Jブルークレジットとは?基礎知識と認証事例をご紹介

Jブルークレジットとは、ブルーカーボンから創出されたクレジット取引制度で、令和2年度から取引が開始された新しいカーボンクレジットです。Jブルークレジットによるプロジェクトの成長は、生物多様性の保護につながり、それによって結果的にCO2排出量が大幅に削減されます。ここでは、カーボンクレジットをふり返るとともに、Jブルークレジットの基礎知識や認証の考え方、実際にJブルークレジットとして認証された事例などをご紹介します。

目次

  1. Jブルークレジットとは

  2. Jブルークレジットの認証の考え方

  3. Jブルークレジット認証プロジェクト事例

  4. まとめ:Jブルークレジットの理解を深め活用しCO2排出量削減に貢献しよう!

1. Jブルークレジットとは

Jブルークレジットは、カーボンクレジットの種類のひとつであり、沿岸や海洋生態系に特化した特徴があります。ここでは、Jブルークレジットの基礎知識やカーボンクレジットについてご紹介します。

Jブルークレジットとは

Jブルークレジットとは、ブルーカーボンを定量化して取引可能なクレジットとして活用する手法で、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が創設し令和2年度より取引開始となっています。

その対象は、「天然」「養殖」「人工構造物」と幅広く、また、クレジット活用で得た資金によってCO2排出量削減のプロジェクトの維持や発展につながることが重要となります。令和4年度の承認件数は21件で、3,733.1トン(CO2換算)のCO2排出削減量が認証され、その内の178.7トン(CO2換算)が取引されています。

Jブルークレジットの認証件数及び認証吸収量の推移

出典:国土交通省『国土交通省港湾局における取組』p,4.(2023/03/17)

出典:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット 認証申請の手引き Ver.2.3』p,5.(2023/08/16)

出典:国土交通省『ブルーカーボン・クレジット 制度(Jブルークレジット®) の状況』p,5.p,6.p,8.(2023/01/23) 

ブルーカーボンとは

ブルーカーボンとは、沿岸や海洋生態系に取り込まれ、その土壌やバイオマスに蓄積される炭素のことを指し、炭素貯留の持続性は数百年から数千年ともされています。

また、CO2の主な吸収源としては、海藻・海草などの藻場や干潟、マングローブ林があり、これらを「ブルーカーボン生態系」と呼びます。このブルーカーボン生態系は、CO2吸収源の役割の他に、水質資源の活性化や水質浄化などの役割も果たすため、ブルーカーボン生態系を保護することは地球温暖化対策だけでなく、生物多様性を育むことにつながります。

出典:環境省『ブルーカーボンに関する取組み 』(2023/11/22)

出典:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット 認証申請の手引き Ver.2.3』p,7.(2023/08/16)

カーボンクレジットとは

カーボンクレジットとは、従来の方法では排出が見込まれていたCO2排出量(ベースライン)と、省エネ技術や再生可能エネルギーを導入したことによって減少した実際の排出量との差をクレジットとして認証するシステムです。

このクレジットは、削減目標を達成できなかった他者に提供することができ、他者は削減量をこのクレジットで購入することができます。購入した側は、購入分のCO2排出削減量を自社のCO2排出削減量として取り扱うことができ、まンmbた、提供する側は、クレジット収入により資金を得ることができます。

出典:経済産業省『カーボン・クレジット・レポートの概要』p,15.p,16(2022/06/14)

埋め合わせするカーボンオフセット

カーボンオフセットとは、自社のCO2排出量を認識した上で、積極的に削減の取り組みを行ったにも関わらず削減が難しい部分の排出量を、他者が創出したCO2排出削減・吸収量で埋め合わせることを指します。埋め合わせの部分では、CO2排出量削減・吸収の取り組みをクレジット化し取引するカーボンクレジットが主な方法となっています。

出典:環境省『カーボン・オフセット ガイドライン Ver.1.0  』p,8.p,10.(2015/03/31)

2. Jブルークレジットの認証の考え方

Jブルークレジットはコアカーボン原則の考えのもと認証の検証が行われます。ここでは、Jブルークレジットの認証の考え方をご紹介します。

クレジット認証の範囲

Jブルークレジットの認証は、コアカーボン原則を基準とした考えのもと、Jブルークレジット審査認証委員会によって検証の後、認証となります。具体的な方法は、プロジェクトの対象生態系を創出・回復・維持することによって1年間で吸収・貯留されたCO2吸収量から、プロジェクトを実施していない場合のCO2吸収量(ベースライン)を先引いた量を1年単位で申請します。

認証対象となる CO2 吸収量

出典:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット 認証申請の手引き Ver.2.3』p,9.(2023/08/16)

Jブルークレジットの基準となるコアカーボン原則

コアカーボン原則(CCP:Core Carbon Principles)とは、高品質なカーボンクレジットの要件のことで、従来のカーボンクレジットの要件に「持続可能な開発」「ネットゼロ移行」の要件が盛り込まれた、クオリティがより高いカーボンクレジット要件となっています。

持続可能な開発ではSDGsに好影響をもたらすことを、また、ネットゼロ移行においては化石燃料の使用を増やすことなく、なおかつCO2排出量削減に取り組み続けていることが重要としています。

出典:ICVCM『The Core Carbon Principles』(2023/7/26)

出典:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『Jブルークレジット 認証申請の手引き Ver.2.3』p,17.(2023/08/16)

3. Jブルークレジット認証プロジェクト事例

最後に、Jブルークレジットの認証を受けたプロジェクトの事例をご紹介します。

北海道増毛町地先における鉄鋼スラグ施肥材による海藻藻場造成

日本製鉄株式会社と増毛漁業協同組合は、北海道増毛町別刈オタルマナイ地先に日本製鉄社製の鉄鋼スラグ施肥材45トンを海岸線270mに埋設し、藻場造成に取り組みました。

開始当初、0.6haだった藻場は7年後には3.3haまで広がり、2022年までの5年間のCO2吸収量は49.5トン(CO2換算)となっています。今後もお互い協力をしブルーカーボンの活性化に向けて藻場造成を続けて行くとしています。

出典:国土交通省『ブルーカーボン・クレジット 制度(Jブルークレジット®) の状況』p,22.(2023/01/23) 

横浜ブルーカーボン事業

神奈川県横浜市では、地域の団体と協力して独自のカーボンオフセット制度を運用、その取り組みのひとつとして漁業協同組合では、養殖ワカメや養殖コンブなどでクレジットを獲得し、その収益を藻場のモニタリング管理などに利用しています。

また、八景島シーパラダイスと連携して、市民や事業者に向けて親しみやすい海つくりを目指した啓発イベントも開催しました。この事業によるCO2吸収量は、312.8トン(CO2換算)となっています。

出典:環境省『我が国における ブルーカーボン取組事例集』p,51.(2023/12)

兵庫運河の藻場・干潟と生きものの生息場づくり

兵庫県神戸市の兵庫運河では、兵庫漁業協同組合をはじめとした地域の団体や小学校が協力して、防波堤撤去工事から出た石材や土砂などの廃材を流用して干潟での生きものの生息場づくりに取り組んでいます。

この活動は、Jブルークレジットとして認められ、2.1トン(CO2換算)のクレジットが発行され、2年連続で承認されています。また、生きものの生息場は、地元の小学校の環境学習の場として有効的に活用されています。

出典:国土交通省『ブルーカーボン・クレジット 制度(Jブルークレジット®) の状況』p,23.(2023/01/23) 

4.まとめ:Jブルークレジットの理解を深め活用しCO2排出量削減に貢献しよう!

Jブルークレジットとは、カーボンクレジットのひとつで、ブルーカーボン生態系が吸収したCO2を定量化しクレジットとして取引できる制度です。ブルーカーボンを創出するプロジェクトは、コアカーボン原則に沿ったものであることが重要です。

取引がスタートしてまだ数年ですが、その注目度は高く、沿岸地域においては地元団体や企業が協力してプロジェクトに取り組み、クレジットで得た収益は、地元の環境保全やプロジェクトの維持に活用されています。

海に囲まれた日本は、ブルーカーボンに適した国だとも言え、今後のJブルークレジット導入の増加に期待がかかります。ぜひ、Jブルークレジットの理解を深め、ブルーカーボンを視野に入れた環境貢献を目指しましょう。

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