加工食品のCFP算定について分かりやすく解説!

加工食品のカーボンフットプリント(CFP)算定とは、食品のライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガスを測定するプロセスのことです。脱炭素社会の進展に伴い、CFP算定への関心が高まっています。そして、企業は加工食品のCFP算定を行い、環境への影響を知ることでより持続可能な選択ができます。ここでは、加工食品のCFP算定とは何か、その重要性や具体的な方法について分かりやすくご紹介します。

目次

  1. カーボンフットプリントとは何か?

  2. 加工食品におけるCFP算定の重要性

  3. 加工食品における主なCFP算定ルール

  4. 加工食品におけるCFP算定手順

  5. まとめ:加工食品のCFP算定について理解を深め持続可能な社会へ貢献しよう

1. カーボンフットプリントとは何か?

まずはじめに、カーボンフットプリント(CFP)の意味やその算定方法についてご紹介します。

カーボンフットプリント(CFP)とは

カーボンフットプリント(CFP)とは、製品が作られてから廃棄されるまでに排出される温室効果ガス(GHG)量をCO2に換算して計算したものです。企業は、このCFPの情報を使って、製品の全ライフサイクルのどの時点で多くのGHGを排出しているかを理解し、その削減効果を見ながら、どの対策が効果的かを考えることができます。また、購買者が買い物と気候変動の関係を理解することで、消費者は環境問題に興味を持つようになり、企業も環境に優しい製品を選びやすくなります。

出典:経済産業省『カーボンフットプリント ガイドライン』p,7.(2023/05/26)

CFP算定の基本

CFPの算定は、①原材料や製造工程、輸送など製品のライフサイクルを細かく分解②各工程で排出されるGHG排出量(=活動量×排出係数)を計算③全ての工程のGHG排出量を合計して算出します。各工程の活動量については、基本的には実際の測定値を使い、データを得るのが難しい場合はシナリオを使用します。シナリオとは、活動量の把握しにくい工程に対して設定する仮定のことで、例えば、小売店への配送や消費者の洗濯頻度など、データが取りづらい場合にシナリオを使用して計算します。また、排出係数のデータは、まず1次データ(実測値)を確認し、難しい場合は2次データベースを使用します。該当データがない場合は類似のデータを使用し、複数該当する場合はより大きい安全を重視した上でより大きい排出係数を選択します。基本的には可能な限り1次データを使用することが推奨されています。

CFPの算定の仕方

出典:環境省『カーボンフットプリント ガイドライン (別冊)CFP 実践ガイド』p,5.11.17.(2024/03)

2. 加工食品におけるCFP算定の重要性

加工食品でCFPを計算することがなぜ重要とされているのか、ここではその重要性についてご紹介します。

加工食品におけるCFP算定の目的

気候変動のリスクが食品生産に影響を与える中、食品産業は生産と消費者を結ぶ重要な役割を担っています。加工食品でCFPを算定する目的として、国内の消費者に対して環境に配慮した行動を促すための基準を提供することが挙げられます。具体的には、製品のライフサイクル全体で排出されるGHG量を示すことで、消費者は環境負荷の少ない製品を選びやすくなります。

出典:農林水産省『加工食品共通 CFP 算定ガイド案』p,5.(2024/08/21)

出典:農林水産省『加工食品のカーボンフットプリント(CFP)の算定ガイド案と実証結果について』(2024/08/23)

加工食品になぜCFP算定が必要なのか

サプライチェーン全体で環境負荷を減らす必要性が求められる中、加工食品業界でもGHG排出を減らす企業が増えており、CFP算定が重要だという声が高まっています。日本は、食料や農業の生産性を高めつつ持続可能性を目指す「みどりの食料システム戦略」を実現するために、政府と企業が集まる会議で「温室効果ガスの見える化作業部会」を設立しました。さらに、フードサプライチェーン全体で脱炭素化を進めるため、食品業界全体で信頼性のあるCFP算定ルールを作る重要性を認識しました。その結果、明治ホールディングスや日本ハムなど8社と農林水産省が協力して、加工食品のDFPを簡単に計算できるガイドを作成しました。これにより、実際の排出量データを使わずに2次データだけで計算することも認められ、より多くの企業が利用しやすくなりました。

出典:農林水産省『加工食品のカーボンフットプリント(CFP)の算定ガイド案と実証結果について』(2024/08/23)

出典:日経GX『加工食品CFP、2次データだけでもOK 官民指針案』(2024/09/19)

3. 加工食品における主なCFP算定ルール

ここでは、加工食品のCFP算定で重要なルールをご紹介します。

対象となる加工食品

CFP算定はすべての加工食品を対象とし、加工食品の定義は食品表示基準に従っています。農産加工食品には、麦類、粉類、でん粉、野菜加工品、果実加工品、茶、コーヒーおよびココアの調整品、香辛料、パン・めん類、穀類加工品、菓子類、豆類の調整品、砂糖類、その他の農産加工品が含まれます。そして、畜産加工品には、食肉製品、酪農製品、加工卵製品、その他の畜産加工食品が含まれ、水産加工食品には、加工魚介類、加工海藻類、その他の水産加工食品が含まれます。また、その他の加工食品には、調味料及びスープ、食用油脂、調理食品、その他の加工食品、飲料等(含む酒類)が含まれます。

出典:農林水産省『加工食品共通 CFP 算定ガイド案』p,5.(2024/08/21)

対象となる温室効果ガス

CFP算定では、第6次評価報告書(AR6)に記載された100年の地球温暖化係数(GWP)を用いて、2次データベースに含まれるGHGを対象とします。ただし、既存のデータベース値が必ずしも最新の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のGWP値と一致しない場合、最新の値を使用する必要はありません。

出典:農林水産省『加工食品共通 CFP 算定ガイド案』p,5.(2024/08/21)

対象となるライフサイクルステージ

CFP算定は、原材料調達段階、生産段階、流通・販売段階、使用・維持管理段階、廃棄・リサイクル段階のすべてのライフサイクルステージを対象としています(Cradle to Grave)。

ライフサイクルステージ

出典:環境省『カーボンフットプリント ガイドライン (別冊)CFP 実践ガイド』p,8.(2024/03)

出典:農林水産省『加工食品共通 CFP 算定ガイド案』p,6.(2024/08/21)

4. 加工食品におけるCFP算定手順

データの収集

加工食品のCFP算定は、最初に1次データと2次データの収集から始めます。1次データとは、製品システムで実際に収集したデータを基に計算されたプロセスや活動、排出係数の数値を指し、これには、農林水産省のGHG簡易算定シートで得られた数値も含まれます。そして、2次データとは、1次データの条件を満たさないデータを指します。活動量は可能な限り1次データを集めますが、自社の管理外のプロセスなどで1次データの収集が難しい場合には2次データを使用します。同様に排出係数についても、1次データの収集を優先しますが、難しい場合には2次データを利用します。

出典:農林水産省『加工食品共通 CFP 算定ガイド案』p,7.8.(2024/08/21)

データの品質

1次データでは、「時間的範囲」「地理的範囲」「技術的範囲」「再現性」の要件を満たすことが求められます。時間的範囲では季節変動を平均化するために過去1年間のデータを集めること、地理的範囲では原材料や製品を複数の地域や拠点から調達している場合は、データを偏りなく収集することが推奨されます。そして、技術的範囲は対象製品の製造技術や製造方法に関するデータを集めること、再現性は算定に用いたロジックやデータを使って同じ組織内の他のメンバーが同じ方法で再算定できることが重要です。また、2次データでは、農林水産省や環境省、IDEA、Ecoinventなどのデータが利用できますが、いずれもできる限り最新のバージョンを利用する必要があります。

出典:農林水産省『加工食品共通 CFP 算定ガイド案』p,7.8.(2024/08/21)

プロセスの配分

配分のルールでは、可能な限り配分を避けるようにします。配分を行う場合は、一貫性があり各プロセスの特性を適切に反映する方法で行います。また、物理的指標(重量、個数、面積、体積、発熱量、稼働時間など)の基準に従って配分を行うことが重要です。ただし、物理的指標による配分が難しい場合や現実的でない場合に限り、経済価値などの基準を用いることが可能です。

出典:農林水産省『加工食品共通 CFP 算定ガイド案』p,8.(2024/08/21)

5. まとめ:加工食品のCFP算定について理解を深め持続可能な社会へ貢献しよう

加工食品のCFP算定についてご紹介しました。加工食品のCFP算定とは、加工食品の原料調達から廃棄までのライフサイクル全体で排出されるGHG量を測定するプロセスです。この加工食品のCFP算定の必要性に大きく関わるのが、気候変動の影響です。全て加工食品でCFP算定を行うことで、環境への影響を正確に把握し対策を講じることができます。その結果、生産と消費の両面で環境への負荷を減らし持続可能性を高めることが可能です。ぜひ、加工食品のCFP算定について理解を深め、持続可能な社会づくりに貢献しましょう。

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