カーボンクレジットの追加性とは?考え方や基準からコアカーボン原則まで解説

カーボンクレジットにおける追加性とは、クレジットの収益によってプロジェクトが成立するという考えであり、追加性のあるプロジェクトは、信頼性と透明性を兼ね備えたカーボンクレジットだと言うことができます。

つまり、追加性の高いカーボンクレジットを選ぶことで、企業の環境貢献度を高めることができます。ここでは、カーボンクレジットの基礎知識を振り返るとともに、カーボンクレジットの追加性の考え方や、より高品質なカーボンクレジットを創出するコアカーボン原則について解説します。

目次

  1. カーボンクレジットとは

  2. カーボンクレジットの追加性とは

  3. 信頼性とクオリティを求めたコアカーボン原則

  4. まとめ:追加性の高いカーボンクレジットの調達で環境貢献を!

1. カーボンクレジットとは

カーボンクレジットとは、CO2の見込み排出量と実際の排出量の差をクレジット化したもので、「排出削減量」として売買することができます。ここでは、カーボンクレジットの基礎知識をご紹介します。

カーボンクレジットとは

カーボンクレジットとは、従来の方法では排出が見込まれていたCO2排出量(ベースライン)と、省エネ技術や再生可能エネルギーを導入したことによって減少した実際の排出量との差をクレジットとして認証するシステムです。

このクレジットは、削減目標を達成できなかった他者に提供することができ、他者は削減量をこのクレジットで購入することができます。購入した側は、購入分のCO2排出削減量を自社のCO2排出削減量として取り扱うことができ、また、提供する側は、クレジット収入により資金を得ることができます。

クレジットの考え方

出典:経済産業省『カーボン・クレジット・レポートの概要』p,15,16.(2022/06/14)

主なカーボンクレジットの種類

カーボンクレジットは、国連や政府によるものと、民間団体などによるものの2種類に分けられ、その中でまた制度によって振り分けられています。国連や政府主導のものには京都議定書による先進国と途上国が共にCO2削減に取り組む「CDM(Clean Development Mechanism)」や、日本の政府による「J-クレジット」があります。

一方、民間主導のものには国際的な民間クレジットの「VCS (Verified Carbon Standard) 」や日本の団体による「Jブルークレジット」があります。また、クレジットを創出する手法では、「排出回避・削減」と「炭素吸収・除去」に分けられ、その中で「自然ベース」と「技術ベース」に分けられ、取り組み方法が異なります。

クレジットの種類(制度別)

出典:経済産業省『カーボンニュートラルと クレジットの活用』p,8.p,9.p,10.p,11,p,12.(2022/12/02)

出典:環境省『炭素クレジット等について』p,5.p,6.p,7.p,8.(2022/10/21)

2. カーボンクレジットの追加性とは

カーボンクレジットの追加性とは、カーボンクレジットの信頼性を保つための重要な概念であり、カーボンクレジットを活用する上でも、よく理解しておきたい要素のひとつです。

カーボンクレジットの追加性の考え方

カーボンクレジットの追加性とは、CO2排出量削減・除去によって得られるクレジット収益が、そのプロジェクトの遂行を可能にすることであり、カーボンクレジットの取り組みが行われるのは、そのクレジットによってプロジェクトが実現する見込みがあると考えられるからです。

例えば、J-クレジット制度では、J-クレジットを目的として創出し認証されたCO2排出削減量(中小企業A社:追加性がある)を、大企業B社が自社のカバーしきれなかった部分として購入することで成立しています。

 

alt属性:カーボンクレジット追加性の考え方の例

出典:J-クレジット制度『J-クレジット制度における 追加性について』p,2.5.(2019/02/28)

追加性が重要視されている背景

カーボンクレジットの追加性が重要視される理由として、カーボンクレジットはCO2排出量削減の重要な取り組みであり、確実に実行する上で追加的な効果があることを明確にする必要があります。

その理由として、仮に追加的な効果が得られないプロジェクトが認証された場合、自社からの実際のCO2排出量に変化がないにも関わらず、CO2排出量報告では排出量を減少して報告することが可能となり、見かけ上のCO2排出量を減少するなど、簡単に調整できてしまう懸念があるからです。

出典:J-クレジット制度『J-クレジット制度における 追加性について』p,8.(2019/02/28)

3. 信頼性とクオリティを求めたコアカーボン原則

コアカーボン原則の導入により、より効果的に温室効果ガス排出削減を実現することができます。ここでは、高クオリティを求めたコアカーボン原則についてご紹介します。

コアカーボン原則(Core Carbon Principles)とは

カーボンクレジットを創出するにあたって、高品質なカーボンクレジットの要件のことを「コアカーボン原則(CCP:Core Carbon Principles)」と言います。コアカーボン原則は、従来のカーボンクレジットの要件に「持続可能な開発」「ネットゼロ移行」の要件が盛り込まれたクオリティがより高いカーボンクレジット要件となっています。

コアカーボン原則が必要とされる理由として、世界で「グリーンウォッシュ」が大きな問題になっていることが挙げられます。グリーンウォッシュとは、環境対策を講じているように見えて、実は、実態が伴わない「見せかけの環境対策」のことです。

近年、積極的な環境対策が求められる中、グリーンウォッシュの問題も増加しています。グリーンウォッシュにより、環境対策の遅れが生じると同時に、利用者に大きな不信感を与えるため、クオリティが高いカーボンクレジット要件によってグリーンウォッシュを排除することが必要とされています。

出典:ICVCM『The Core Carbon Principles』(2023/7/26)

出典:農林水産省『炭素クレジットを取り巻く世界の情勢』p,21.(2022/11/15)

出典:国連広報センター『COP27:「グリーンウォッシングは断じて許されない」と国連事務総長が訴え ~新たな報告書、見せかけの排出量正味ゼロの排除を提言~(UN News 記事・日本語訳)』(2022/11/16)

コアカーボン原則の評価フレームワーク

評価フレームワークとは、炭素市場の価値を向上させるために設定された目標を達成するための数値基準で、コアカーボン原則では、カーボンクレジットの取り組みとカーボンクレジットのカテゴリーが、高品質なカーボンクレジットとして満たしているかを判断する基準となっています。

また、評価フレームワークの基準を満たすカーボンクレジットは、CCP適格とされCCPラベルが与えられます。このラベルは、カーボンクレジットの信頼性を示し、購入者が高品質のカーボンクレジットであることを一目で判断できるもので、CCPラベルを持つカーボンクレジットは、炭素市場の信頼性を高め、投資家の投資への意欲につながる効果が期待されます。

出典:ICVCM『The Core Carbon Principles Assessment Framework』(2023/7/26)

4. まとめ:追加性の高いカーボンクレジットの調達で環境貢献を!

カーボンクレジットの追加性とは、カーボンクレジットの有効性と信頼性を保つための手立てであると同時にクレジット収益を伴うことを重要としています。J-クレジット制度においては、追加性があることが基準であり、コアカーボン原則に沿った高品質なカーボンクレジットを創出することで、クレジットの価値を高めることができます。

また、追加性のあるカーボンクレジットを活用しCO2排出削減量に透明性を生み出すことは、今後の企業の大きな信頼性につながります。ぜひ、カーボンクレジットの追加性の理解を深め、追加性の高いカーボンクレジットを調達して環境貢献の意識が高い企業を目指しましょう。

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