ペロブスカイト太陽電池とは?概要からメリット・デメリット、企業事例までわかりやすく解説!
- 2024年03月11日
- 発電・エネルギー
ペロブスカイト太陽電池とは何かについて、わかりやすく解説します!ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池にはないさまざまなメリットを持つ、新しい種類の太陽電池です。
日本でも再生可能エネルギーの導入が社会課題となっていますが、このペロブスカイト太陽電池は、日本における再エネ拡大の切り札として注目を集めており、日本政府も産業化を支援しています。本記事ではペロブスカイト太陽電池の概要やメリット・デメリット、日本企業の事例などをご紹介します。
目次
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ペロブスカイト太陽電池の概要
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ペロブスカイト太陽電池のメリット・デメリット
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ペロブスカイト太陽電池に関する日本の企業事例
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まとめ:ぺロブスカイト太陽電池で、日本企業が世界をリードしよう!
1. ペロブスカイト太陽電池の概要
ペロブスカイト太陽電池は次世代型の太陽電池で、太陽光発電の普及へつながるものとして期待されています。ペロブスカイト太陽電池の概要について解説します。
ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池とは、多様な物性を示す「ペロブスカイト結晶構造」を持つ化合物を発電体として用いる太陽電池のことです。ペロブスカイト太陽電池の主な原料はヨウ素ですが、日本のヨウ素生産量は世界第2位であり、シェアでも約3割を占めています。資源が少ない日本ですが、ペロブスカイト太陽電池に関しては原料を他国に頼らずに安定して確保することが可能です。
出典:資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?」(2024/2/9)
従来型の太陽電池との違い
ペロブスカイト太陽電池と従来の太陽電池との大きな違いは、その軽量性です。従来の太陽電池は、発電層がシリコンでできた「シリコン系太陽電池」ですが、太陽電池そのものが厚くて重量があるうえに、カバーにするガラスの重みも加わるので、設置場所が限られる点が課題となっています。
日本では平地面積あたりの太陽光発電容量が世界主要国中最も大きくなっており、これ以上設置する場所がなくなってきているという課題があります。ペロブスカイト太陽電池は軽いだけでなく、薄くて柔軟性もあるため、従来太陽電池の導入が難しかったような場所でも設置が可能になると期待されています。
出典:資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?」(2024/2/9)
2. ペロブスカイト太陽電池のメリットと課題
ペロブスカイト太陽電池には、シリコン系太陽電池と比較して軽量であるなどのメリットがあります。一方で実用化にあたっては、ハードルもあります。ペロブスカイト太陽電池のメリットと課題について解説します。
ペロブスカイト太陽電池のメリット
ペロブスカイト太陽電池のメリットとして、軽さ・薄さ・柔軟性が挙げられます。これらのメリットを活かすことで、耐荷重が小さい建物の屋上やビルの壁面などにも、太陽光発電装置を設置することができます。またスマートフォンやタブレット端末など、IoTデバイスに貼付することも考えられ、今後大きな市場が見込まれます。
日本にとっては、原材料を輸入に頼らずに済む点も大きなメリットです。さらにペロブスカイト太陽電池は、材料をフィルムなどに塗布・印刷するという少ない製造工程で大量生産ができるため、低コスト化も見込むことができます。
出典:資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?」(2024/2/9)
ペロブスカイト太陽電池の課題
ペロブスカイト電池には、以下のような課題もあります。
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耐久性の低さ
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寿命の短さ
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大面積化の困難さ
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変換効率の向上
このような課題を克服しシリコン系太陽電池に対抗するには、今後の研究・開発によるさらなる性能の向上が必要です。
出典:資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?」(2024/2/9)
日本政府もペロブスカイト太陽電池の実用化を後押し
世界各国でもペロブスカイト太陽電池の研究が急速に進んでおり、開発競争が激化しています。そのため、2030年より前にペロブスカイト太陽電池を実用化することを目指し、日本政府が開発事業を推進しています。
量産技術の確立や生産体制整備、需要の創出などの課題に対応するため、総額4212億円の「GXサプライチェーン構築支援事業」が予算計上されています。
出典:資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)~早期の社会実装を目指した取り組み」(2024/2/16)
3. ペロブスカイト太陽電池に関する日本の企業事例
日本における再生可能エネルギーの切り札、ペロブスカイト太陽電池に関する、日本企業の事例をご紹介します。
株式会社カネカ
株式会社カネカは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金交付を受け、高性能ペロブスカイト太陽電池の実用化技術開発に取り組んでいます。
同社では光のエネルギーを電気エネルギーに変換する割合である変換効率において、フィルム型ペロブスカイト太陽電池としては世界最高水準となる19.8%を実現しています。
出典:株式会社カネカ「カネカ 高性能ペロブスカイト太陽電池の実用化技術開発を加速」(2022/3/16)
株式会社リコー・リコージャパン株式会社
株式会社リコーとリコージャパン株式会社は、東京都大田区の馬込第三小学校と神奈川県厚木市役所にて、ペロブスカイト太陽電池を電力とした屋外設置の庭園灯を設置し、電池の耐久性や発電量の検証を開始しました。屋外での耐久性に課題のあるペロブスカイト太陽電池ですが、本実証実験を通じて道路や公園での活用に向けたデータの計測を行います。
出典:株式会社リコー「リコーとリコージャパン、ペロブスカイト太陽電池の実証実験を開始」(2024/2/1)
KDDI株式会社・株式会社KDDI総合研究所・株式会社エネコートテクノロジーズ
KDDI株式会社と株式会社KDDI総合研究所と株式会社エネコートテクノロジーズは、ペロブスカイト太陽電池を応用した「サステナブル基地局」の実証実験を群馬県で行っています。これは電柱のような基地局のポールにペロブスカイト太陽電池を巻きつけ、基地局の電力をまかなうもので、実用化されれば敷地面積が小さい場所でも太陽光発電設備を持った基地局が設置できるようになります。
出典:KDDI株式会社「国内初、曲がる太陽電池「ペロブスカイト型」を活用した基地局実証を開始」(2023/12/6)
4. まとめ:ぺロブスカイト太陽電池で、日本企業が世界をリードしよう!
ペロブスカイト太陽電池は軽さ・薄さ・柔軟性など、従来のシリコン系太陽電池にはない特長を持った次世代太陽電池で、太陽光発電における設置面積の問題の解決につながることが期待されています。
また製造コストが安価なうえ、日本では原材料を輸入に頼ることなく生産可能である点も、注目を集めている理由です。実用化するには耐久性・寿命・変換効率などの課題を克服する必要がありますが、日本政府もペロブスカイト太陽電池を再生可能エネルギーの切り札と位置づけており、官民挙げての研究・開発が、社会実装に向けて進んでいます。今後の動向についても注目していく必要があります。