グループが果たした役割について解説されました。

また、環境価値マーケティングについても説明。グリーンなエネルギー、プロダクト、サービスを「作れる企業」から「買ってもらえる企業」になることの重要性、そのための戦略の立て方、具体例の詳細が示されました。

さらに、環境価値マーケティングにおいて購買行動変容を生み出すための重要なポイント3つ、①何を価値と捉えるか、②どう価値を伝えるか、③いかに価値をふくらませるか、について詳説。日本企業でもCFP算定の実例が蓄積されつつあるなかで、CFPの数値のみで消費者にむけてアピールをすべきなのかについての視点を投げかけ、どのようにCFPを活用することで、「買ってもらえる企業」になるかを解説。実際にCFP算定を行った企業の実例を交えながら、CFPの数値をどのように消費者に伝えるかが重要であると話しました。

さまざまなステークホルダーを巻き込みながら購買に結びつけ、社内の関係部署との連携をはかりながら、自社の取り組みのみならず業界全体、国などと強調しながら環境マーケティングを行っていく重要性を、森原氏から最後に示唆されました。

9. 講演④ 進むサステナビリティ関連規制 -規制のその先を考える-

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登壇者:EY Japan パートナー 気候変動・サステナビリティサービス日本地区リーダー アジア・太平洋ESG & サステナビリティソリューションリーダー 牛島 慶一 氏

牛島氏は、欧米・日本を中心にさまざまな開示に関する規制が実施されていることに言及したうえで、今後はサステナビリティの情報開示のみならず、その開示情報の保証の義務化が行われるのは時間の問題であると指摘しました。CSRD、SSBJなどにより、情報開示をどのように行うかだけではなく、自社の経営の質、ガバナンスに関する相談が増えているというという実態についても紹介。よりアクティブにサステナビリティに関する情報を開示する必要があると示唆しました。

また、これからの経営者に求められるのは、トレードオンであると指摘。株主価値を最大化するためには社会的な価値と経済的な価値のどちらも犠牲にせず、両立させるためのストーリーを組み立てるかが求められるようになっていると説明。ESGやサステナビリティに取り組まないと選ばれなくなってきている潮流のなかで、企業は何を行えばいいのか、さまざまな視点から解説しました。

アクティブにサステナビリティ・ESGの情報開示に取り組み、日本からグローバルにいち早く発信をしていってほしいと参加者に投げかけ、本講演は幕を閉じました。

10. まとめ

「アスエネESGサミット2024」では、グローバルトレンドを踏まえ、ESG・脱炭素経営の加速に取り組む企業がESG経営の国際潮流や先進事例、手法を学び、次なるアクションのヒントを得られる内容が盛りだくさんでした。

本記事で紹介しているのは、その一部です。より詳細な内容に関心がある方のために、本イベントの講演内容のアーカイブ動画を2024年9月末まで、限定公開しています。

以下をクリックして、必要事項を記入の上、ぜひアーカイブ動画をご覧ください。

 

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